スポンサーリンク

「悪魔と夜ふかし」”Late Night With the Devil”(2023)

スポンサーリンク
Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie 映画レビュー
スポンサーリンク

「悪魔と夜ふかし」(2023)

Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie

スポンサーリンク

作品解説

  • 監督:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
  • 製作:マット・ゴボニ、アダム・ホワイト、ジョン・モロイ、ロイ・リー、スティーブン・シュナイダー、デレク・ドーチー
  • 製作総指揮:ベン・ロス、ラミ・ヤシン、デビッド・ダストマルチャン、ジョエル・アンダーソン、ジュリー・ライアン
  • 脚本:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
  • 撮影:マシュー・テンプル
  • 美術:オテロ・ストルフォ
  • 衣装:ステフ・フック
  • 編集:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
  • 音楽:グレン・リチャーズ
  • 出演:デビッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、イアン・ブリス、フェイザル・バジ、リース・アウテリ、イングリッド・トレリ 他

オーストラリア製のホラー作品で、テレビ番組の生放送中に巻き起こる怪異をファウンドフッテージ形式で描いた映画。

「アントマン」シリーズや「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」で知られるデビッド・ダストマルチャンが、主人公である司会者ジャックを演じます。

監督を務めるのは、コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。1970〜80年代のホラー映画の名作に対するオマージュを散りばめながら、レトロな映像美と演出が楽しい作品になっています。

この作品は、ダストマルチャン主演というのも注目していましたし、設定的にもおもしろ荘で期待していた作品です。公開週末には見に行けなかったのですが、平日の仕事帰りに見てきました。

なかなか遅い時間帯でしたが都内映画館でかなり混んでいて、ほとんど満席状態。まさに映画のなかのTV番組の観客席のように、人がぎっしり詰め込まれた中で観ることができました。

「悪魔と夜ふかし」の公式サイトはこちら

~あらすじ~

Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie

1977年のハロウィンの夜、放送局UBCの深夜トークバラエティ番組「ナイト・オウルズ」の司会者ジャックは、視聴率低迷を打破するため、オカルトをテーマにした生放送を企画する。

霊聴やポルターガイストなどの怪しげな超常現象が次々と披露される中、この日の目玉として、ルポルタージュ「悪魔との対話」の著者ジューン博士と、その本のモデルとなった悪魔憑きの少女リリーが登場。

視聴率を狙うジャックは、テレビ史上初となる“悪魔の生出演”を実現しようと試みるが、番組がクライマックスに達したとき、予期せぬ惨劇が巻き起こる。

感想レビュー/考察

Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie

体感型で、みんなで番組を見る

映画館で観る。観るという行為に関して体感型とか観客一体型の作品は多くあります。

没入的には「ドント・ブリーズ」とか。あと、観客を巻き込んでしまう呪いでは「ヘレディタリー 継承」もありますね。

個人的にですが、そもそも基本的に上映始まってからその場で運命を共にするしかない、時間を操作できない映画館と、ホラー映画はとても相性がいいと思うのです。

そんな中で今作は一部舞台裏も映されているため、ファウンドフッテージです。

しかしおおよそ実際のテレビ中継番組をそのまま映画館のスクリーンを通してみているような仕掛けになっていて、これもまた新しい観るタイプのホラーで楽しいです。

ちょうど私がこの作品を夜の回で観に行ったので、深夜ではないにしても、仕事も終わって夜遅めの時間でした。

疲労からくるふわつきと、夜更けてきたところでのほんのりとした興奮状態。そこで眺めるレイトショーというのも、鑑賞体験のフレーバーになっていたのかもしれません。

映画館で、観覧席の客のように多くの人と集団で観るのはとてもいい作品だと思います。

このあたりは監督コンビも初期の構成に会えて手を加えて変更した点のようです。この形式で送り出すことで観客に直接影響を及ぼすことができると。

Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie

マスメディア、テレビの常軌を逸した視聴率主義

さて、ファウンドフッテージとしての構成は結構直線的ですが、外側にはまず1970年代のアメリカ、そして主人公であるジャックの背景が示されます。

とにかくアメリカが現実逃避したくて、どんどんと退廃的なこと、くだらないことをテレビに求めていく。そしてそこでは苛烈な視聴率争いが巻き起こっています。

ジャックは確かに売れっ子のパーソナリティーですが、しかしNo.1には晴れずにいる。一番をどうやっても獲得しなければいけないというのが、この作品の根底に置かれているのです。

だから、悪魔を降臨させるという胡散臭いけど危険なにおいのする題材を選んで番組で取り上げていくのです。

何度も踏みとどまれるチャンスはあったのにも関わらず、ここまでの犠牲、そして視聴率への執着がジャックを追い込み、正常な判断から遠ざけます。

この視聴率主義による常軌を逸したテレビの在り方は、何度も引用され褪せることのないシドニー・るメット監督による傑作「ネットワーク」に通じますね。

そこから影響を受けた「ナイトクローラー」とかも好きな人なら、マスメディアの制御不能な暴走映画として絶対に楽しめると思います。

レトロなテレビ映像を再現した画づくり

悪魔に魂を売ってでも視聴率を獲得し、トップを獲ろうとするジャック。

作品のテイストは見事で、本当に実際の当時のテレビ映像を見ているようです。アス比が正方形に近い、昔のブラウン管テレビ用の構成になっていて、レトロなザラつきやカラーの感触を再現した画面。

途中のコマーシャル休憩中の映像というのも挟まれていますが(これは誰が撮ったのかというのはあいまいですが、ノイズにはならない)、そこでの映像テイストが変わっていたり。

また終盤にジャックが完全に悪魔の幻惑に取り込まれ、自らのテレビ番組の反芻に取り込まれていく。その際にはアス比が変わってかなりワイドスクリーンになりますね。

つくり込みも良いですし、おかげで没入感は強まっています。

Late-Night-with-the-Devil_2023-horror-movie

この映像の中で、悪魔に憑りつかれているリリーがずっとカメラガン見してるのがいい意味で気色悪いです。あれはつまり、観客を見ているんですね。

普通映画ではカメラ目線というのはほとんど使われない演出ですから、恣意的に感じます。テレビを見る視聴者を見ていると同時に、この映画を見ている人にも、その悪魔的な呪いと力を及ぼそうという効果が出ています。

70年代悪魔物の小ネタや意地悪なセリフ回し

悪魔的なカルト映画の側面では、時代設定が70年代というのも、まだまだ宇宙の怪物も超生命体もゾンビも少なく、恐怖の対象が悪魔や悪霊だったころとして効果的に思います。説得力があるというか。

作品の中でも、終盤にガスがリリーにあの有名な「エクソシスト」のセリフを言ったり、オマージュ要素もたくさんです。

He’s all wax, no wickというジャックのセリフが、終盤のカーマイケルの死にざまに対する伏線になっていたり、同じくガスがI wanna keep my head on my shoulderというのに対して、カーマイケルはI promise I make your head spin.と言って、実際にガスは首が180度回転して死んでしまったり。

ホラーにおける死の宣告もあって味わいがあります。

史上もっとも有名なTVパーソナリティーに

さて、この作品での悪魔と夜ふかしの”悪魔”とは誰なのか。

もちろんリリーには悪魔がついています。それは間違いない。しかし、夜ふかしはこの番組のメインパーソナリティーであるジャックとするのです。視聴者はジャックと夜ふかしする。

そしてこのジャックこそが悪魔なのだと思いました。

彼は視聴率に憑りつかれ、自らが所属している男性のみの謎の団体の力を、そして何よりザンダー・ディアボの力を借りた。

序盤にTV局とサインしているような場面は、実はサタンを崇拝する団体との契約だったのでしょう。彼は最愛のミニー、妻を犠牲にすることで史上最大に有名なTVパーソナリティーになろうとした。

リリーは確かに言います。「あなたを史上もっとも有名なTVのパーソナリティーにしてあげる」と。それはどういう形でなのかは明言されていません。

ただ間違いなく、収録現場で大惨事を引き起こした挙句、少女を刺殺したジャック・デルロイは、間違いなく史上もっとも有名なTVパーソナリティーになりました。

こういう、最悪の形で願いをかなえてくるあたりも、悪魔の所業っぽくて最高に良いです。

主演のダストマルチャンはもちろんですが、個人的にはリリーを演じた映画初出演のイングリッド・トレリが素晴らしい存在感だったと思います。

なかなかの見ごたえのある作品でした。

今回の感想はここまで。ではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました