「マダム・ウェブ」(2024)
作品解説
- 製作:S・J・クラークソン
- 製作総指揮:ロレンツォ・ディ・ボナベンチュラ
- 原案:アダム・メリムズ、クレア・パーカー
- 脚本:ケレム・サンガ
- 撮影:クレア・パーカー、S・J・クラークソン
- 音楽:マウロ・フィオーレ
- 音楽:ヨハン・セーデルクビスト
- 出演:ダコタ・ジョンソン、タハール・ラヒム、イザベラ・メルセド、シドニー・スウィーニー、セレステ・オコナー 他
マーベルコミックで未来予知能力を駆使しスパイダーマンを救うマダム・ウェブ。彼女の能力の目覚めと少女たちとの出会いを描く作品。
主演は「サスペリア」や「ロスト・ドーター」などのダコタ・ジョンソン。また「インスタント・ファミリー」などのイザベラ・メルセド、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などのシドニー・スウィーニー、「ゴーストバスターズ アフターライフ」などのセレステ・オコナーが出演。
また少女たちの命を狙う男を「ナポレオン」などのタハール・ラヒムが演じています。
監督はTVシリーズ「Marvel ジェシカ・ジョーンズ」などを手がけてきたS・J・クラークソン。
作品としてはMCUのスパイダーマンとユニバースを同じにしているような曖昧な、「ヴェノム」、「モービウス」などの世界に位置するらしい作品。スタンドアローンともいわれてますがまあどうでも良いです。
誰しも思ってることだと思いますが、ヒーロー映画は飽和を通り越してもはや何のために誰がやってるのかよくわかりません。今作は期待せず鑑賞。もう義務ムーブ。
後悔初週の週末なのに、人が少なかったのがなかなか心配です。
~あらすじ~
ニューヨークで救急救命士として勤務するキャシー・ウェブは、命を救うために日々奮闘している。しかし、ある日の救命活動中に大事故に巻き込まれ、生死の境を彷徨う。
以後、キャシーは奇妙なデジャブのような体験を繰り返すことになり、偶然にも出会った3人の少女たちが、黒いマスクを被った男に襲われる未来のビジョンを見る。
キャシーはこれが未来の出来事だと確信し、少女たちを守る決意を固め、何度も危機を回避しますが、謎の男は彼女を執拗に追い続ける。
男の目的や少女たちを追う理由は何なのか?やがて明らかになる、少女たちの「使命」とキャシーの能力の秘密。そして、彼女が救うことになる未来の真実とは?
感想レビュー/考察
公開前からいろいろと話題になっていた作品。批評面でとか一部の一般観客のアーリーレビューがとか。
散々ないわれようになっている作品ですが、私としては期待値を下げていったこととあまり予告を観ていなかったことが功を奏した気がします。正直言って悪くない作品でした。
予告編がミスリードすぎる
予告編ですが、未来の断片的な余地をもとに運命を変えて謎を解くような話に見えます。うたい文句にもマーベル初の本格ミステリーだと書かれていますが、実際にはそんなんじゃないです。
予告編が結構ミスリードすぎるので、これで混乱したまたは期待を裏切られた観客は多いでしょう。
今作には謎って物はないです。初めからまっすぐに時系列は進行するし、序盤から悪役が登場、彼の動機もさっさと説明されて黒幕は明白なままに進行します。
もしも今作をミステリー映画だと思って観ると、それは低評価になります。
まあ別にその掛け違いだけで低評価にはならないんですけれど。低評価なりの理由はちゃんとある。
脚本はめちゃくちゃ。もう臨月の妊婦が医療設備もないペルーの山奥でクモ研究していたり。その当時の秘密を調べると言ってものすごい速さでキャシーがペルーへ行き、あっという間にまさに母がいた場所にたどり着いて能力を開花させて戻ってきたり。
異常な身体能力で自分たちを殺しに追いかけてくる男がいながらも、おなかが空いたからという理由でダイナーに言った挙句、なぜかよく分からない男子にちょっかい出してテーブルの上で踊っていたり。
行動の原理原則がハチャメチャすぎて本気で追いかけていたらバカをみます。
あったかもしれない脚本とおもしろさ
脚本はどういう経緯でこうなったのか分かりませんけれど、大幅なリライトがかけられたようです。主演のダコタ・ジョンソンは映画誌Wrapのインタビューで「脚本は契約時に読んだものから抜本的に変わった」と答えています。
もともとの構想ではキャシー他少女たちが、未来からやってきたエゼキエルからピーター・パーカー(のちのスパイダーマン)を妊娠している母を守るような話だったとか。
確かにストーリーラインとしては、未来の出来事を抹消するためにまだ何も知らない女性を追い回すという、非常に「ターミネーター」を彷彿とさせるテイストがあります。名残だったのでしょうか。
この混乱した脚本の中、しかもほとんどグリーンバック撮影で、未来予知のシーンのために同じシーンを少し違う形で何度も撮影した主演ダコタ・ジョンソンは本当にすごいです。お疲れ様です。。。
これまたCGがすごくチープなんですけど、VFXにはなんとあの「ゴジラ -1.0」の10倍の予算が投入されているらしいです。なんてこった。
そもそもなぜこんなにも脚本のリライトとか再撮影とかが多くなってきているのか。スクリーンイングなど途中であれこれと手を加えるのはあまりいい結果を出しているとは思えませんよ。
SONYについてはなぜかスパイダーマンとの未練が大きすぎて、いつも余計なことをしている気がします。スタジオがクリエイターたちを振り回してどうするんですかね。
さて、あったかもしれない素晴らしい未来をこの作品は持っていたと思います。
女性の未来をつぶす男性、連帯する女性たち
実は残っているテーマ設定の中でも、好きなものがあります。
それはフェミニズムにも通じる気もしますし、持たざる者たちの団結でもある。優しさが奥底にある気がするのです。
キャシーは人と繋がることを恐れている。もちろん本当に安心して自分を守りそばにいてくれるはずの母を持たないままに育ったことも原因でしょう。
病院で感謝されても反応に困り、そして家族ぐるみの集まりなどにもなるべくかかわらないようにしている。そんな彼女が出会う3人の少女も同じようにそれぞれ拠り所を持たず孤独です。
そこには家族関係の歪みから移民の問題もあり、みんな守護者がいないことを共通点にしています。
最初の森での話の後、モーテルでの打ち明けでもっと人間としての共通点を持っていることが分かりました。同じベッドで眠ってるのとかいい演出です。
この弱い立場の女性たちの連帯。そしてそれを守り助けるのが男性ではなくて女性だというのも現代らしい設定です。
そして悪役も、”女が将来力を持ち、自分を超えるのが許せない”を動機にしているというのも現代的にはかなり皮肉と風刺が効いていると思いました。
ここからだけど、ここまでかも。。。
各俳優陣はいいのでもっと3人にも守られるだけではない役目を与えたり(最終の対決ではキャシーに加勢していましたが)、とにかくこれからが盛り上がるはずの作品です。
ここから何かが始まっていく・・・のに、この評価と成績ではその何かが始まらなくなりそう。であると、何かを理解するために観ておくべき今作の存在意義も消えていく。
なんとも支離滅裂な行動をする人物やガタガタの脚本、妙なセリフ。それらの奥底には良いものを作ろうとした意志を感じられたので、個人的にはなんとかしてこのキャストで、クリエイティブをちゃんと任せて次の作品を作ってほしいと感じました。
世間ではボロクソに言われていますが、個人的には擁護したい作品。
今回の感想は以上。ではまた。
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