「12人の怒れる男」(1957)

  • 監督:シドニー・ルメット
  • 脚本:レジナルド・ローズ
  • 製作:レジナルド・ローズ、ヘンリー・フォンダ
  • 音楽:ケニヨン・ホプキンス
  • 撮影:ボリス・カウフマン
  • 編集:カール・ラーナー
  • 出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ 他

ルメット監督初監督作にして、アカデミー賞には作品賞含む3つのノミネートをしましたが、受賞には至りませんでした。相手が悪かったですね。

リーン監督の壮大な戦争映画「戦場にかける橋」が相手でしたから。それにしても後年まで愛され続けた本作は、今や脚本のお手本としても愛されています。

ヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番もヒーローとして残り、映画での議論や集団性は講義でのケースとして扱われことも。

私の中では「セルピコ」(1973)と並んでルメット監督作のお気に入りです。

父親を殺害したとして少年が裁判を受ける。示される物証や証言は少年の有罪を思わせるものばかり。

そして評決は12人の陪審員に委ねられた。

全員一致で有罪だろうとされたところ、ただ一人無罪に投票する。ただ有罪とは思えないというこの陪審員は、理論的に事件を再検証し始める・・・

たったひとつの部屋で撮影されるドラマ。12人が代わる代わる論争していくさまは、劇中の密室、夏と雨の湿気も相まってすごく熱いです。

怒れるなんていってますが、12人全員が怒るわけではないですよ。数人気性の荒い感じの男はいますけど。

しかし、12人の男それぞれにしかりとした人物が出来上がっているのは見事です。

優しい男、冷静で論理的、興味がない、コンプレックス、義理堅い、怒りっぽい、差別的、自分の意見が無い・・・それぞれが人格のサンプルのように整理され、議論上での揺れが自然に観られます。

ささいな疑問に、その論理性に納得させられ少年の有罪が揺らいでいく過程は見事です。

そのドラマとは別にまた、集団に対する偏見や差別も見えてきます。いかにそれが自然と普段の私たちの思考に入ってきているのか、思い知らされます。

私の意見ですが、真実や正義の不安定さを描いているとも思えました。

映画で言うように、真実は誰にもわからず、罪のない少年を死刑にするのかもしれないし、殺人犯を自由にしてしまうのかもしれません。

そうなれば、真実のもとに行われるはずの正義も揺らいでしまいます。

ただ私たちができることは、できるだけの偏見や差別を取り除きながら、真実を求めて議論していくことだけなんでしょう。そしてそれが難しく大切なんだと感じます。

そんなわけで、ルメット監督からの密室法廷ドラマ映画でした。

おそらくどんな人でも楽しめると思うので是非。時間も90分ほどですし。

それではまた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です