「ローマ、愛の部屋」(2010)
作品概要
- 監督:フリオ・メデム
- 脚本:フリオ・メデム
- 製作:アルバロ・ロングリア
- 製作総指揮:フリオ・メデム、アルバロ・ロングリア
- 音楽:ジョスリン・プーク
- 撮影:アレックス・カタラン
- 編集:フリオ・メデム
- 出演:エレナ・アナヤ、ナターシャ・ヤロヴェンコ 他
「アナとオットー」などのフリオ・メデム監督が、ローマにある一つのホテルの部屋、一夜を共に過ごす二人の女性のロマンスとドラマを描いた作品。
主演はフリオ監督の「ルシアとSEX」でゴヤ賞にノミネートを果たし、「ワンダーウーマン」ではイザベル・マル博士を演じたエレナ・アナヤ、「アフターショック」などのウクライナの俳優ナターシャ・ヤロヴェンコ。
フリオ監督の作風テーマが引き継がれているような作品であり、非常にエロてぃずむ溢れるもので、今回は二人の女性の性的なシーンというか、ほぼ二人が全裸で過ごす映画になっています。
日本公開は実はしていないんですね。のちのちにソフト販売はあったようです。
海外のLGBT関連の映画まとめなどではたびたび名前が挙がっていたこともあって、いつかは観てみようかと思っていたのですが、ずっと機会に恵まれず。
ふとNETFLIXで配信されているのを見つけたので今回初めて鑑賞してみました。
~あらすじ~
イタリアのローマ。
バーで出会い夜を楽しみ飲み明かしたアルバとナターシャの二人は夜道を歩いている。
アルバは自分の部屋でもう少し飲もうと、半ば強引にナターシャを部屋へと誘う。
そこでアルバは自分がゲイであることを明かし、ナターシャに迫るものの、彼女は女性と関係を持つのは自分には無理だとアルバをあしらって帰ろうとする。
しかし、忘れた携帯をとりにナターシャは部屋へ戻り、そこで二人はお互いの身の上を話し始める。
会話を重ねていく中で、互いに秘密を少しづつ打ち明けていき、アルバとナターシャは身体も重ねていくことに。
経った一晩であるが、二人はこのローマの部屋で愛と絆を生み出していく。
感想/レビュー
包み隠さない心地よさ
めちゃくちゃ性的な描写なのに、いやらしさが全くなくて美しいエロスってありますよね。今作はそれです。
この映画、始まってすぐに女性が女性を部屋に連れ込んでそんな感じの空気になるというわけで、主目的がセックス。
そしてそのあとはアルバとナターシャがほぼ全編にわたって全裸です。
もちろんこの二人の俳優の体当たり的な演技も素晴らしいとは思いますし、どちらも非常に美しい身体を見せつけていますが、その恥じらいのなさというところが逆にエロティックさを明るく楽しいものに変換しています。
変に性的だなと感じることもなく、ずっと見ていけました。
セックスシーンについても結構大胆なものがあるのですが、そこも含めてこの作品は文字通り赤裸々で丸だし。でもその開放感がなんとも心地よかったです。
衣服がある意味で人物を拘束し、飾り、意味を付け加えているとすれば、それらを脱ぎ捨てて過ごすことで初めて、心も偽りなくいられるのでしょう。
このスタイルの難易度は高いと思うのですが、全裸女性二人だけでワンシチュエーション。それで気持ちよく見ていけるのはまさに監督の全体のデザイン構成が上手いからでしょう。
謎めいた秘密と惹きつけ
また、今作は話の推進力にミステリーっぽさを持っています。
本名すら明かさず本当の自分をも打ち明けないアルバとナターシャ。
自分とは何者なのか、アイデンティティを隠しながらもしかし少しづつ見せながら。
相手が本当に信用していい相手か探り探り、そしてどこかいたずらともてあそび、いじわるも思わせる二人の会話。
時を、場所を超える愛
実際に会話劇と一部屋だけでずっと引っ張っていくわけですが、会話の中にちりばめられている学術的な話と、このローマの部屋にもリンクが見えていますね。
2人はこの部屋、小さな子宮というかおなかの中というかで愛を育てていくわけです。
その愛というものは不変なもの。
しかしこの二人の場合には、この部屋から出たとたんに死んでしまうものなのかもしれません。
それでも、アルバにとっては失った子どものようにまた育てて今度は維持したいものでしょうし、ナターシャにとっても今回こそは姉のおさがりとか2番手ではなくて自分だけの愛なのです。
2千年もの時を隔てながらも、絵画は呼応し、場所も空間も超えていくグーグルアースがある。
時、場所、そして今作は複数の言語が飛び交うことからその文化すらも超越する。中心にあるのは愛ですね。
始まりは隔てられていた二人も、愛で壁を越えた
初めのバルコニーのシーン。二人を外からとらえるカメラでは、画面構成上見事に竿が二人を割っていますが、最後には取り払われて、愛の結晶たるシーツの旗が翻ることに。
まさにグーグルアース的な俯瞰のショットでOPとEDが呼応しているのもなかなかに粋な演出でした。
とりあえず美しくなんだかいやらしくない全裸映画として記憶に残りますし、この作品のあまりのさらけ出し感に、観ている間こちらも一糸まとわぬ開放感を味わうことができます。
ロマンスではありますが、LGBT的な部分に主を置いているわけでもないかと思いますね。
ある程度気軽に楽しめる作品になっていますので、気になる方は是非。
今回は短めの感想になりますが以上。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
ではまた。
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