「マローボーン家の掟」(2017)
- 監督:セルヒオ・G・サンチェス
- 脚本:セルヒオ・G・サンチェス
- 製作:ベレン・アティエンサ、アルヴァロ・アウグスティン、ジスラン・バロワ
- 製作総指揮:J・A・バヨナ、サンドラ・エルミーダ、パロマ・モリーナ
- 音楽:フェルナンド・ベラスケス
- 撮影:シャビ・ヒメネス
- 編集:エレーナ・ルイス
- 出演:ジョージ・マッケイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ミア・ゴス、チャーリー・ヒートン、マシュー・スタッグ、カイル・ソーラー 他
「永遠のこどもたち」(2007)、「インポッシブル」(2012)などの脚本を務めてきたセルヒオ・G・サンチェスの初監督ホラー映画。
主演は「はじまりへの旅」などのジョージ・マッケイ。また「ミスター・ガラス」や「ウィッチ」のアニヤ・テイラー=ジョイも共演しています。そのほか「サスペリア」のミア・ゴス、TVドラマ「ストレンジャー・シングス」のチャーリー・ヒートンも兄弟役として出演。
もともとは「永遠のこどもたち」の脚本の人が長編監督デビューと思っていたくらいでしたけど、劇場で予告を見たら、ジョージ・マッケイにアニヤ・テイラー=ジョイにミア・ゴス・・・ということで注目の若手アッセンブルだったのでみることに。
日曜の夜遅くになる会だったからか、そこまで混んでは無かったのですが、若い人が多めでしたね。ちょっとネタバレかもですが、最後は泣いている人が結構いました。
イギリスからアメリカへと渡ってきた一家。母はここで新生活をはじめ、過去は忘れようと子供たち(ジャック、ビリー、ジェーン、サム)に伝えた。
それから一家は平和に暮らしていたが、母は容態が悪くなり、死の間際に長男ジャックに「21歳まで私が死んだことは隠して。その年になればあなたが保護者になれる。兄弟みんなで一緒に生きるの。」と言い残して他界した。
その後兄弟はみんなで力を合わせ暮らしていたが、ある日最悪の事態が起きてしまう。
この作品がホラー映画としてとても怖いかといわれると、正直そんなに成功しているとは思いませんでした。
確かに緊張感のあるシーンはありますし、木造の家のきしむ音や、鏡などの古典的な要素が活かされているのですが、コアにある恐怖の部分は実際そこまで怖くないです。
むしろ、若干バカらしいとさえ思えてしまうかもしれません。
ともすれば、あまり怖くない上に、種明かしされた時に拍子抜けする方もいるかと思いました。
ただ、私は今作がとても好きです。それはその種明かしによって出てきた感情によります。
多くのミステリーの混ざったホラー映画では、悪の正体とか謎の解明がされ観客に答えが出された時、ものすごく戦慄するか、「なんだよ・・・」とがっかりすることがほとんどだと思います。
ですが、今作では、すべての理由が明らかになった時、涙が出てきました。あまりに切なくて辛くて。
全て紐解かれた時にどう感じるかが今作の好き嫌いの分かれ目かと思います。
私は好きな方ですし、しかも、謎が分かって終わりではなくて、そこからもしっかりとおもしろく、最終的に行き着く先にも感動しました。
どうして鏡を怖がり、すべて覆い隠していたのか。ホラー映画では、鏡に幽霊が映って、振り向くといないとか、鏡が良く使われますね。
でも、まさか、映るからではなくて、映らないから隠していたなんて。悲しすぎます。
ジャックを演じるジョージ・マッケイが、長男であるという以上に、やたらとすべてを背負い込んでいる。彼が兄弟たちがヒートアップするときに発作を起こしてしまう理由。
多層的でありながら内包するジョージ・マッケイの見事な演技に、アニヤ・テイラー=ジョイも素敵です。割と外側のキャラとして動いていましたが、最後にはしっかりと十八番の怖がり演技も見せつつ、やっぱり立ち向かうたくましさもあって良い。
「僕らはひとつ。」
誓いを立てた兄弟たちのために、ジャックが一人頑張っていた。文字通りひとつにまとめ上げて。
去った者たちへの想い。
彼らをとどめておく形は、異常なのかもしれませんが、しかし心温まるものでした。アリーとジャックの最後の形、去っていったものがそこにいるっていうホラーの基本要素を逆転させる秀逸なお話。
エンドロールのサンクスに、”Those who never left”(いなくなってしまうわけではないみんな)って書いてあってまた泣いちゃう。
死者というものを、生きる私たちに寄り添い力をくれる存在として描くホラー映画。個人的にはとても好きな作品になりました。
あまり公開規模は大きくないようですが、是非劇場で観てほしい作品です。感想はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございます。それではまた次の記事で。
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