「ビューティフル・ボーイ」(2018)

  • 監督:フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン
  • 脚本:ルーク・デイヴィーズ、フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン
  • 原作:デヴィッド・シェフ 『Beautiful Boy: A Father’s Journey Through His Son’s Addiction』、ニック・シェフ 『Tweak: Growing Up on Methamphetamines』
  • 製作:デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ブラッド・ピット
  • 撮影:ルーベン・インペンス
  • 編集:ニコ・ルーネン
  • 出演:スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、ジャック・ディラン・グレイザー、モーラ・ティアニー、ケイトリン・ディーヴァー、エイミー・ライアン 他

薬物依存に陥った息子を救おうと、彼を支え続けた実話の映画化。

主演を務めるのは「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」などのスティーヴ・カレル。

そして彼の息子を「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメが演じます。

監督は「オーバー・ザ・ブルースカイ」のフェリックス・ヴァン・フルーニンゲン。

賞レースが始まる頃から海外での評判は聞いていて、特にカレルとシャラメの演技の評価が高いので観たいなと思っていました。

公開の週末にTOHOシャンテで観てきましたが、ちょうどお昼時間の回だったからか、あまり混んではいなかったですね。

18歳の息子を持つデヴィッドは、医師に息子の相談をする。

息子のニックは薬物依存に陥っており、あらゆるドラッグにてを出し更正施設に入れても治療が続かないのだ。

ニックが少年だった頃の思い出と交差しながら、デヴィッドは変わってしまったように思える息子をなんとか救いたい一心で、奔走する。

この作品は実際の父と子の物語であり、おもしろいのがその両者の回顧録が原作にあるということです。

映画自体は父の側からの視点を持ってはいますが、息子のほうの依存描写や逃避などに関しては、実際にニック・シェフの記憶が反映されているということだと思います。

最初に言いますけれど、この作品には上記の視点の関係もしくはこれが親子の物語であるからか、悪役は存在しません。

社会的な問題としての薬物を主題にはしていますけど、私は最後までこれは親子の愛情の物語だと感じました。

怖いところもありますけれど、最後まで暖かく優しい作品です。

スティーヴ・カレル。「フォックス・キャッチャー」からすっかりこういうシリアスなドラマで輝くようになったと思います。

今でも面白い役柄もできて、才能がどんどん広がっていると感じますね。凄い。

彼は下手なマチズモやヒーロー感をおさえることができると思いますので、今作の一途な父親役にはピッタリかと思いました。

また今や若手俳優第一線を走るティモシー・シャラメも、印象強い演技を見せています。

かなりやせていて肉体的にもコミットが感じられますけれど、もがく感じとか弱さとか脆さとか、手を差し伸べなきゃ死んじゃうかもという保護本能を刺激する雰囲気がすごかった。

二人の親子の演技が、この作品の核であるというのは間違いないです。

過剰なぶつかり合いをせず、どちらかといえば画面上で会うことも少ない親子。

ただスティーヴ・カレルが息子との思い出を振り返りながら、今彼がどうしているか心配し座っているだけでドラマチックです。

それはそうした描写から受け取る感覚が、実際の人生に限りなく近いからだと思います。

この映画でもカットバックは使われますが、時間軸が微妙にずれていて、やはり今その瞬間に息子がどこで何をしているのかがわからないんです。

こういうところは、現実の私たちの生活のふとした瞬間の、誰か大切な人と連絡が取れない一瞬とかに感じる不安に似ているように思います。

この親子の距離を表すように、施設でも思い出のカフェでも会話する二人は同じ画面に一緒に映らず、別々に切り出されていて切なかったですね。

編集の面では他にも好きなところがありました。

全体に食い気味での場面変遷ですね。結果が先回りして一瞬映されて、そこに至る経緯を見せていったり、まだ画面内での事態が動き出す前に、すでに次のシーンでの音が流れ始めていたり。

事実として淡々と、そしていかに父の愛情や案じる気持ちがあっても、もう変えられない大きな流れというものを感じます。切なさを増していると感じました。

親に嘘をつき、小さな弟のお金を盗む。そうさせてしまうほどニックを変えてしまった薬物依存。

ただ、どこまで変わってしまったとしても、ニックを真っ直ぐに愛し続けるデヴィッド。

今作は父の愛を通して、その形を別の視点で見せているように思えました。

愛はその力に限界がある。

愛することで大切な人を救うことはできなかったのです。

ただ、デヴィッドは愛し続けることで、息子に寄り添いました。引き上げる力はなく、這い上がれるか、それはニック自身の問題です。

でも、いかにニックが身を崩しても、優しく包み込んであげることはできるんですね。愛は受け皿になります。

愛だけでは救えない力の無さに正直さと残酷さを見せながら、結局人間は最後には愛にすがる、愛に受け止めてもらう姿を描く。

見事な演技に裏付けされた、見ていて辛くなるほど現実的なお話でした。

麻薬依存の話としてもですが、大切な人が失われていきそうな時、何ができるのかを見せてくれた気がします。

デヴィッドのように見捨てずに寄り添うことのできる人になりたいものです。

今回の感想は以上。最後まで読んでいただきありがとうございます。それではまた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です