「サイコ」(1960)
作品概要
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- 脚本:ジョセフ・ステファノ
- 原作:ロバート・ブロック
- 製作:アルフレッド・ヒッチコック
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音楽:バーナード・ハーマン
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撮影:ジョン・L・ラッセル
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編集:ジョージ・トマシーニ
- 出演:アンソニー・パーキンス、ヴェラ・マイルズ、ジョン・ギャヴィン、マーティン・バルサム、ジョン・マッキンタイア、ジャネット・リー 他
巨匠アルフレッド・ヒッチコックによって制作されたホラーサスペンス映画。
ロバート・ブロックの原作の権利を監督自ら買い取ってかなり秘密裏に製作された作品。
出演は「若草物語」などのジャネット・リー、また彼女の妹役は「捜索者」や「リバティ・バランスを射った男」などのヴェラ・マイルズ。
また「12人の怒れる男」などのマーティン・バルサムが私立探偵を演じ、怪しげなモーテルの管理人を「胸に輝く星」などのアンソニー・パーキンスが演じています。
サイコスリラーの超有名作で、当時から衝撃的な内容や技巧が話題で評価を受け、アカデミー賞には4部門ノミネートを果たしています。
小学生の頃に初めて鑑賞、また高校では英語の授業だったかで作品を観て翻訳したりしたので、すでに見ていた私はかなり楽した思い出があります。
久しぶりに鑑賞したので感想を残します。
~あらすじ~
マリオン・クレインは職場で横領を働き逃走。
警察の検問などを潜り抜けた彼女はベイツ・モーテルという古びたモーテルにたどり着く。
そこでマリオンはモーテルの管理人ノーマン・ベイツと出会うが、不気味で奇妙な雰囲気に囲まれたモーテルに不安を覚える。
その後、マリオンの妹ライラと彼女の恋人がマリオンの行方を追い、ベイツ・モーテルにやってきます。
私立探偵のアーボガストも加わり事件の解明を試みる一方、管理人ノーマン・ベイツの奇怪な行動が明らかになっていく。
感想/レビュー
映画史に燦然と輝くサイコスリラーの金字塔。
今なお、「パール」などの現代ホラーでも、最近ならロマンスのある「ファルコン・レイク」でも、そして様々なポッポカルチャーでも引用言及されている作品です。
ネタバレ禁止案件
ネタバレが非常に気を付けられる作品であり、公開当時はヒッチコック監督自らの注意喚起映像も流れたらしいですね。
途中入場現金、結末の口外厳禁と、かなりの体制。
昨今はネットもあってネタバレを踏まないことも多変ですが、当時でも厳しいネタバレ防止策が寝られました。
ちなみにまだ観たことがないという方、ネタバレが知りたくないという方はこれ以上先は読まないようにお願いします。
どうしても作品の感想上ネタバレをしたり、仕掛けや核心に触れなければならないので、ネタバレアリのレビューになってしまいますので。
独特かつ衝撃的なストーリーテリング
今作ははじめこそ、犯罪もののようなスリリングさを持っています。
脚本を追うに、金の持ち逃げをする女性が、周囲から疑いの目を向けられたり、何とか警察の検問をごまかして突破したりしています。
そこでは、観客はこの逃走劇に同行するような感覚になり、クライムスリラーとしてすごく楽しい。
しかしベイツ・モーテルに入ってからこの作品のもう一つのスリラー、というか、ホラーの顔が見え始めてきます。
そこで何かしらの怪異に巻き込まれる程度であればまだここまでの衝撃はないのでしょう。
しかし、今作はこのジャネット・リー演じるマリオンが、映画の前半で無残にも殺害されてしまうのです。
主人公を途中退場させるとは思い切りが良いですし、観客は誰に寄り添うが正しいか不明になり、それだけでもストーリーテリングとしての不安につながります。
衝撃的かつ映画史に残るシャワーシーン
しかも転換点にはあの有名なシャワーシーン。
数分のシーンですが日非常にカットが多い映像編集で、モノクロームの中に真っ黒く映る血液、マリオンの叫び声と鋭いナイフなど強烈。
そしてあの独特のサントラ。バーナード・ハーマンによる恐ろしい音。弦楽器を何度もこすって作り、まさにナイフのような鋭さで、身を切り裂いてくるあの音。
聴いたら忘れられません。
監督もあの音楽は大変気に入っていたようですね。
そして、妹のライラが現れていくと話はマリオン殺害の犯人捜し、探偵も出てくるのでミステリーになっていきます。
展開が読めないが、それでもジャンルは確定させていて決して迷わせない。本当に素晴らしい。
小物使い、そして映画史に残る悪役
強烈なのはキャラクターもです。
ノーマン・ベイツは映画史に残る悪役としていまだに愛され、作品と同じくらい引用されます。
彼の狂気は作品内ではたびたび鏡を使って説明され、マリオンが彼と出会うシーンでは互いに鏡があり、二人とも何かを隠しているということを示唆します。
ライラがノーマンの母の存在について感じ取っていくのも鏡を通してですね。ノーマンの精神が分裂していることも鏡の前での行動で示されていきます。
アンソニー・パーキンスはこの役を本当に見事に演じていて、やはりその幼さあり誠実そうな顔立ちはノーマンに必要です。
そのうえで時折見せるヒステリーにも似た激情、そして母を内包しているときの狂気まで、彼なしには成しえなかった恐怖でしょう。
モノクロゆえに白い小物と黒い小物で無垢さと悪を示したり、あとはやはりさすがヒッチコックおじさん、ブロンド美女にのぞき穴という変態ポイントもしっかり入れてきています。
とにかくヒッチコック監督、今作が成し遂げたことと後世への影響は計り知れないものになります。
今回の感想はここまでです。
教科書みたいな作品なので、一般教養として広まってほしい作品でした。
それではまた。
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