「アンカット・ダイヤモンド」”Uncut Gems”(2019)

「アンカット・ダイヤモンド」(2019)

  • 監督:ベニー・サフディ、ジョシュア・サフディ
  • 脚本:ベニー・サフディ、ジョシュア・サフディ、ロナルド・ブロンステイン
  • 製作:セバスチャン・ベアー=マクラード、イーライ・ブッシュ、スコット・ルーディン
  • 音楽: ダニエル・ロパティン
  • 撮影:ダリウス・コンジ
  • 編集:ロナルド・ブロンステイン、ベニー・サフディ
  • 出演:アダム・サンドラー、キース・スタンフィールド、ジュリア・フォックス、ケヴィン・ガーネット、イディナ・メンゼル、エリック・ボゴシアン、ポム・クレメンティエフ 他

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「グッド・タイム」のサフディ兄弟が監督し、ニューヨークで宝石商を営むギャンブル中毒の男の再起をかけた賭けとその模様を追うスリラードラマ。

ニューヨーク宝石商のギャンブル依存症男を、「50回目のファースト・キス」他コメディ分野で人気のアダム・サンドラーが演じます。

その他「ホワイト・ボイス」などのキース・スタンフィールドが主人公に売買の話を持ち込む仲介屋、また「アナと雪の女王」エルサ役のイディナ・メンゼルが妻を演じ、浮気相手にはジュリア・フォックス。

そして今作には元NBA選手であるケヴィン・ガーネットが本人役として登場します。

構想事態はかなり前からあったようですが、実際に映画化するまでに時間のかかった作品。

アメリカでは劇場公開ですが、日本含めて多くの国ではNETFLIXによる配信による公開になりました。

ちなみに日本版のタイトルにはダイヤモンドとついていますが、今作ではダイヤモンドは全く関係ないです。

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ニューヨークの繁華街に宝石店を構えているハワード。

彼は重度のギャンブル依存症であり、宝石売買の儲けを賭け事につぎ込み、いまや親類などから多額の借金を抱えている。

ハワードはエチオピアで採掘されたブラック・オパールを取り寄せ、それをオークションに出品することで一攫千金を狙っていた。

ところが肝心のブラック・オパールを店に来ていたNBAスター選手のケヴィン・ガーネットが気に入り、試合に持っていきたいと言い出した。

彼の指輪を預かることで渋々石を貸し出したはワードだったが、その間にもやってくる取り立て屋から逃れるため、その指輪を質に入れるなどし始める。

しかし着実に、ハワードを囲む借金返済の締め付けはきつくなり始めており、それは借金をした相手であるハワード義兄アルノの存在によって命の危険も伴うようなものになっていた。

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なんていうかサフディ兄弟が恐ろしくてなりませんね。

映画ってまあ超現実を見せていくようなものとか、そういった側面が必ずしもあると思うんですけれど、前作の「グッド・タイム」しかり、このサフディ兄弟の映画ってどこまでも現実なんですよ。

良い面悪い面、意味の分からない面。転がっていく先が見えてこなくて、だからこそスリル溢れてとにかく楽しすぎる現実。

どこにハンドルを切っていくか分からないドライブしていくストーリーにはくぎ付けになりました。

不安という要素を巧く使っているんですが、塩梅がいいなと。決してホラーではないですし、スリラーとかでもなくて。

ハラハラと不安は放り込まれる感覚と引き回される状況によるものでしょう。

今作のOPで作風は決定的です。

エチオピアの鉱山採掘場から始まる作品は、その労働者たちの移動とどんどんと奥深い採掘場へとカメラが潜っていき始まります。

ここだけでも何の説明もなく、どんどんと進むのでやたらとドキドキするんですが、その奥の奥へと行った先に、今作の重要アイテムであり発端となるあのブラック・オパールがあるんです。

で、その先。

ブラックオパールに寄って寄って、鉱物の中のキレイな構成組織がキラキラと幾何学でファンタジックな美しい画面が見えてくる・・・とおもうとそれが繋がっている先がね。

中年オヤジの内視鏡カメラ画像通して腸内見せる映画なんてないぞ!

もうつまり、この作品はどの入り口入っても、とんでもところに繋がっているので予測できませんと宣言するような、最高(に悪趣味)なオープニングなわけです。

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この時点で作風が合わないかもと思ったら、徹底して合わない作風なのも間違いないのでご注意を。予測不能というかカオスです。

で、その人物がとっていく選択肢とかも常識人からすれば愚かしいし、そうなると人物もみんな嫌いになりかねません。

自分はハマりましたけれど。

カオスはそのOP後もとめどなく、実際先ほどの鉱山の場面でも説明がなかったように、その後も説明がない。でも宝石店へ入っていき、人物はそれぞれそのまま会話する。

用語がいろいろ出てくるし、ブランドやスポーツに関しても、説明がない。人物も次次ぐ放り込まれ、新顔もあれば旧知の仲もそのまま出てきてしまう。

外界を意識しないで作りこまれているその業界の日常。

店内でもニューヨークの通りでも、ここには世界やら映画を観る人やらに対しての外面は全くないんですよね。

でもだからこそ、実際に生活者であふれるストリートを思い出せる。

着飾ってない、劇映画用の街ではないリアルな街がそこになるんです。その感覚が刺激的でたまりません。

四方八方で会話が弾みながらも理解できない、でも状況は前に?進んでいく。

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その中で主軸になるアダム・サンドラーがこれまた良いんです。

これまで結構コメディ関連のイメージが強かった彼ですが、今回は絶妙にキモくてかわいくて最低で最高です。意味が分かりません。

このハワードという混沌が具現化した男。

アダム・サンドラーにまさかこんな引き出しがあったなんて。ブリンブリンで心底信用できず、幼稚で頭がいいのか悪いのか分からない男。

このハワードを凄まじいエネルギーで演じていて、彼のキャリアとしてもまた印象強いキャラクターです。

なんでそこでそうなるんだという選択を繰り返す点を見ていると、「グッド・タイム」でのロバート・パティンソンに感じたものを思い起こされましたね。

浮気してるくせしてその女性が他の男とイチャつくとめちゃくちゃキレるし、人の物でも普通に質にいれる。金を返せるのにもう一儲けで賭けてしまう。

ただ突き放せずに顛末を見たくて仕方ない魅力がまたアダム・サンドラーにもあります。

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サフディ兄弟がこだわった35mmフィルムの独特なざらつき、サイケデリックな色彩のはいる撮影。

ダニエル・ロパティンによる電子音まざるスコア。

オークションへの準備に借金取りからの逃亡、家族の集まりに愛人との逢瀬。超絶なマルチタスクをこなす混沌を、撮影もスコアも盛り上げてくれる。

そこには石にとりつかれる男とか、不倫相手の名前をケツに彫る女とか、なんでそうなるんだと言いたくなる人間ばかりです。

でも計画をしても巧くいかない点も、ろくでもないやつが多い点でも、人間社会ってこんなもんです。

大いなるカオスをもって人間観察をしながら、凄まじい熱量と不謹慎な笑いで観るものを窒息させ、どこへ繋がるか分からないスリリングな作品。

作風というこで合わない人には合わないのですが、ハマッたら抜け出せない。

自分はやはりサフディ兄弟は天才だと思いますね。存分に楽しんだ作品でした。

今回の感想は以上です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それではまた。

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