「謎のストレンジャー」(1946)

  • 監督:オーソン・ウェルズ
  • 脚本:アンソニー・ヴェイラー、オーソン・ウェルズ、ジョン・ヒューストン
  • 原案:ヴィクター・トリヴァス
  • 脚色:ヴィクター・トリヴァス、デクラ・ダニング
  • 製作:サム・スピーゲル(S・P・イーグル)、ジョン・ヒューストン
  • 音楽:ブロニスラウ・ケイパー
  • 撮影:ラッセル・メティ
  • 編集:アーネスト・ニムズ
  • プロダクション・デザイン:ペリー・ファーガソン
  • 出演:オーソン・ウェルズ、エドワード・G・ロビンソン、ロレッタ・ヤング 他

ハリウッドの天才児オーソンウェルズが戦後に放った映画。

46年にしてナチス残党狩りをテーマにした作品です。当時のウェルズは製作会社ともめたりが原因でほとんど干されていた状態でしたが、ここでサム・スピーゲルが手を差し伸べていたようです。

まあそれでもキャストの事ではウェルズの要望が通らなかったりはあったようですが。

日本では未公開なのかな?ソフト販売や名画コレクション的な上映はあったようです。私も名作コレクションで観たという形になる作品です。

第二次大戦後に逃亡したナチス残党を追跡する戦犯聴聞組織のウィルソンは、収容所からあえて男を逃がすことで、大量虐殺の主犯であり逃亡中のフランツ・キンドラへとたどり着こうとしていた。

思惑通りに、逃がした男マイネックはキンドラに接触。

マイネックは神の導きにより改心し、ナチスの復興を忘れ生まれ変わったと伝える。しかしキンドラは今や田舎の教師チャールズ・ランキンとしての隠れ蓑を利用し、新たなる帝国を思い描いていた。正体を知るマイネックを始末するキンドラ。

そしてウィルソンはマイネックが消えたこの町を捜査対象にし、そしてキンドラの唯一の手がかりである時計狂という特徴を持つチャールズにも目を向け始める。

オーソン・ウェルズがナチス残党、極悪人を演じる本作。

険しい顔つきに、冒頭の流れるようにすっとマイネックの首を締め上げるあの冷酷さが怖くてカッコいい。

黒ずくめの服で闇にまぎれる彼には、魅力を感じてしまいますよ。死体処理をし、学生のランニングコースを変えたり。感づいた犬をさっくり殺したり。容赦ねえ!それが最高。

悪人は悪であればあるほど光ります。

そんでもって妻に対しての態度です。ロレッタ・ヤングの不安定な奥さんも良い感じですね。夫を信じ愛することが自分の現実を守るすべと信じている感じです。

しかしここぞと言う時に、一見すると普通にその意見はおかしいと思うのですが、ウェルズの鋭い眼光で迫られると納得してしまう。正体を知ってもなお幸福を壊さないように奮闘する女性に見えました。

さてこの大悪党に対峙するのがエドワード・G・ロビンソン演じるウィルソン。彼はナチス残党狩りの組織で働いているんですが、この序盤の組織の連携がかっこいい。

マイネックからぐっとカメラが上がっていくと、女と男が話しているんですが、男は顔が見えないのです。

そして途中の電話するシーンでも、影のみが画面には映されていて、男はこれまた見えない。このまさに影の組織、表に出ず着実に追いかけてくる感覚がしびれます。

さて肝心のウィルソンですが、私はエドワードが好きなので好きw

直接対決をするのは最後の最後なんです。食事のシーンでナチスやドイツに関する話をしますが、その時もこのフランツとウィルソンを同じ画面に映さない徹底ぶり。

決闘はまだ先というのと、徹底的に相反している関係性を盛り込んでいると思います。

では間接的な戦いはどこにあるかというと、あの雑貨屋で店主とチェッカーをすることでしょう。この小さな町の情報の中心地で、チェッカーを店主とプレイするのはウィルソンとフランツのみです。

これがまた巧いのです。

まずウィルソンはチェッカーをしつつも、頭の中はマイネックの行方でいっぱいなのです。結果として集中を欠いて負けてしまいます。

しかしこれは同時に、彼が心底ナチス狩りに没頭していることも表しているように思えます。

一方でフランツの場合は、プレイ中に妻が時計台に行き”事故死”することを考えています。メモを覗いていますね。それでも彼はチェッカーに勝ちます。

このことで、フランツの優れた頭脳がわかるのですが、同時に彼はウィルソンが時計台に入るのを見逃しています。本当に見るべきものを観落としてしまうというミスを犯しているのですね。

止まっていた時計がついに動き出す。終止符のような鐘が鳴り響き、悪魔の像が表から消えて、天使の像が現れます。

まさか神の聖域である協会に、悪魔がこもっているとは。おぞましいですね。

しかしこの悪魔もついには追い詰められ、自分の考えであった、絶対的な存在は民衆の上に立つというのを否定されます。

愚かで思いのままになると思った一般の人々も、やはり正義を持ち悪を許さない。

最後は天罰ともとれるように、天使像の剣に貫かれる。あの剣はアメリカの司法で言うと正義の女神のもつ剣かな?

このラストは終盤近くになると予想もできますが、ここはサービスですよね。やはりこういう象徴的な画が実に映画らしいです。

舞台性やドラマ、表現などはすこし落ち着いてはいますが、両雄の闘いが面白く。またストレートにナチス狩りを見れるものにもなっています。

いかに幸せであっても、それを壊してでも果たさねばならない正義は妻には辛いものです。身をひそめる悪魔を演じるウェルズは必見ですね。

そんな感じですね。おわり~ では、また。

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