「ソーセージ・パーティー」(2016)
- 監督:コンラッド・ヴァーノン、グレッグ・ティアナン
- 脚本:カイル・ハンター、セス・ローゲン、アリエル・シェイファー、エバン・ゴールドバーグ
- 原案:セス・ローゲン、エバン・ゴールドバーグ、ジョナ・ヒル
- 製作:ジョナ・ヒル、ジェームズ・ウィーバー、アリエル・シェイファー、カイル・ハンター、デヴィッド・ディステンフェルド
- 音楽:アラン・メンケン、クリストファー・レナーツ
- 編集:ケビン・パブロビッチ
- 出演:セス・ローゲン、ジョナ・ヒル、クリステン・ウィグ、エドワート・ノートン、サルマ・ハエック、ポール・ラッド 他
安心と信頼のおバカ、セス・ローゲンが製作するふるCGアニメのソーセージのパーティー。
監督には「シュレック2」(2004)や「マダガスカル3」(2012)を手掛けたコンラッド・バーノンと、「機関車トーマス」シリーズを多く作ってきたグレッグ・ティアナンのタッグ。
声の出演にはいつものメンツというべきか、コメディ手腕の強いジョナ・ヒルやクリステン・ウィグ、ジェームズ・フランコなど。
本作は食べ物のカラフルなキャラがワイワイする映画ではなく、というかそれは製作者やR指定を受けている時点で明らかなのですが、とんでもないアニメです。
公開関数はかなり少ないのですが、お客さんは多め。そしてその展開に笑っていたら最後は引いている。ええと、デートには向いてないんじゃない・・・
大型スーパーマーケットに陳列された様々な食品たち。彼らの願いは、毎日決まった時間に訪れる”神様”によって選ばれ、カートに乗って”扉の向こう”というステキな世界へと行くこと。
ソーセージのフランクとそれを挟むバンズのブレンダは、いつか共に神様に選ばれて一つになることを夢見ていた。
そんなとき、お取替えで棚に戻ってきたハニー・マスタードが地獄を体験したと震えていた。扉の外には楽園など無く、残虐な悪魔どもの支配する世界だというのだ。
誰もそんなことは信じない中、ついにフランクとブレンダも神様に選ばれ、カートに乗るのだった。
CG技術はもういう事はないのかもしれないです。質感の良さなどはいまでは当たり前のレベルになっています。しかし今作はアイディアの面では、面白い映像を次々に見せてくれていると感じました。
そもそも食べ物に目や口、手足を付けてる時点でアレですが、それぞれの特徴をフルに生かしたギャグやグロにエロなど、表面上の笑いにとどまらない驚きがあっていいところです。
薄力粉?まみれの中での、プライベートライアンばりの大惨劇。台所での調理シーン。
内臓飛び出し、顔面剥離に四肢切断などのえぐいものを食べ物の特徴をユニークに使って表現するのは、実線で結ばれないものを自然に解釈する心地よさがありました。悪趣味ですがねw
あと、CGアニメーションで切断された人間の生首が出るのって初めてじゃないでしょうか?「ペット」(2016)でウンチにガッツを感じましたが、その上を余裕で行きましたね。その点「ズートピア」(2016)のヌーディストの描写と言ったら、甘い!・・・比べるもんでもないか。
最初から最後まで続くこの食べ物たちによるボディランゲージ。内容は過激ではありますけど、アニメーションとしての自由な発想と動きはすごく楽しみながら観ていました。
様々なギャグはほとんどが社会的なメタメッセージやステレオタイプなんかをイジっているものですから、全てが純粋に楽しいものではありません。皮肉さを笑うのです。
下ネタはおそらく過激すぎて人を選ぶでしょうし(不快になる人もいるかも)、人種や国、文化に性そして宗教まで含めてクソを投げつけたりしているような作品ですので、気分を害するかもしれません。
ただオチまで行けば、どうしてそこまで過剰にしているかも、笑わす以外の目的も見えてくるかと。
様々な食品や商品。それぞれ存在造形自体が面白いキャラも多いです。棚の役割や需要供給バランス等主人公食べ物たちから見た市場の様子もしっかりしてる。
ハチャメチャなことをヤリまくる割には、世界設定はかなりしっかりしている印象です。各キャラの役割も商品を見れば分かるような巧い配置になっていたと思います。
そもそもの主人公たちの願いは、ソーセージ(男性)が割れ目のあるバンズ(女性)と合体したいというものです。お分かりですね。あの大乱交パーティ以外にハッピーエンディング(意味深)はあり得ないのです。
そんなおバカな結末に向かいつつも、かなりすごいことをやってのけるソーセージたち。
洗脳からの脱却に真実の追及そして革命。
盲目的に信じていたものを自分の目で確かめ、さらに絶望から反撃に。その中にちりばめられるのは、差別を乗り越えた共生。
ジェンダーも人種も越えてあの短小君も結ばれる、みんなが自由で幸せな世界を作り上げたのです。
そして最後の最後で出るメタギャグ。個人的には「WALL・E/ウォーリー」(2008)を思い出すようなものでした。
映画観て知的に刺激受けた気になってるところ悪いけど、声当ててるのはアホずらの男だし、これ自体作り物のアニメですよって、どんだけ意地悪なのw
食べ物などのアイディアは「レゴ®ムービー」(2014)を観ているような感覚を思い出すもので、パッケージこそバカコメディですが、中身は社会的なものも詰まっている作品。
グロ、エロが食べ物だからOKのギリギリラインを突っ走り、すごいものをみたwという感想の後に、設定やギャグを反芻したくなるような映画でした。
公開規模はかなり小さいですが、劇場鑑賞できたのは良かった。アメリカの劇場でのリアクションとか聞くとすごいことになってますねw
R指定も納得の描写の数々ですが、一見の価値はあるのではないかというところです。
それでは、また。
コメント