「再生の地」(2021)
作品概要
- 監督:ロビン・ライト
- 脚本:ジェシー・チャサム、エリン・ディグナム
- 製作:リア・ホルツァー、ローラ・ケネディ、ピーター・サラフ、アリン・スチュワート
- 製作総指揮:ロビン・ライト、スティーヴン・ハーネス、マイケル・フリスレフ、チャド・オークス、エディ・ルービン、ジョン・スロス、マーク・タートルトーブ
- 音楽:ベン・ソリー、タイム・フォー・スリー
- 撮影:ボビー・ブコウスキー
- 編集:アン・マッケイブ、ミッケル・E・G・ニルソン
- 出演:ロビン・ライト、デミアン・ビチル、サラ・ドーン・プレッジ、キム・ディケンズ 他
「ワンダーウーマン」や「ブレードランナー2049」などの俳優ロビン・ライトが、自身主演で監督デビューを果たす作品。
悲しみを背負う女性が全てを捨てて、山奥の小屋で一人サバイバルを始めるドラマになっています。
また「ゴジラVSコング」などのデミアン・ビチルが主人公を手助けする男性役で出演しています。
今作はもともとはロビン・ライトの監督デビューのみだった予定が、スケジューリングもあって彼女が主演も務めることにもなったとのこと。
サンダンスでの公開以降アメリカでは一般公開されましたが、日本での一般公開はなく、NETFLIXでの配信公開という形になりました。
以前から予告編やポスターなどは見かけていて、ロビン・ライトの監督デビューというのも気にはなっていましたが、劇場をスルーしていたので配信をみるのも少し遅くなりました。
~あらすじ~
エディはある出来事から心に傷を負い、都会での生活をすべて捨て去って山奥へとやってきた。
山小屋で外界から遮断された中、一人で生きることに挑戦するのだ。
しかしエディには自然の中でのサバイバルの術など持ち合わせておらず、過酷な環境は容赦なく彼女を襲った。
寒さと飢えで詩の手前に差し掛かっていた彼女のもとに、地元の猟師と看護師が現れなんとか一命をとりとめる。
町の病院への搬送を提示されるも、エディは頑なに山小屋を離れない。
猟師のミゲルはエディにしばらく付き添うことにし、魚釣りや猟、自然の中での生き方を教えていく。
エディは彼との交流から次第に、心に生きる火を取り戻していく。
感想/レビュー
少ないセリフで静かに語る
俳優が監督をする。それだけでもどうしても楽しみなものです。
やはり演技をしたことのある側が監督、演出をしていくとなると、演者の側としての視点も入るものだと思います。
そういう意味では(題材の面もありますが)静かで、所作に重きを置きじっくりとしたドラマを見せている作品だと感じました。
あまりしゃべらないのはもちろんですが、会話という意味でなくとも語りを抑えるようにして、説明的な背景の提示や人物の展開をしていません。
その面はもちろんロビン・ライトの力が素晴らしいものがあると思いました。
「こうなるだろう」がそうなるだけ
ただ正直言えば脚本事態に難があるのかと思います。
おそらくこの作品を観て、どこからきてどこへ向かっているのかは、観ている側はかなり最初に予期してしまうのです。
そしてその予感から外れることもなく、また意外な一面や驚くような演出、語りをすることもなく、そのまま終わっていく。
すごく真摯な姿勢であるということは分かるとしても、ただ奥底にあるであろう内核の部分にはどうしても感情的に触れにくい。
どこかで見聞きした、知っている話だと思うのが早いほどに、出来上がった物語をおさらいしているように思えます。
ルックは素晴らしくも、芯が物足りない
エディのドラマにも特性を感じられないので、目の前にロビン・ライトがいていい演技をしているのは分かるものの、エディという女性が実際にそこにいるのだという実感が得られませんでした。
ミゲルという人物があまりに都合よく出てくるとか、見つけてくれたのが看護師とかそのへんも安直といえばそうなんですが。
自然に飛び込んでいくものとして、再生していく物語として、ジャン=マルク・ヴァレ監督の「わたしに会うまでの1600キロ」の良さを思い返してしまいました。
山の中の自然の風景とか音響など、やはり画面としては美しく楽しめますが、個人的には芯に響いてくるものが物足りないなと思います。
存在を認知されなければ存在しない。
悲しみを乗り越えて生きる力を得ていく。そのために生きることをより意識する自然の中でのサバイバルを選ぶ。
そういった再生の物語の一つとして、問題はないけれど、特筆すべき性質も持ち合わせていないと言った作品でした。
せっかくのロビン・ライト監督デビューですが、まずはすごく安定した作品になったという印象。
今後もその監督としてのキャリアは追っていきたいと思います。
今回は短めですが、感想は以上。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた。
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