「ザ・フラッシュ」(2023)
作品概要
- 監督:アンディ・ムスキエティ
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脚本:クリスティーナ・ホドソン
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原作:ロバート・カニガー、カーマイン・インファンティーノ『ザ・フラッシュ』
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製作:マイケル・ディスコ、バーバラ・ムスキエティ
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音楽:ベンジャミン・ウォルフィッシュ
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撮影:ヘンリー・ブラハム
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編集:ポール・マシュリス
- 出演:エズラ・ミラー、マイケル・キートン、サッシャ・カジェ、マイケル・シャノン、ベン・アフレック、カーシー・クレモンズ、ロン・リビングストン、マリベル・ベルドゥ 他
「ジャスティス・リーグ」にて初登場した光よりも早く走る最速ヒーロー、フラッシュ。
彼の単独主演作として製作された本作は、すさまじい速さで時間すらも超えたフラッシュが、過去のある悲劇を変えたことからより大きな混乱に巻き込まれていくというストーリー。
「IT/イット それが見えたら終わり」などのアンディ・ムスキエティ監督がメガホンを取り、主演はエズラ・ミラーが続投。
そのほか同じユニバースのベン・アフレックがバットマンを務めますが、予告編でも明らかなように、ティム・バートン監督の「バットマン」で同じくバットマンを務めたマイケル・キートンが同役で再登場します。
その他スーパーガールことカーラ役にはTVシリーズで活躍し、長編映画は今作が初めての出演となるサッシャ・カジェ。
その他マイケル・シャノンが再びゾッド将軍役を演じ、また「ジャスティス・リーグ」ではビリー・クラダップが演じていたバリーの父親をロン・リビングストンが代って演じます。
フラッシュの単独作品もけっこう待ち望まれていましたが、実現まで6年くらいたちましたか。エズラ・ミラーの私生活というかなんというか、結構ヤバいことになってたこともあり正直無くなるのかもとすら思っていましたが、無事に製作。
私はキートンバットマンが劇場で観れることだけを楽しみに、公開週末に早速鑑賞してきました。
朝早い回だったのですけど、小学校高学年か中学の1年くらいの子たちがグループで来ていて、ヒーロー映画がしっかりと伝わててほっこり。
~あらすじ~
ジャスティス・リーグの一員としてヒーロー活動に参加するフラッシュことバリー・アレン。
バリーはバットマンやワンダーウーマンに比べてパッとしない役柄が不満だが、それなりに頑張っている。
彼の悩みは父の再審請求だった。強盗に殺害された母の事件で、父が犯人として捕まり彼の人生は狂った。
有力な無罪の証拠がないことに焦っていたバリーだが、自分自身の高速移動が光の速さすらも超えたとき、自由に時間をさかのぼることもできることに気が付いた。
バリーはそもそもの原因、自分の人生が悲劇になった根源である母の死を変えるため過去へ。
大切な人を救う彼は、勢い余ってその時間軸の自分自身に出会ってしまう。
超能力のない過去の自分には、なぜ過去に来たのかは明かせないバリーだったが、恐ろしい巨悪もまた復活したことで事態は急変していく。
感想/レビュー
映画界でスーパーヒーローがあふれだしてからもう何年たったのか。
クロスオーバーであのキャラがこっちにもこのキャラがここでも・・・という展開にも飽きがきたころに、「スパイダーマン:スパイダーバース」が登場。
さらに「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」、「ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス」と今度はマルチバース展開の波が押し寄せています。
ちょうど公開日を同じく「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の公開もあったりと話題のマルチバースですが、今作は今作で独自路線を行った気がします。
DC映画リバース
それは根底のテーマ的な部分ではた作品とは同じなのですが、ユニバースの今後を決める大きな転換点になっています。
分かる人にはわかりますが、DCEUの解散と再起動のあの話を、映画1本でうまいことやってのけたなと思うのです。
非常にビジネス的なムーブをキメてきました。
報道の通りの展開に、メインストーリーが追いついたというか。2013年の「マン・オブ・スティール」から推してきた人にとってはなかなかに寂しいものですけれど。
逃れられない運命
根幹のストーリー自体はこれまでのマルチバースものと変わらないかもしれません。
孤独になることが運命のスパイダーマンや、クリスティーンと結ばれないことが運命であるスティーブン。
フラッシュは今作で、母に降りかかる、そして家族全員に降りかかるある悲劇をなかったことにしていますが、しかしやはり運命。
世界全体のひずみが出てしまうような変化というものは許されない。
回避できる悲劇とできないもの。自分自身を形作る要素であるから不可避なこともある。
それをバリーにぶつけていく。
DC映画を振り返ろう
過去への旅は、バリーだけではなくてDC映画を追ってきたファンにとってもその通りになっています。
実はOP自体がこれまでのワーナーやDCロゴをめぐっていくもので、その時点で結構昔までさかのぼることは示唆されています。
過去へ行ってからのエズラ・ミラー二人での自分自身との演技の部分もたのしいですが、キートン版バットマンのやはり最高なカッコよさは欠かせません。
バットケイブのつくり込みだったり活躍はなかったもののバットモービル、さらに新しいギミックで魅せたバットウィング。
地味にですが、キートンバットマン、首が回らない感じをそのままにしていたりにくい演出でした。
今作のデビューで一番大きなサッシャ・カジェ。ミシェル・ロドリゲス姉さんのようなクールでカッコいい彼女。多くの人が惚れるでしょうね。
往年のファン向けの要素
ヒーローの系譜では、古参向けのネタも多いです。
リーヴ、アダム・ウェスト・・・そしてニック・ケイジのスーパーマン。
この辺はもう映画ファン向けです。(CGでもリーヴ版スーパーマンをスクリーンで見るとぐっと来てしまいますが)
マルチバースでのBTTFネタとかトップガンネタなども映画ファン向けのギャグで個人的には楽しかったところです。
今作は自分自身との対話をしていくコメディ満載のストーリーです。
しかし奥底には、親を亡くしてしまってすごく不安なままに大人になった少年が、母の死を受け入れて次へと進むような切なさがあります。
サービスはただ置かれ、フラッシュの物語に寄与しない
正直なところ、派手になった時の残念具合は相変わらずのDCクオリティです。騒がしいだけでドラマチックではない。
今回はOPすぐの病院での救助シーンに始まり、ロシア基地での戦闘もクリプトンの軍との対決も、すべてにおいてCGレンダリングが奇妙でした。
騒々しいのはヒーロー映画につきものなのは分かるのですが、世界を救うバトル行為にそこまでドラマを感じられない。
つまり、キートンなどのカメオというかファンサービスも、サッシャ・ロジェのカッコいいカーラも、その他の様々なネタも、本筋のドラマにあまり関係ない。
やはりどこまでいってもバットマン、スーパーガールの活躍より、トマト缶を棚へ移す行為それこそがドラマチックでした。
VFX過多で張りぼてなのはどうにも変わらないようですが、多くの小ネタギャグが楽しめるというのは間違いないのかと。
製作にかかわる様々な問題?のわりにはなんとかまとまった印象です。
そして良くも悪くも、DC再編集のゴタゴタをマルチバースと過去改変からの現実改変にからめてOKにしてしまう力技がビジネス的にすごいことしてると感心した次第です。
DC映画、ワーナー映画好きならイースターエッグ目当てで鑑賞してもいいかもです。あまりヒーロー映画知らなかったりする場合には強くはおすすめしません。
今回の感想はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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