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「最高に素晴らしいこと」”All The Bright Places”(2020)

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「最高に素晴らしいこと」(2020)

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作品概要

  • 監督:ブレット・ヘイリー
  • 脚本:ジェニファー・ニーヴン、リズ・ハンナ
  • 原作:ジェニファー・ニーヴン『僕の心がずっと求めていた最高に素晴らしいこと』
  • 製作:エル・ファニング、デヴィッド・S・グレートハウス、ブリタニー・カハン、ミッチェル・カプラン、ダグ・マンコフ、ポーラ・メイザー、アンドリュー・スポールディング
  • 製作総指揮:キミ・アームストロング・シュタイン、リズ・ハンナ、ロバート・サレルノ
  • 音楽:キーガン・デウィット
  • 撮影:ロブ・ギヴンズ
  • 編集:スージー・エルミガー
  • 出演:エル・ファニング、ジャスティス・スミス、アレクサンドラ・シップ、キーガン=マイケル・キー、ルーク・ウィルソン、ケリー・オハラ 他

心に傷を抱えた高校生二人が出会い、地元の名所めぐりの課題を通しながらお互いの癒しを見出していく恋愛映画。

主演は「ティーンスピリット」などのエル・ファニング、また「名探偵ピカチュウ」などのジャスティス・スミス。

監督は「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」のブレット・ヘイリーが努めます。

ジェニファー・ニーヴンの執筆した小説を原作にしており、製作はネットフリックスになっています。なので配信公開ということに。

ある程度スター出演なので劇場公開もできたかもですけれど、割と多くある難病者に比べると精神的な部分での苦しさがあるので興行は厳しいと判断だもあったのでしょうか。

個人的にはブレット・ヘイリー監督の「ハーツ・ビート・ラウド」は2019年ベストに選んでいるくらい好きな作品なので、新作になるということで興味があり鑑賞しました。

~あらすじ~

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インディアナ州にある小さな町。早朝にランニングをしていたセオドアは、橋の際に立っている少女バイオレットを見つける。

自殺するつもりかと思ったセオドアはバイオレットを止めるのだったが、バイオレットは迷惑そうにその場を去っていった。

バイオレットの姉はその橋の下で交通事故にあい亡くなっており、それ以来彼女は自分が生き残ったことによる罪悪感を抱え、友人とも距離を置いて過ごしていた。

一方セオドアは学校では変人扱いされており、ふと学校に数日間来なくなったり、過去には授業中にキレて騒ぎを起こしたこともあった。

ある日学校で、州の名所を各自ペアになってめぐりその紹介発表をする課題が出た。セオドアは自分のペアにバイオレットを指名するが、彼女は課題をやる気がなく免除を求める。

セオドアがしきりに誘い、面倒になったバイオレットはしぶしぶ課題に付き合い始めるが、その中でだんだんと姉の死に向き合うようになり安らぎを得ていく。

しかし、セオドアには誰にも言えていなかった過去の傷があり、その深刻さはバイオレットの気づかないうちに悪くなっていた。

感想/レビュー

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総合して主演のエル・ファニング、ジャスティス・スミスの2人のリードが力強く、青春ロマンスでありながらも、精神的に追い込まれているティーン二人の癒しの物語として暖かな作品になっています。

原作小説未読なのでその相違だったりは分からないにしても、バイオレットとセオドアを通しながら、この作品自体が10代の若い世代に、特に厳しい立場にいて辛い思いを抱えている子たちへ寄り添うものであることは十分に感じ取れるのです。

センシティブな「自殺」に対して真摯に向き合う作品

根底にある題材は自殺です。それは結構センシティブで、自分も得意ではないです。

自分の自殺を考える人への論調は「自殺するな」とは言わず。

当人に助け船も出さない、話すなら自殺以外の選択肢の提示とか時間稼ぎと思っていますが、今作はそのあたり非常に丁寧です。

真摯な姿勢がうかがえる作品には好意を持てますが、この辺りはヘイリー監督や原作、脚本のジェニファー・ニーヴン、そしてリズ・ハンナたちがすごく慎重に考え抜いた結果なのかなと感じます。

ともすれば押しつけがましく、最悪の場合には自殺という題材を使って何か綺麗ごとを振りまくような不快な創作というものもあるんですが、そうした陥りがちな罠にはハマっていないのは見事です。

搾取的なのは嫌いなので、今作のまじめさみたいなものは好感が持てますよ。

その部分は特に自殺を思わせる描写の扱いに顕著に思います。

あまり具体的なことは描写しない。ただ忽然とその人が不在になるその恐怖を、周囲にいる人間として大観させる手法です。

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見事なバランスでリードする二人の主演

その恐怖というのは寄り添うからこそ生まれてくるもので、そこには主役二人のケミストリーがあります。

もともとエル・ファニングってアイドル的な俳優イメージもありますが、今作ではそのアイドル感をもともとはクラスで中心にいるメンバーの一人として発揮、しかし一方では姉の死を受け入れられずに心が止まってしまった抜け殻のような感覚も持ち合わせて良かったです。

何にしても少しづつフィンチと触れ合っていく中で笑顔を取り戻していくんですが、その時に見せる楽しそうな表情がやはりアイドル的な要素を爆発させていて素直にかわいらしいわけです。

で、それを引き出していくフィンチを演じるジャスティス・スミス。彼は演技の幅をここで見せつけていきます。

これまでは「ジュラシック・ワールド 炎の王国」そして「名探偵ピカチュウ」とコメディの色合いの強いキャラクターを演じ、どちらかと言えばリアクションを見せてきた俳優でした。

しかしここでは大いにアクションする。そしてその塩梅が良かったです。あまり行き過ぎているとやはり精神的不安定さが強すぎてバイオレットを心配してしまう。

ただあまりに落ち着いていると、フィンチの抱える傷を見ることもできない。

そこでジャスティス・スミスがよくバランスをとってくれています。大事なのは、彼と一緒にいる方がバイオレットは幸せだとこちらも感じることと、だからこそ彼にいてほしいこと。

急にそっけなく心ここにあらずなフィンチ、またふと彼と連絡が取れないことなどで、こっちも彼を心配するくらいには、ひきつけてくれるんです。

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”自殺しそうな人”なんていない

またこの二人の演技の幅については、自殺と追う題材にも密接にかかわると思います。

なんか暗いとか内向的とか、かなり追い込まれているとか、表面上はそう見えないことが大切なのかなと。

どちらも楽しそうなときも悲しんでいるときも両方存在し、その振れ幅だけ見ればなんてことはなく普通のティーンに見えるのですから。

だから自殺しそうな人なんていなくて、誰しもにその可能性がある。そしてほんの少しの予兆を感じ取る必要があるんです。

自分の人生には意味を見出せない。狭い世界に放りこまれていき最後に見えてくる選択肢としての自殺。

ただその中でバイオレットはフィンチに出会い、見えていた世界を広げてもらった。

それはもちろん名所めぐりに関わりますが、すごい存在や偉大な場所でなくても輝かしい場所はあるということ。つまり、ちっぽけに思えても素晴らしい存在であること。

全体の色彩が柔らかく、暖色が多くカラフルでありつつも再度をやや控えめにすることでヴィヴィッドではなく落ち着きのあるカラーリングを持つ今作は、その優しさと題材への理解を真に示しています。

ただ最後に残念に思えるのが、バイオレットによる語りでした。

課題の発表というゴールが置かれているにしても、最後には結構セリフで語っていってしまう点が正直余計に思えてしまいます。

とはいっても、俳優の演技や演出は確かで、自殺という題材を扱うにあたって細心の注意を払った丁寧な作品であり好感が持てました。

綺麗ごとを並べて自殺しそうな人を救う(と思い込んでる)自分にうぬぼれるような作品よりは何億倍も素晴らしい作品です。

興味があればぜひ鑑賞を。今回はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた次の映画の感想で。

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