「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(2023)
作品概要
- 監督:チャド・スタエルスキ
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脚本:シェイ・ハッテン、マイケル・フィンチ
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原作:デレク・コルスタッド
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製作 チャド・スタエルスキ、ベイジル・イヴァニク、エリカ・リー
- 音楽:タイラー・ベイツ、ジョエル・J・リチャード
- 撮影:ダン・ローストセン
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編集:エヴァン・シフ
- 出演:キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーン、ビル・スカルスガルド、真田広之、スコット・アドキンス、リナ・サワヤマ、イアン・マクシェーン、ランス・レディック、シャミア・アンダーソン 他
前作「ジョン・ウィック:パラベラム」の続編であり、「ジョン・ウィック」シリーズの第4作。
脚本はマイケル・フィンチが共同執筆、監督は前作と同様にチャド・スタエルスキが務めました。
主演はキアヌ・リーブスが再び伝説の殺し屋を演じます。
その他「アベンジャーズ/エンドゲーム」などの真田広之がジョンの旧友であり味方となる日本人を、また「レイジング・ファイア」などの大スタードニー・イェンがジョンに差し向けられた盲目の刺客を演じます。
その他シャミア・アンダーソン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、イアン・マクシェーンらが出演。
元々は2021年5月21日に公開予定でしたが、COVID-19のパンデミックやキアヌ・リーブスが出演した「マトリックス レザレクションズ」の公開スケジュールに変更が加えられたため、こちらの公開が延期されました。
北米では今年の3月には公開されていて、日本公開が遅くて本当にやきもきしていましたが、無事に公開。
その3月にはコンシェルジュのシャロン役で素晴らしい俳優ランス・レディックが逝去されたとの悲しい報道もありました。
今回は楽しみにしていた公開とあり、IMAXで鑑賞してきました。もともとはすごく小粒な作品で始まったのが、今や結構大きなスクリーンをつかってかかるようになっているのは感動です。
~あらすじ~
裏社会の掟を破りながら、粛清の包囲網から生き残った伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。
彼は地下に身を隠し、全てを支配する組織である主席連合からの自由を求めて再び闇の男として立ち上がる。
一方、組織内で権力を握る若き侯爵グラモンは、今回の件の責任がウィンストンにあるとし、ジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破。
さらにジョンの旧友であり盲目の達人ケインを仲間に引き入れ、ジョン・ウィック狩りを開始。
そんな中、ジョンは日本の友人であるシマヅの助けを求め大阪のコンチネンタルホテルに向かう。
ジョンはかつての世界との決着をつけ、真の自由を手に入れることができるか。。。
感想/レビュー
1作目の小粒な暗殺者物から、2作目以降はその独自のユニバースを広げて近接格闘アクション映画のレベルを押し上げてきたシリーズ。
前作の「ジョン・ウィック パラベラム」を観た際にも、また一つ歴史が更新されたことに興奮を覚えました。
そして今作でもそれは同様です。むしろさらに加速していって涙すらしました。
映画の上映時間は伸びに伸びていき3時間に迫る勢いですが、矢継ぎ早にすさまじいアクションがバラエティ豊かに繰り出されていき、全く飽きません。
本や馬といった新たなジョンの武器?を生んだ前作に続きつつ、実際に武器バラエティも増えています。
なんだか懐かしさすらあるヌンチャクに、12ゲージ散弾銃用に設計された焼夷弾であるドラゴンブレス弾。
プロット面やスタイル自体には大きな変更を加えずに、シリーズが評価され愛されてきた点をのみ、ものすごいレベルで磨き上げていく。
より奥深く、美しい世界
チャプター2ではマフィアやら裏社会をも凌駕する”主席連合”を見せ、大々的に戦争へと突入したパラベラムからは、もはや一般人の介入余地のない世界に。
1作目でしっかりとその奥深さで魅了したこのジョン・ウィックの世界ですが、今作でも侯爵というキャラクターからさらに広がりを見せていく。
そこには1作目ほどのミステリアスさはないのですが、特殊な”ルール”に従って生きる闇の世界の住人たちがいて、そのルールにこそジョンの生き残る道があることが分かります。
まずは状況が整理されたり、何処に向かうべきなのかが分かりやすくていいと思うんです。
ただやたらにアクションをしたり闘うんではなくて、時間的にも場所的にも道筋が経っているのです。
OPすぐには「アラビアのロレンス」オマージュでマッチを吹き消してからの太陽のショット。
またドニーさんが演じるケインも、オルゴール付きのロケットペンダントを持っていて「夕陽のガンマン」のモーティマー大佐オマージュ。
今回シャミア・アンダーソン演じるキャラが”名無し”なんてのもマカロニウエスタン「荒野の用心棒」っぽい。
小ネタにもサービスが効いています。
奥深い世界にはこれまた興味深い旧友たちが出てきますね。
真田広之さん演じるコウジも、ドニーさん演じるケインもそれぞれに仁義があり悲しいですが、このアクションにドラマを与えてくれています。
ここは権力や支配といったもののみを押し出す主席連合と侯爵へのカウンターとして、ジョン含めて皆がただの殺人マシンではないことを強めます。
レベルが高すぎて涙が出るアクション
アクションについては観るのがはやいので語っても仕方ないんですが、語彙力が飛びます。
序盤のコンチネンタルホテル大阪での一連の戦闘でもうやられてしまいました。
やはり美しいライティングや画作りもあるんですが、あまり動かない撮影カメラに一連の動きを阻害しないカットの少なさ。
そしてすべての人物たちが皆一体となり生み出していく殺しのダンス。
効率的でありなまなましくありつつ、その所作の美しさで魅了してい来るアクション。
実際クラブでジョンが敵と戦うシーンがありますが、流れる水の中で戦う男たちはまさにクラブの真ん中で激しく踊りに身を投じているようにすら見えます。
ヌンチャクでフェイントも交えているところとか、鎖の部分を使って締めや投げ技に使っているところなど、ただヌンチャクを使うのではなくて実戦としての用途を見せてくれています。
凱旋門での銃撃戦とバイク、またカーチェイス。
ここは本当にすさまじい。
あらゆるアクションをキアヌ本人がこなしていくからこそのすごみがありますが、車にひかれるときもスムーズ。また合気か柔術で相手を投げて車にひかせたりもすごい。
極めつけとしては車をドリフト奏功しながらの360度からの銃撃。ワンカットで敵の集団の周りをぐるぐる回りながらのアクション。
マッスルカーの重量にキアヌのドライビングテクニックまでもをこれでもかと堪能できて、涙が出ました。本当にこんなものを見せてくれてありがとう。
疲れたキアヌにだけ出せる謎の色気
中心にいるキアヌ。
彼がスーツを着て、髪を乱し傷を負い、うめきながら立ち上がって歩いていく。そこに何かが宿っています。
セリフだって少ないんですが、彼にだけしか出せない色気。
アクションにもちろん目は行くし、そこはたたえられるべきです。
しかし、ジョン・ウィックというキャラクターが成立しているのはアクションができるから以上に、キアヌ本人の役者としてのアイコニックさが重要だと改めて思います。
人としての情を浮き彫りに
加速していくアクションによって、ドラマが薄まっていくことは仕方がない。
そもそもジャンルモノとしてその辺は期待しなくても良いですから。
でも、アクションの背景を徹底して色分けしたのは良いことかと思います。今回はひたすらに”家族”という要素が出てきます。
アキラとコウジの関係性は、コンチネンタルホテル大阪の序盤の「娘との食事」で完結ながらわかりやすく描写されています。
この時点で仁義を、ルールの中では矛盾してしまうのに大切にする。真田さんがかっこよすぎなんですが、彼はジョンへの友情と娘への愛情とい”情”を優先する。
それはケインも同じことです。旧友の抹殺を断るものの、前作のソフィアと同じく人質になっている娘のために立ち上がる。
序盤から絶対悪を私利私欲のみ考えている侯爵に絞っているため、ジョンやコウジ、そしてケインですら身を案じることができるのです。
投げられればうめき、撃たれれば膝をつき、刺されれば血を流す。
彼らはスーパーヒーローではない、生身の人間。生身のアクションを繰り出すために、こうしたドラマ性の構築をしているのですごく見やすい。
何者であるか
問題はどんな人間として覚えられるか。
シャロンは良き友であった。コウジは?ケインは?そしてジョンは?
修羅の世界にてすべてはルールの中で起きていますが、本当に大切なのは友情や愛情などといった個人の想いです。
決闘のクライマックスは覚悟と、相手と真っすぐに向き合う姿勢の表れ。
とにもかくにもすさまじいアクションであることは確かで、これは劇場の大きなスクリーンでしっかりと見届けてほしい。
オスカーには間違いなくスタントやアクション部門を設けなくてはいけないと思います。何かの形でたたえなくてはいけない、その義務が我々にはあると思わせる傑作です。
続編の話もすでに報道されていますが、どんな形になっていくのか楽しみです。
今回の感想はここまで。
それではまた。
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