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「フォーリング 50年間の想い出」”Falling”(2020)

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映画レビュー
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「フォーリング 50年間の想い出」(2020)

  • 監督:ヴィゴ・モーテンセン
  • 脚本:ヴィゴ・モーテンセン
  • 製作:ヴィゴ・モーテンセン、ダニエル・ベーカーマン、クリス・カーリング
  • 製作総指揮:イーサン・ラザー、ピーター・タッチ、フィリップ・ウェイリー
  • 音楽:ヴィゴ・モーテンセン
  • 撮影:マルセル・ザイスキンド
  • 編集:ロナルド・サンダース
  • 出演:ヴィゴ・モーテンセン、ランス・ヘンリクセン、スヴェリル・グドナソン、ローラ・リニー 他

作品概要

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「はじまりへの旅」「グリーン・ブック」などで活躍するヴィゴ・モーテンセンが監督デビューを飾ることになる作品。

認知症を患う年老いた父を介護し支えようとする息子の、現在と過去における父との複雑な関係を描くドラマです。

主演は監督も務めるヴィゴ・モーテンセン。

また父親役は現在の年老いた父をジェームズ・キャメロン映画でおなじみのランス・ヘリクソンが演じ、若き時代は「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」でビヨン・ボルグを演じたスヴェリル・グドナソンが演じています。

今作はヴィゴ・モーテンセン自身が脚本や音楽も担当しており、挿入される話は彼の幼少期の実話だったり、かなり個人的な映画になっているようです。

やたらと評価が高いなどというわけではないですが、俳優が監督デビューしていくというのはやはり気になるものですし、ヴィゴ・モーテンセンのキャリアが新しく開かれたとあれば観たいですよね。

後悔した次の週末に観に行ってきましたが、人の入りはそこそこって感じではありました。

~あらすじ~

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田舎暮らしの父ウィリスを連れて自分の声済むカリフォルニアへ帰るジョン。

父は認知症を患い、一人で農場を続けるのは難しく、ジョンは彼のためにケアホームを探すことにしたのだ。

しかしウィリスの記憶は曖昧で、かつ今の認知機能にも問題がある。ただ、それはジョンにとって苦ではない。

もっと深い問題を抱えているのだ。

幼い頃から支配的であった父。母との離婚や再婚。けっして愛を示さず自分や妹のことを認めない父。

今は自分のパートナーを持ち子どももいるジョンには、複雑な父との関係を抱え続けることは難しくなっている。

一方でウィリスは、目の前のことに過去が交差して頭の中で思いを馳せていた。

感想/レビュー

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観るのがつらい、情熱が注がれたドラマ

ヴィゴ・モーテンセン初の監督作品として注目した今作ですが、私は見事な出来栄えであると思いました。

何よりもこの作品に彼か入れ込んだ思いや情熱の大きさを作品からしっかりと感じ取ることができたからです。

もともとは製作と監督のみをやるはずだったモーテンセンですが、ファンディング、資金集めの中で条件として(客を引けるからかな?)彼自身が出演することがあったそうです。

結果主演をやることになったものの、ほとんど無給で働いていたり。またただでさえ少ない制作費でも足が出てしまった部分については、自己資金も出しているんですね。

かなりの情熱を込めた作品は、一言で言えば観ていて辛いタイプの映画です。辛いべきでありしっかり辛いからこそ、作りの良さや巧みさを感じることができるタイプです。

ランス・ヘリクセンが演じているウィリス。

彼がとにかく観ていて辛いのですよ。

認知症を患っているがゆえの行き違いとか意思疎通の難しさだけであれば正直ここまでの存在にはなりません。

何にしてもウィリスという人物の難しさですね。

誰でも”cocksucker”であり”whore”であり、息子も”faggot”呼ばわりときたもんです。

とにかく口汚く攻撃的で差別的。場の空気を悪くするどころか徹底的に破壊し、優しさをはねのけて踏みにじっていく。

もう口を開かないでほしい。

その願いだけが何度も繰り返されていくシーンの奔流にはかなり疲れてしまいます。

まあそれだけランス・ヘリクセンの演技が素晴らしいということでもあるのですが、全体に巧く作られていることも感じ取れます。

最後まで見てしまうのですから。

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分からない愛も含めて正直な作品

最後まで付き合う理由としてはジョンのほうにあるのかもしれません。

どうしようもないクズ的な父に対して、どこかに愛や優しさが…というわけではなく、ここまでの仕打ちを受けながらもなぜジョンは見限ることなく包もうとするのかを知りたくなるのです。

ジョンを演じるヴィゴ・モーテンセンの両親も実際に認知症を患っており、そしてこの作品は彼らにささげられています。

ほとんど一方通行にも思えるし、必ずしもすべてがいい想い出ではなく辛いことが多く思えても、そこには父親との記憶がある。その記憶の存在だけは肯定する。

こういった映画って、結局は”不器用な父なりに愛がありました”とか、”父の愛の証が後から発見されて・・・”とかいくらでもオチをつけるような感動要素を盛り込むことはできると思います。

しかし今作はそこはあいまいです。正直怖くなりますよね。

結局ジョンはウィリスに愛されていたのか。確かに絶えず母のこととか自分のことを思い出しているようではある。

それでも確固たる自信が持てない。認知症だから確かめるすべも制限される。

拷問のようなこの付き添いを続けても、尽くしても尽くしてもいっこうに報われない。

でもそういうことも、関係性もあるはずです。物語のように確かさを得られない現実がある。それを包み隠さずに正直に描いている、そこに私は感銘を受けました。

ヴィゴ・モーテンセン監督デビューとして、良い選択だなと思います。

商業的な部分とかではなくて、むしろすごく作家主義でプライベート、スタジオに左右されないアクターズディレクターとしての道が開けて、今後が期待できると思います。

小さな規模で公開されていますが、観るチャンスがあればお勧めしたい一本です。

というところで感想は以上です。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた次の映画の記事で。

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