「サスペリア」(2018)

  • 監督:ルカ・グァダニーノ
  • 脚本:デヴィッド・カイガニック
  • 原作:ダリオ・アルジェント、ダリア・ニコロディ
  • 製作:マルコ・モラビート、ブラッドリー・J・フィッシャー、ルカ・グァダニーノ、デヴィッド・カイガニック
  • 製作総指揮:キンバリー・スチュワート、ローレン・ベック、ジョシュ・ゴッドフリー
  • 音楽:トム・ヨーク
  • 撮影:サヨムプー・ムックディプローム
  • 編集:ヴァルテル・ファサーノ
  • 出演:ダコタ・ジョンソン、ミア・ゴス、ティルダ・スウィントン、シルヴィー・テステュー、クロエ・グレース・モレッツ、ジェシカ・ハーパー 他

「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督が、ダリオ・アルジェントの同名カルトホラーをリメイクした作品。

主人公スージーの役には、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソン。また彼女の入学するバレエ学校の寮母には「ドクター・ストレンジ」などのティルダスウィントン、そして主人公の親友となる少女サラにはミア・ゴス。その他、オリジナルキャストでもあるジェシカ・ハーパー、さらに怪異に気付くダンサーの一人としてクロエ・グレース・モレッツも出演しています。

もともとのアルジェント版「サスペリア」が一部ファンにとってはカルト的な作品であり、ホラー映画史においても、その作品以後と言われるようなものということで、ハードルはかなり高かったかと思われます。

私はそもそもオリジナル版を見たことがない立場ですので、その点比較はできず、また真っ新な状態での鑑賞となりました。公開の週土曜に鑑賞しましたが、人は多かったですね。まあ箱が小さいですが。

東西に分断されたベルリン。ドイツ赤軍によるテロリズムも横行する中、ある大雨の日、一人の少女が名門バレエ団の学校を訪れる。

アメリカからやって来たその少女スージーは、テストとして寮母の前でバレエを披露し、そこで講師であるブランク夫人の目に留まる。

新参者でありながら才覚を見せるスージーに、寮母たちやブランク夫人はバレエ以上に何か特別な期待をもった眼差しを向けていた。そんな中、バレエ団ではダンサーが失踪するという奇妙な出来事起こり始めていた。

アルジェント版を観たことがないわけですが、今作は独特でありながら楽しいだと思いました。ホラーではあるんですが、スプラッタな感触が強く、少なくとも私はあまり怖いという感覚ではありませんでした。

それよりも、エロティックさ(または美しさ)とグロテスクさが同時に存在するような感じです。

画面ではなんとも痛ましいことが起きるゴア表現があり、目を背けたいながらも同時に妖艶な美しさもたたえていて、目を離せなかったですね。

やはり躍動的かつ美しくどこかエロスもあるスージーの踊りとカットバックしてのオルガのダンス。まさに死の舞踏であったあのシーンは、人によってはトラウマレベルの強烈なものだと思います。特殊効果とか、地味に鏡張りの部屋での撮影とか技術も堪能できるシーンです。

作品スタイルとしてはかなり躍動的に思えます。

動的な映画というか。

急なズームインとか、カメラも動きますし。もちろんダンスやイメージカットが多層的に入り乱れる部分も印象に残りました。

肝心のダンスの部分ですが、おぞましいようで魅力的なんですが、どこか性的な感じがするのは私だけかな?肩甲骨や息遣いなどね。女性から見るとまた違うのかもしれませんけれども。オルガの死へつながるダンスや、やはり終盤の発表会とクライマックスの儀式など、怖いのに惹かれてしまうというのが何とも言えず気持ちのいい感覚です。

色彩に関しては雪の白と血の赤がかなり対比的な感じですね。ただ、表面的なスタイリッシュさはあまり感じなかったような。

今作はルックのスタイルよりも、深い部分にテーマを置いてじっくり描いていくような作品に思います。

私は監督がスージーの成長と社会情勢を織り交ぜながら、逆襲を描いたのではないかと思うんです。

母からの虐待を受けていたことが悪夢の中で明らかになるスージー。魔女を信奉する寮母たちにより凄惨な運命を与えられてしまったパトリシアやサラ。そしてナチスの迫害により大切な妻を奪われ苦しみに生き続けるクレンペラー博士。

みんな被害者ばっかりです。魔女を崇拝してその信仰のために好き放題のクソアマどもと、ナチスを信奉してユダヤ人を迫害した奴らは重なりますし。舞台となる1977年のドイツでのRAFによるテロ行為もまた、そのニュース映像が何度も登場しますが、同じく信条に基づいた暴力です。

そんな勝手なことのために犠牲を強いられてきた人たちの中で、弱く無垢で無知と思われた少女が、一発ぶちかます。

やりすぎじゃないかというラストのスプラッタ祭りは、一種のカタルシスのためだと思います。

スージーは自分にとって悪夢であった母と決別し、むしろそうした最高権力の座に自分がつくことで全てをなぎ倒すわけです。

ナチスの迫害の生き証人になってしまったクランペラー博士は、残酷にも再び、狂人たちの虐殺の証人という役目を負わされそうになりますが、逆にナチスの時には観ることができなかった、被害者による逆襲を目にしますね。

そしてかわいそうではあるものの、サラやパトリシアには安らぎの死が与えられます。

ルカ監督は抑圧や圧政、そして弱者への一方的な力が散見する現代にかなり響いてくるテーマを、うまいこと時代設定と魔女物語に組み込んだものです。

上映時間が2時間30分くらいと長いものの、楽しんで観ていたので退屈はしなかったです。怖くはないですが、痛々しく、そして最終的にはかなり痛快な作品だと思います。是非劇場で楽しんでみてください。

今回はこのくらいで終わりです。それではまた~

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