「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」(2021)
- 監督:アンディ・サーキス
- トム・ハーディ、ケリー・マーセル
- 原作:デイビッド・ミッチェリニー、トッド・マクファーレン『ヴェノム』
- 製作:アヴィ・アラッド、マット・トルマック、エイミー・パスカル、ハッチ・パーカー、トム・ハーディ
- 音楽:マルコ・ベルトラミ
- 撮影:ロバート・リチャードソン
- 編集:メリアン・ブランドン、スタン・サルファス
- 出演:トム・ハーディ、ウディ・ハレルソン、ミシェル・ウィリアムズ、ナオミ・ハリス、スティーヴン・グレアム 他
作品概要
マーベルヒーロー、スパイダーマンの宿敵の一人として残虐な悪役であるヴェノム。2018年にはヴェノムを主人公とするオリジン映画「ヴェノム」がルーベン・フライシャー監督によって生み出されました。
今作はその続編となるもので、監督はこれまで「猿の惑星」シリーズなど数々のモーションキャプチャーで偉大な仕事を成し遂げてきた俳優アンディ・サーキス。
主演は前作と引き続き「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などのトム・ハーディ。そして彼の元恋人役にはミシェル・ウィリアムズ。
さらに今回はタイトルの通りに、ヴェノムに対して同族でありさらに危険な存在であるカーネイジが登場し、カーネイジが規制する宿主には「猿の惑星:聖戦紀」ではアンディ・サーキス演じるシーザーと対峙したウディ・ハレルソン。
前作もかなりのヒットを飛ばし、これもまた一つのヴェノム映画の正解と思わせる作品でした。
続編は前回の時点で確定していたのですが、なんだかんだで3年のスパンが空きましたね。
コロナの影響もあって公開は伸びていたものの、何とか年内に公開ができました。
なんだかんだで前作が結構人気出ていたのか、かなり劇場は混んでいましたね。またMCU側の製作ケヴィン・ファイギの発言による影響もあるのかもしれません。
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~あらすじ~
地球外寄生生物シンビオートであるヴェノムとともに暮らす記者エディ・ブロック。
人食衝動を抑えながらなんとかヴェノムと過ごしているエディだったが、ある時猟奇連続殺人犯であり死刑囚のクレタスに指名され面会をすることになる。
クレタスの示すヒントをヴェノムは正確にとらえ、エディはその助けもあって未解決事件の真相を明らかにした。
おかげで記者としてエディ・ブロックはヒーローに返り咲く。
しかしその成功の見返りとしてクレタスはエディを再度、自らの死刑執行の直前に呼び出した。そこでクレタスはエディを挑発し、ヴェノムが勝手に激高してクレタスを攻撃。
仕事の邪魔をされたエディとヴェノムはケンカ別れをし、エディは平穏を、ヴェノムは自由をしばし楽しむ。
ところが、クレタスは攻撃された際にエディにかみつき、その血からシンビオートの細胞を取り込んでいた。
死刑にて危機が迫った時シンビオートの細胞がクレタスを守り、残虐なモンスター、カーネイジが誕生した。
感想/レビュー
エディ×ヴェノムのラブストーリー
前作のヴェノム初登場に関しては、若干ではあるもののホラーテイストというかエイリアンを題材にした君の悪さなどもありました。
しかしそれを差し置いて人気を博した理由は、なんといっても主人公エディとヴェノムのコンビのやり取りが、まるで夫婦漫才のようにはまっていたことです。
トム・ハーディのフィジカルアクトと調子悪そうな感じ、意外にもお茶目で子どもっぽいヴェノム。このコンビが愛憎入り混じりながらもイチャイチャする姿が良いわけです。
それが今作では余すところなく発揮されています。
正直エディ×ヴェノムのラブストーリーなのかもしれません。
今作は二人の愛が試される。一時はお互いと離れるという選択をしながらも、やはりお互いを必要とする。
そこにカウンターであり二人の関係性の在り方に対比するように、怪物カーネイジが登場するわけです。
カーネイジには敵という役目以外にも、まさに困難を二人で乗り越えるということから絆と愛を深めていくための役割もあるのです。
なんと素晴らしい愛の物語であることか。
そしてそのテイストに関しては、アンディ・サーキス監督は正しい選択をしたと思います。
前作も私は勝負だったと思います。ヴェノムというキャラクターを扱ううえで、しかもこのように非常に凶悪なビジュアルを持っていて、指定作品にせずに描けるのか。
今作はR指定としない前作の描写基準を引き継いでいますが、より的確なのはコメディ色を強めたことでしょう。
続編になると結構な数のシリーズ映画は、ダークにシリアスに、重めの選択を主人公に迫ったりすることが多いですが、今作はそんな呪いをはねのけて、非常にこれまたフィジカルにスラップスティックにエディとヴェノムのケンカを展開。
そこかしこに散らばる笑いどころもたくさんで、全編は楽しく見ることが前に出ていますね。
モーションキャプチャーの境目が見えない自然さ
そうしたコミカルさの中にも、ヴェノムとエディのやり取りから、変身、カーネイジの大暴れシーンなど、CGIを駆使したシーンが確かに多いです。
ただ、ここはさすがアンディ・サーキスが監督を務めているということだけあって、そのつなぎ目の自然さとかは驚異的です。
ヴェノムはタフマッチョでアメフト選手的な感じですが、対するカーネイジはあちこちに触手を伸ばし広がった全体を身体として戦闘するその差別化なんかもわかりやすくありましたね。
全体にキャラクター数が本当に少なくて、こじんまりと解決していることなども良い方向に作用しているのではないでしょうか。
自分の生って大事だよね。ということから、お互いにいったん距離を置くエディとヴェノムカップルに対して、カーネイジは残虐性においてはすごく相性が良い。
しかし根底にあるのはある意味で搾取的かつ自己中心的な関係性でした。
色付けは非常にわかりやすいですが、コメディテイストも含めてこのくらい極端なほうが良いですよね。
まあ全体的には脚本は結構散漫だったり、あと能力の差別化に関しても具体的にヴェノムとカーネイジでできることできないことは名言や明示されないのはちょっともやもやします。
また、どうにも感情移入というか、集中できなかったのも事実です。
アクション性は他のヒーロー映画での感じではなくて原始的とも思えて暴力性たっぷりな肉弾バトルで良いですが、再生能力とかもあるせいか何が起きても心配しなくていい気がします。
その点が強いほどに、画面上で起きることに対する心からの興味というのを引き出すのは難しい気がしました。
シリーズのスタイルが確定
前作と比較すると、さまよう感じはなくてこのシリーズの風潮を確定させた来た感じです。
カーネイジと言いながらももちろんグロゴア描写はなく、地球外寄生生命体と人の捕食という要素について弱いと思われてしまうかもしれませんが、前作に会ったホラー的なことは完全にあきらめているのが良いのでしょう。
エディとヴェノムの痴話げんかを主軸にコメディ映画にしたからこそ、そういった恐怖や残酷さの描写がなくても許されます。
根底にあるエディとヴェノムの二人のバディ感が楽しめればいいんですね。
そもそものカーネイジ誕生のきっかけを思い出してみましょう。あれってクレタスがエディをコケにしたのがきっかけ。
エディをバカにされたことにヴェノムは怒り、クレタスを攻撃したんです。ダチのために拳をふるうなんて、美しい愛情じゃないですか。
さて、ここでは特に言えないのですが、非常に重要なエンドクレジット後の映像があります。この点も含めてぜひ映画館で目撃してほしい。
一つ言えるのは、とにかく早めにこの作品観てねってことです。
完璧な作品じゃないし、荒唐無稽支離滅裂な点も多いです。あまり入り込めないって点も。
それでも主軸はさすが人気を博すバディということもありそこがしっかりしているから良かったなと思えました。
これからヴェノム3作目に向けていくと同時に、そろそろソニー的にも展開の幅を広げたいと思います。
いろいろと楽しみになっていく作品でした。
というところで感想は以上になります。さいごまで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた。
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