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「ボトムス 最底で最強?な私たち」”Bottoms”(2023)

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bottoms-2023-movie-Emma Seligman 映画レビュー
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「ボトムス 最底で最強?な私たち」(2023)

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作品概要

  • 監督:エマ・セリグマン
  • 製作:エリザベス・バンクス、マックス・ハンドルマン、アリソン・スモール
  • 脚本:エマ・セリグマン、レイチェル・セノット
  • 製作総指揮:テッド・デイカー、エマ・セリグマン、レイチェル・セノット
  • 美術:ネイト・ジョーンズ
  • 音楽:チャーリー・XCX、レオ・ビレンバーグ
  • 出演:レイチェル・セノット、アヨ・エデビリ、カイア・ガーバー、ルビー・クルーズ 他

クィアの地味な女子高生2人組が人気者のチアリーダーたちの興味を引くためにファイトクラブを結成する様子を描いた学園コメディ。

カナダ出身の若手監督エマ・セリグマンが指揮を執り、セリグマン監督と主演のレイチェル・セノットが脚本を手がけました。

レイチェル・セノットは以前にも監督の「Shiva Baby」で組んでいますね。またセノットの親友の役には「シアター・キャンプ」などのアヨ・エデビリが出演しています。

本国アメリカでは結構ヒットしていたようで、海外紙のレビューなどでよく名前は上がっていました。しかし日本では劇場での公開がなく、今回は配信公開になっています。

お休み期間中にアマプラで鑑賞して観ました。

「ボトムス 最底で最強?な私たち」Amazonプライムビデオの配信ページはこちら

~あらすじ~

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ジョシーとPJは同じ高校に通う親友。

二人は、それぞれチアリーダーのイザベルとブリタニーに恋をしていて、頭の中は相手のあそこをゲットすることだけ。

無能かつ不細工の烙印を押され、最底辺を這いずり回る二人もこのまま高校生活を終わらせる気はなかった。

なんとか自分たちの恋を成就させ、ベッドインするべく、自己防衛とフェミニズムの理念を掲げ、女子だけのファイトクラブを立ち上げることに。

その計画は予想外にも順調に進み、彼女たちははイザベルやブリタニーとのつながりをより深めていく。

しかし勢い任せの計画はセンセーショナルになる一方で、ついた嘘を隠し切れなくなってきてしまう。

感想/レビュー

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学園もの。そのジャンルは今のまさに最前線の価値観を得ていく上で私は結構大切にしているジャンルです。

そしてシリアスなドラマもロマコメも、そして今作のようなセックスコメディも多く作られてきています。毎回更新をかけられながら。

多くの男子を主人公とするセックスコメディにおいて、女子はあくまでゴールでありトロフィー。最後にヤれるかどうかが問題でした。

違うものもありますが、80、90年代と昔なほどにそういった傾向は強いでしょう。

それが大きく転換していきます。クィアな要素が入り込むことから、それが入っていること自体を話題にしなかったり。

「ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー」「リベンジ・スワップ」など、学園者の楽しさの中に、友情、恋、オタク、いじめや復讐などがさまざまにミックスされています。

今作はそういった映画史の中でいうと、負け組のクィアを主軸にとらえていますが、もっと突き詰めて言うとコンプラというかポリこれというか、そういった義務的な面や正しさみたいなものを放り投げています。

そしてそれが痛快なのです。

「何のとりえもないブスのレズビアン二人」

そんなアウトすぎる校内放送で呼び出しをくらう主人公の親友ふたりは、ジョシーとPJ。

レズビアンであることを揶揄はされないし隠す必要もない。その辺はまさにZ世代。

しかし今作はそこにさらに、何のとりえもないとかいう追い打ちをかまし、果てには確かに救いようのない自己中心的性欲バカという造形を遠慮なくして見せているんです。

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これどういうことかというと、人種問題であってもセクシュアリティの問題であってもいまだに結構おかしなことになっている、才能と性質の関係をぶっ飛ばしてるんです。

例えば「メキシコ系でもアフリカ系でも、俺は才能があって優秀な奴は受け入れているぜ。」とかいう経営者とか、「ゲイだとか関係ない。彼はすごく優しくていい人なの。」とかいう言葉は結構聞きますよね。

あの偽善と欺瞞を殴り倒している。

本来本当に差別をしないなら、優秀じゃなくて最低の馬鹿でも、性格最悪で悪人でも、人種もセクシュアリティも関係ないからね。

なんでか知らないですが、相変わらず多くのメディアで描かれるクィアは良い人間が多いです。危険性をはらんだクィアももっと描かれても良い。アホな人も。

クズ人間のゲイであってもそこにいていいんだから。

そんな革新的な新時代の光と共に、はやく相手のアレを舐めたい二人の女子が暴走する様は壮絶です。

正しさを本当の意味で解放した、免罪符付きの状態でやりたい放題のバカ騒ぎ。ただただあほすぎて笑えます。

癖の強い人間しかいなくて、これまでの映画では脳みそがお留守に描かれがちだったチアリーダー(ヤりたい相手)の方がすごく真っ当なことを言う。

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癖の強いキャラを見事に演じきってる俳優陣もすごいです。主演の二人はレイチェル・セノット、アヨ・エデビリ。

最近は現実の高校生とは思えない大人が出てくるってのは減ってきて、等身大のぎこちなさあふれる造形があり、二人はそこにピッタリ合わせています。

レイチェル・セノットは直進的な部分でのPJのヤバさが炸裂しています。嫌いにならないくらいにではあるけれど、終始自己中だし、やりたすぎる。

アヨ・エデビリは引っ張られる側ではあるけれど、そのぶん自発的に話さないため、リアクションでかなりおもしろい。

そしてラストの落ちに向けての部分も変わった映画でしたね。

人死にでてる?気もしますがそれは気にしない。敵チームをぶったおして血まみれハッピーエンド。

ここでゴチャゴチャ正しいこととか問わないし。

監督のエマ・セリグマンは29歳、おそらくこの作品の企画時には27くらいでしょう。

敏感に少し下の世代の諦め感をキャッチして、カオスな状況の中でどこか底抜けている。

スタンダードはしっかりと更新されているのだけれど、そこからこんなにもバカバカしさたっぷりのコメディを生み出せるエネルギーにはびっくりです。

レズビアンを”善良で大人しく、繊細。そして被害者”といったくくりにしない新しい下地を作ってしまっただけでもすごい功績。

人を絶対に選ぶ作品なのですが、個人的には時代を定義する学園もの作品群に名を連ねることになっているすごい映画だと思いました。

今回の感想はここまで。

ではまた。

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