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「ザリガニの鳴くところ」”Where the Crawdads Sing”(2022)

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「ザリガニの鳴くところ」(2022)

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作品解説

  • 監督:オリビア・ニューマン
  • 製作:リース・ウィザースプーン、ローレン・ノイスタッター
  • 製作総指揮:ロンダ・トーレフソン、ベッツィー・ダンバリー
  • 原作:ディーリア・オーエンズ
  • 脚本:ルーシー・アリバー
  • 撮影:ポリー・モーガン
  • 美術:スー・チャン
  • 衣装:ミレン・ゴードン=クロージャー
  • 編集:アラン・エドワード・ベル
  • 音楽:マイケル・ダナ
  • 出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、

全世界で累計1500万部を売り上げたディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説を映画化した作品。

ドラマシリーズ「ふつうの人々」で注目を集めたデイジー・エドガー=ジョーンズが主演を務めています。

その他、「アウトポスト」のテイラー・ジョン・スミスが主人公に優しく接してくれる青年を、そして「ブルックリンの片隅で」「逆転のトライアングル」などのハリス・ディキンソンが遺体で見つかった青年役で出演しています。

監督は「ファースト・マッチ」などのオリビア・ニューマン。

音楽は「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」でアカデミー作曲賞を受賞したマイケル・ダナが担当。さらに、今作のためにテイラー・スウィフト新曲を書きおろしていて主題歌になっています。

劇場公開されていた際に観に行こうか迷った挙句公開が終わってしまいました。今回は配信で見つけたので初めて鑑賞しました。

「ザリガニの鳴くところ」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

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ノースカロライナ州の湿地帯で、有望な若者が変死体として発見された。犯人として疑われたのは、「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で育った純真な少女カイア。

彼女は6歳のときに両親に捨てられ、それ以来学校に通わず、湿地の自然から生きる術を学び、たった一人で生きてきた。

そんなカイアの孤独な生活に心優しい青年が現れたことで、彼女の運命は大きく変わる。法廷では彼女に対して差別や偏見も混ざったような裁判が進んでいくが、カイアは自分の半生について振り返る。

感想レビュー/考察

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原作の深さを感じるが、そこに飛び込んでいかない

原作小説の発行部数の多さにびっくりしましたが、それほど愛されて広く知られるものなのですね。私は原作を読まずに映画を観ましたが、原作の力を十分に感じ取ることのできる映画化ではあると感じました。

含みのある言い方になりましたが、この映画は原作に敬意を表していて、大切にしている。しかし、映画としての何かが欠けて感じてしまいました。

聖典に傷をつけないように慎重にページをめくり、その原稿の文字には触れていないような。なぜか表層的な感じがして、惨たらしい部分とか奥底にまで侵入しない、手を漬けきれていない気がします。

原作への愛情ゆえだとすれば、入り口として鑑賞し、そのあとで本を読むということでしょうか。いずれにしても大胆さや度胸を感じないのです。

描写からも人物からも、これは結構奥深い設定と造形があるだろうなと感じることはできますが、映画として考えるには薄くすら感じてしまう。

題材にある湿地や沼の奥深さを感じさせながらも、そこに深く潜りこんでいかない印象を受けます。

小説を映像に起こしただけの感覚

その映画かにしてはどこか切り離されてしまうような感覚は、セリフやモノローグにも大きく反映されていると言えます。

まあモノローグはしょうがないにしても、人物のセリフについてはまさに小説の、文字情報として書かれていて読むからこそ良いものであって、映像で人物が音で語ると違和感があります。

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深く愛せる可能性が十分に感じ取れるのに、ダイジェスト的な表層をさらうスタイルで入り込みにくいと思いました。

デイジー・エドガー=ジョーンズが人間社会から独立したカイアを絶妙なバランスで演じる

各人物はとても良く演じられているように思います。

特筆すべきはやはり主演のデイジー・エドガー=ジョーンズでしょう。カイアは湿地の中で、ひとりでサバイバルをしてきた女性。一般的な人間社会のルール規範よりも自然の中での厳しい環境と優しいエコサイクルの中で育ってきた女性です。

カイアにその時に残酷な合理性と、自然からくるような包容力や俗世から抜けた魅力を感じられるのは、デイジーの力があるからだと思います。

裁判においても、自分自身を外から描写されたり決定されることには強く反発して、自分を決めているのは自分だけだと発言しますが、デイジーのルックと芯の強さからくる説得力が大切だと思います。

また結末として非常に重要なのですが、カイアが決して観客側に立たないのも重要です。彼女は作中でも人間社会から独立して生きています。なので人間社会側である観客から見ても、決して純粋に主人公として信じ込んでも行かない、なにか突き放す力があるのです。

これは今作のミステリーが機能するためにも必要なものでしょう。

デイジー・エドガー=ジョーンズの魅力については監督のオリビア・ニューマンもインタビューで絶賛していて、ボートの運転や川に飛び込んで泳ぐシーンなども自分でこなしていたそうです。

虐げられる女性としての物語

そしてこの作品は、フェミニズム的な要素も持っています。

カイアが生きてきた環境はDVに悩む家族。父(おそらく戦争で精神を病んでしまった)の暴力で母は家を去り、兄妹たちもみな散っていった。

カイア自身も父に精神も肉体も虐待をされてきて、教育の道もなかったのですが、その後大人になってからも厳しい人生を歩んでいます。

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「湿地の娘」というレッテルを貼られて迫害されてきた彼女はサバイバーですが、今作で彼女がロマンスの要素として対峙するのは、クズ男チェイス。

彼はまず、カイアが外界接触が少ないことを利用して、その無知さに漬け込んで自分の性的な欲求を満たすだけの対象にしようとします。彼はビーチで一度セックスを迫りますが断られます。しかし二度目の家ではかなり強引に下半身から行動する。

セックスについても、家に入る際の強引さも、チェイスとテイトと対比的に描かれますので印象強いです。レイプ未遂までしたチェイスはカイアの家を荒し、”女性が男の思い通りにならないと腹を立てる”という典型的なクソとして描かれています。

またチェイス志望の事件でも、チェイスがすごく女遊びが激しいと知っていながらも、なぜか手を出されたカイアの方が悪いと罵っていますし、根深いものがあります。

さらに町の人間たちなどは、彼女を無学な動物と扱いますが実際にはすごく頭が良く、学者以上の調査を成し遂げているのです。女性には学がないと思うこと、潜在的な差別です。

苦境に立たされ続ける女性としての物語がありました。

複数のプロットがあるが、曖昧な消え方をする

いろいろとストーリーがあるのですが、根本は裁判なのか、ロマンスなのか。また中盤でカイアが出版社とやり取りをしてなんとか土地の所有権を購入しますが、その土地を開発者に撮られそうになるの問題もうやむやすぎます。

並走してるプロットが多い割には相互にかかわっているようで途中で立ち消えているものもあり悩ましい。原作ではもっとしっかりと描写されているのでしょうか。

時に獲物が捕食者を殺さねばならない

最終的にはこの作品は裁判の行方を追うので結末はカイアの無罪。

しかし、重要な証拠であり犯人が持ち去ったとされる貝殻のネックレスが、カイアの書いた日記の中に埋め込み型で入っていたことから、真犯人は彼女であることが示唆されます。

「時に獲物が捕食者を殺さねばならない」というのも結構直接的な示唆ですし。テイトと共謀した可能性も考えましたが、老人になった彼が驚いているということは、カイアの単独行動であったのでしょう。

壮大な大河的な話なのかもしれませんが、2時間ほどにまとめる以上零れ落ちるものもあり、なんとか原作をなぞろうとしつつ汚さないように気を付けた結果、原作を読み説いたというよりも眺めてみたような印象の作品でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

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