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「イングリッド -ネットストーカーの女」”Ingrid Goes West”(2017)

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Ingrid-Goes-West-film-2017 映画レビュー
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「イングリッド -ネットストーカーの女」(2017)

  • 監督:マット・スパイサー
  • 脚本:マット・スパイサー、デヴィッド・ブランソン・スミス
  • 製作:ジャレッド・イアン・ゴールドマン、ティム・ホワイト、アダム・ミレルズ、ロバート・ミレルズ、オーブリー・プラザ
  • 製作総指揮:メアリー・ソロモン、リック・リッカートセン、アラン・マンデルバウム
  • 音楽:ニック・ソーバーン、ジョナサン・サッドフ
  • 撮影:ブライス・フォートナー
  • 編集:ジャック・プライス
  • 出演:オーブリー・プラザ、エリザベス・オルセン、オシェア・ジャクソン・Jr、ワイアット・ラッセル、ビリー・マグヌッセン、ビリー・マグヌッセン 他

Ingrid-Goes-West-film-2017

これまで短編やミニシリーズを製作してきたマット・スパイサー監督の初長編デビュー作となる、インスタから始まるストーカー女性のブラックコメディ映画。

主演は「チャイルド・プレイ」などのオーブリー・プラザ、また彼女が近づく人気インスタグラマー役には「ウインドリバー」「アベンジャーズ」シリーズのエリザベス・オルセン。

作品はサンダンス映画祭にてプレミア上映されたのち一般公開されましたが、日本では結局公開は無かったですね。ソフト販売や配信は行われています。

自分は海外に行ったときに現地で初めて鑑賞。その後日本での廉価版ブルーレイを買って再度鑑賞しました。

また久しぶりに観たので今回ちょっと感想を残しておこうと思いました。

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イングリッドは母が亡くなって一人になってから精神的に不安定だった。

あるとき自分がインスタでフォローしている女性が結婚式をするが自分は招待されず、腹を立てたイングリッドは会場に乱入して花嫁に催涙スプレーをかけ捕まってしまう。

精神病院での治療のあと、イングリッドは再びインスタグラムの世界へ入り浸り、そこで人気インスタグラマーのテイラーを見つける。

彼女に魅了されたイングリッドは投稿にコメントを残すと、なんと本人から返信があった。

イングリッドはさらにテイラーに近づこうと、テイラーの住むロサンゼルスへと移り住む。

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マット・スパイサー監督によるSNSストーカースリラーですが、今作はコメディでもあると思います。

ダークなコメディ。

主人公イングリッドが常軌を逸した行動をとっていき、もちろん執着は恐ろしいものでありながら、同時に恥ずかしく笑えるのです。

はじめにテイラーに近づこうと店で聞こえるように独り言言ったり、電柱の影から除いてみたり。

コメディですよ。イングリッドに限らず、テイラー行きつけのカフェの店員がする”今日の質問”とか、不謹慎というかエグいというか。

世界構築がちょっと悪ふざけ感があると思います。

それはイングリッドの造形を手伝うオーブリー・プラザの素晴らしさも貢献しています。

大きな眼を見開いて不健康そうな膨れっ面で。精神的に変というのも納得な姿。

彼女自身すごく変わった俳優で、インタビューがユニークでおもしろいですが、素敵な笑顔からエロティックさ、またキレた怖さまですごく柔軟に幅広く表現して見せます。

絶妙に勝ち組じゃない女子感が最高。

イングリッドがどこまでいこうと、サイコな女と観客が捨てない、どこか繋がりを持ち続けていけるのも、オーブリー・プラザのおかげでしょう。

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カウンターになるテイラーを演じるエリザベス・オルセンはかわいくて柔らかで幸福、それをルックで伝える象徴としてよかったです。

なにしろ、他の人もそうなんですが、表層的な人間の造形がいいです。

上っ面感がね。というのも個性などよりもランクやステータスの描写が多いからでしょうか。

ただそのステータスこそが、現代における(もちろん男性も含むのですが)”シングルの女性”への呪いであると思います。

主人公は女性です。

個人間で異なるでしょうし、主観でしかないのですが、一人でいることに対して、女性がそうあることを許さず侮蔑する方が、男性に対するそれより強い気がします。

一匹狼という退避所が、女性には用意されていない気がするのです。

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イングリッドはSNSや他者評価、ステータスを気にしすぎて、自分で自分を追い詰めている用にも思えますが、それだけでしょうか。

いつからか社会に(暗黙の了解として)求められる(求められていると感じ追ってしまうもの)ものは変容しています。

数値化され、パラメータと化す人間関係が面倒で苦しいながら、そこに依存していく。

現代の人に必要な物語です。

自分の中のどこかにイングリッドを見つけながら、彼女のおかしさに笑いつつ戦慄する。

映画としてふと引いた目線を持てば、「何してんのこの人たち?」な状態でも、私たちは普段その視点を持たずに、ステータスアップに躍起になっているわけですから。

マット・スパイサー監督は現代社会に生きる人を客観視する視点をおきながらも、それでいて切れない繋がりを感じさせます。

笑ってるのは外側だから。でもどこかで私もイングリッドだと感じるから、嫉妬や羨望と恐怖が流れ込む。

最後の最後にダンに救われると思わせながらも、バズることでこの呪縛から抜け出せないとも思わせる気味の悪さ。

ダークで楽しく、オーブリー・プラザが本当に素晴らしい現代の観察記録です。

感想はこのくらいになります。

緊急事態宣言が解除されたものの、まだまだ新作映画を観ることは叶いそうにありません。

配信とかソフトとか、たくさんの発見があると思うので、皆さんもいましばし頑張っていきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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