「美女と野獣」(2017)
- 監督:ビル・コンドン
- 脚本:スティーヴン・チョボスキー、エヴァン・スピリオトポウロス
- 製作:デヴィッド・ホバーマン、トッド・リーバーマン
- 製作総指揮:ジェフリー・シルバー、トーマス・シューマカー、ドン・ハーン
- 音楽:アラン・メンケン
- 撮影:トビアス・シュリッスラー
- 編集:ヴァージニア・カッツ
- プロダクションデザイン:サラ・グリーンウッド
- 衣装:ジャクリーン・デュラン
- 出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス、ジョシュ・ギャッド、ユアン・マクレガー、イアン・マッケラン 他
同名のフランスの民話をもとに、1991年にディズニーがアニメーション映画を製作。今作はそのアニメーション映画を基に実写化したというものになります。
映画としてはジャン・コクトーのものや最近ではレア・セドゥとヴァンサン・カッセルのバージョンもありましたね。
とりあえず「美女と野獣」といえばまあディズニーアニメを思い起こす(というか民謡を知らない)方も多いと思われますね。個人的には特段思い入れのある作品ではないですが。
今作を監督するのは、「ゴッド・アンド・モンスター」(1998)や「ドリームガールズ」(2006)のビル・コンドン監督。主演には最近は「コロニア」(2015)やアメリカで公開したトム・ハンクスと共演の”The Circle”など幅広く活躍しているエマ・ワトソン。野獣役には「ザ・ゲスト」(2014)などのダン・スティーヴンス。ガストンにはルーク・エヴァンス、相棒となるル・フウはジョシュ・ギャッドが演じています。
公開の週ではなくGW中に観たのですけど、満席。実際そのあとも週末になるたび満席に近い状態が続いているメガヒット作ですね。
森の奥に住む傲慢な王子は、ある時訪ねてきた老女を酷く扱った。しかしその老女は美しき魔女であり、王子の態度に怒り呪いをかけ、彼は恐ろしい野獣に姿を変えられ、城も呪われてしまう。
時は立ち、とある村には変わり者と言われる娘ベルがいた。美しい娘だが、読書が大好きなベルは、ナルシストなガストンのしつこい求婚にうんざりしていた。
ある夜、父の馬だけが村に帰ってきたことで、ベルは父を探すため森へと入る。そこで古びた城へと迷い込むベルは、野獣によって監禁された父を見つけた。
愛する父を救うために、ベルは自らが彼の身代わりとなり城に残ることを決意するのだった。
アニメーションも原作の民謡にも思い入れの特にない私ですが、十分に楽しんで観ることができました。重さやゆがみもなく、ストレートにファンタジーの楽しい映画という印象。
キャラクターに頼る部分が多く、そこにほれ込むタイプの映画として、キャスティングはかなり成功しているのではないかと思います。
エマ・ワトソンによるベル、美女の説得力はさすがと言ったところでした。美しくもやはり賢い感じがあり、世慣れた様子はなく無垢さもある。エマ・ワトソン目当てで行くというのもまあ分かる気がしますね。
で、個人的にすごく引っかかっていたところが、これは予告編からでしたが、背景部分です。
城の中でもすこし感じますが、特に広い場所、村と野原などで感じてしまうのが、CG感。うまく溶け込んでいないというか、どうしても舞台セットとグリーンバックで補った背景という感覚が出てしまっているように感じます。
それで、「より広い世界」という最後の方では放り出されてしまうテーマを感じる少ないシーンで、どうにも広々とした世界を眺めるより、室内の撮影セットを感じてしまい残念でした。合成でのライティングなのか、そもそもCG背景の質なのか・・・
全体としての流れは、アニメを踏襲しているのでしょうかね。民謡を映像化する必要性はなく、アニメーションを可能な限り実写に落とし込むゆえに、そこまでズレが生じたようには思えません。何より、運びの速さはアニメ譲りなのかサクサクでした。それで人物の感情変遷があまりに性急に感じる部分もなくはない物の、共有済みの話を進めるのであれば、このくらい速いテンポの方が観ていて気持ちいと思います。
今作で私が素晴らしいと感じたのは、ナルシストでマッチョ、悪役にあたるガストンを演じたルーク・エヴァンス。シーンどころか全体をかっさらっていったと思います。
ハマり具合も良いですが、絶妙な胡散臭さに自信過剰さ、そしてどこかにコミカルさを入れるなど得意な分野だったのでしょうかね。
世界に居場所のない者同士が互いを見出し、支え合うというお話で、ベルの自己犠牲と呼応した野獣の行動など美しいものです。
アニメーションの実写化という点では忠実に、誠意をもって答えていて、演者のハマり具合も世界観をより綺麗に仕上げることに貢献していると思えました。
楽曲、衣装、美術などを楽しめましたし、やはり世界に野獣とベルだけのような、真に居場所を見つけつつも絶対的な孤独となるあのダンスシーンは素晴らしい。
そういった要素の中で、どうしてもCG処理による背景に違和感が残ってしまいました。夕食でのシークエンスなど少しシャドウが入るところも、自然背景も。
前の「ジャングルブック」(2016)でみせられたすさまじい実写化、映像技術に比べると、ちょっと元のアニメによりかかり過ぎな気もしますが、十分楽しんで観れる作品だと思います。
今後も「リトル・マーメイド」や「ダンボ」、「アラジン」などの実写化が控えていることですし、ディズニーも忙しいですね。
そんなところで終わりです。それでは~
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