「デッド・ドント・ダイ」(2019)
- 監督:ジム・ジャームッシュ
- 脚本:ジム・ジャームッシュ
- 製作:カーター・ローガン、ジョシュア・アストラカン
- 製作総指揮:フレデリック・W・グリーン、ノリオ・ハタノ
- 音楽:スクワール
- 撮影:フレデリック・エルムズ
- 編集:アフォンソ・ゴンサウヴェス
- 出演:ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴェニー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ダニー・グローヴァー、ティルダ・スウィントン、スティーヴ・ブシェミ、トム・ウェイツ 他
「パターソン」のジム・ジャームッシュ監督が贈る、ゾンビの襲来により混乱に陥った田舎町とその町の警官たちの物語コメディホラー。
警官たちをビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴェニーが演じ、住人役にはスティーヴ・ブシェミ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ダニー・グローヴァーなどが出演。
また街に移り住んできた葬儀屋をティルダ・スウィントンが演じています。
作品は2019年のカンヌでプレミア上映されていました。ジャームッシュ監督の新作ということで話題でしたが、賛否が割れていたこともニュースになっていて記憶に残っています。
本来は4月に公開のはずでしたがコロナ感染症の影響により延期、6月になりついに公開となりました。
土曜日の朝の回で、スクリーンはかなり大きいところだったのですが、人の入りはそこそこくらいに思います。
映画が好きな方なら、監督新作、また役者がとにかく豪華なので注目でしょうか。
アメリカの田舎町センタービル。
退屈な町で動物たちが逃げ出すという異常事態が起きる。
家畜泥棒の可能性で捜査に当たる地元警官のクリフとロニーだが、原因はよくわからない。
そのうち全米でも似たような異常事態が起こり始め、また日照時間の異常なども発生。それは極地での資源開発工事による地軸のズレによるものだとの報道が流れる。
そして、ついに夜に墓地から死者がよみがえり、町の住人を襲う事件が起きてしまう。
ジャームッシュ監督が送り出すのは、非常にメタ的で様々なホラー映画、特にモンスターやロメロに対するリスペストに溢れるコメディホラー。
全体に淡白でシニカルと言わないまでも外しているトーン。
しかし、そのふっと笑ってしまう要素含めて、自分にはあまりハマることがないままに終わってしまった作品でした。
ありふれんばかりのホラー映画への目配せはたくさんありますし、ロメロの描いた世の終わりの感じに似た表現は、昨今のゾンビ物と比べれば久しぶりに観る形です。
しかし、そうした目配せがただずっと続き、この作品自体に込められるメッセージはあまりに今更であり、かつ全体を通して語られている気もしません。
映画や登場人物がそれ自身を認識し、第4の壁を破るならば、おもしろい以上に理由が欲しいです。
「デッドプール」(2016)ではその部分が悲惨な現状からの逃げという形で見事に昇華されていたのと比べると、なんというか安易に感じます。
シュールな笑いを取ろうとするのは分かるんですが、その先が見えてこない。
テーマ曲のくだりも脚本のくだりも、アダム・ドライバーのスター・ウォーズネタも、どこまでもワンポイント笑いを提供する機能だけです。
“Kill the head”を連呼しますけど、それもプロダクション会社名。でもそれだけ。
この作品で個人的に救いなのは、画、それも俳優たちがスクリーンに出てくるという意味での画でした。
インディ系で欠かせず、いい感じのところを集めてきていてもう豪華ですよね。
シューリズムやメタ発言、数々のオマージュから俳優、監督ネタ。
それらが並ぶだけなのは残念ですが、そのままにスライドしていって終わってしまう作品でした。
アメリカの縮図をこの田舎町に入れ込んで、そこに笑いと見せて、消費社会への批判を蒔く。
生きてても死んでても、ファッションや電子機器、物質的な幸福にとらわれている。
既にゾンビと化した生のない人間たちを傍観者のレンズを通して観客も観ていくわけです。
しかし、そのメッセージは遅すぎます。
2019にしてその話というのは何とも今更ですし、語り方としても個人的にはゾンビ物を、それもこんなにも過去作への寄りかかりを増やして見せる必要性はなかったかと。
非常に残念ではあるのですが、「これは悪夢。もうじき終わる。」と脳裏に浮かびながら観てしまった作品でした。
俳優陣はそれぞれ見事な仕事っぷりですし、シュールなユーモアがハマる人にはとてもいい作品と思います。
個人的にはノレなかったということです。
感想は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
とにかく久しぶりに映画館で新作を観れたのは嬉しかったですね。それではまた。
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