「すべてが変わった日」”Let Him Go”(2021)

「すべてが変わった日」(2021)

Let-Him-Go-2021-movie

作品概要

  • 監督:トーマス・ベズーチャ
  • 脚本:トーマス・ベズーチャ
  • 原作:ラリー・ワトソン『Let Him Go』
  • 製作:トーマス・ベズーチャ、ミッチェル・カプラン、ポール・メイザー
  • 製作総指揮 ケビン・コスナー、ジョシュ・マクラフリン、ジェフリー・ランパート、キミ・アームストロング・スタイン
  • 音楽:マイケル・ジアッチーノ
  • 撮影:ガイ・ゴッドフリー
  • 編集:ジェフリー・フォード、メグ・レティカー
  • 出演:ダイアン・レイン、ケビン・コスナー、レスリー・マンヴィル、ブーブー・スチュワート、ジェフリー・ドノヴァン、ケイリー・カーター 他

「幸せのポートレート」、「恋するモンテカルロ」などのトーマス・ベズーチャ(バゾーカ)監督が、暴力的な家族に引き取られてしまった孫を救おうと旅に出る老夫婦を描く西部劇風のスリラー。

作品はラリー・ワトソンの同名小説を原作としています。

原題、小説タイトルは”Let him go”。意味としては「彼を行かせる、離す、諦める」といった意味合いになり、今作の旅の根幹に置かれる言葉でもあります。

主演はケビン・コスナー、そしてダイアン・レイン。この二人の夫婦役といえば、田舎の農場も同じ設定の「マン・オブ・スティール」が思い起こされます。

あちらでもとても良い両親を演じていました。

またPTS監督の「ファントム・スレッド」でアカデミー賞にノミネートしたレスリー・マンヴィルが、支配的な家庭に君臨する印象深い人物を演じています。

その他には「ボーダーライン」シリーズのジェフリー・ドノヴァン、インディアンの血を引く青年や国はブーブー・スチュワートが出ています。

ちょうど去年?映画館でやっているときに観に行こうとしつつも見逃してしまった作品のひとつで、配信を見つけたために鑑賞しました。

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~あらすじ~

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マーガレットとジョージは田舎町で平穏に暮らしていた。

彼らは息子夫婦とかわいい孫と一緒に住んでおり、孫のジミーをとてもかわいがっていた。

しかし、ある日息子が落馬事故で亡くなってしまう。その後義理の娘ローナはドニーという男と再婚し、彼らはジミーを連れて町へと移り住んだ。

ある時マーガレットが町で買い物をしていると、ドニー達親子が歩いているのを目にする。

そこで些細なことからドニーがジミーを叩き、ローナにはさらに強い暴力をふるっているのを見てしまう。

もともとドニーを信頼していなかったマーガレットは、このまま彼のもとに大切な孫を置いていけないと思うのだが、ドニーはローナとジミーを連れて挨拶もなしに消えてしまった。

どうやらドニーの実家であるウィーボーイの家に戻ったということがわかると、マーガレットは早速出発した。ジョージも一人で行かせるわけにはいかず同行するが、ウィーボーイ家は誰からも悪いうわさを聞く一家だった。

感想/レビュー

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静謐さを称える西部劇

静かな、所作を重視した重厚なオールドファッションウエスタンでした。

私自身がこの作品を、原作を読んだこともなければ大まかなあらすじも確認せずに見たこともあるかもしれませんが、どこにドライブしていくのかがわからないスリリングなテイストを持っていると感じます。

しかしアクションパックでもなく、全体には静かであり、些細な、小さな提示によってストーリーをドライブしていき、だからこそ待ち構える突発的な暴力に震える。

素晴らしい俳優陣

行き着く先が見えない中で、そこに没入できるのは、今作が素晴らしい俳優によって支えられているからだと思います。

やはりいるだけでその存在感が魅力的、かつ作品を西部劇テイストにシフトさせるケビン・コスナーの力も大きく、観客に近い側としてマーガレットについていく役回りとしても良い。

元保安官のジョージこそが、タイトルの”Let him go”を絶えずマーガレットに問う存在。

前に出すぎずともバックボーンとして支えるジョージが素敵。

もちろんダイアン・レインも子を失った喪失を埋めようとする危うさ、二度と失いたくないという強烈な母性を見せていて、ケビン・コスナーとのアンサンブルも素晴らしい。

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各人物の印象を強め質を上げる俳優陣

さらに対比的に登場する同じく強烈な母親ブランチを演じたレスリー・マンヴィル。

今作の彼女はややキャラクター感があるとしても、観れば絶対に忘れられない絶対性を感じますね。

巻き上げたブロンドの髪に、ところ構わないタバコ。

奇しくもマーガレットと同じく料理を持って家族と関わり、彼女は支配する。

また個人的には「プライベート・ライフ」でも素晴らしい俳優と感じたケイリー・カーターもとても良かったと思います。

OP時点からマーガレットに指摘され、終始頼りなくウィーボーイ家に支配されていく女性。

緊張が張り詰め弱々しさを垣間見せ続けながらも、やはり彼女も母としての意地を見せていたり。

ジェフリー・ドノヴァンももう話し方から信用できない感じのビルを見事体現していて、いるだけで不快ったらない抜群の演技でした。

唯一ブーブー・スチュワートが演じたピーターだけは、人物というよりも迷える子どもというアイコン的な要素が強く感じてしまいましたが、それでも全てにおいて、今作は俳優陣に恵まれたと言っていいです。

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静かな所作だけでドラマを生む

さらにその演技を高める方向に思えるのは、無言無音で繰り出されるほんの少しの描写というミニマムな演出です。

誰も乗っていない馬がトコトコと家の前に歩いてくる。

新郎のキスに身を引き、口ではなく頬を向ける新婦。

車から見える男が子どもを叩く風景。

全てが、大げさでない小さな事象であり所作です。そこからこそ、含まれている意味合いを察し、のめり込んでいくわけですね。

大きく叫ばないということが、キャラクターへの洞察を深める仕掛けになり、転がっていく先、暗雲立ち込める展開において、それぞれを心から心配させる機能を果たすのです。

子を失った母親の食材と癒し

子どもを失ったマーガレット。

その喪失はすごくあっさりと描写されています。

カットを割るとジョージのネクタイを締めているシーンにジャンプするのですが、葬儀かと思えば次にはローナの再婚が展開される。

このジャンプ、正しい手順を踏まない感じは、おそらくマーガレットが息子の死を受け入れきれていないことを示しています。

この旅はすべて、その癒しと喪失の自覚、贖罪のためにあるのです。

強引であり固執しすぎともとれるマーガレットが行きつく先は血に染まっていましたが、それでも一度は親としての務めを果たせなかったゆえに、彼女は突き進んでいく。

全体のテイストは古風な西部劇で、「捜索者」のような印象も受けますが、割とありがちな話とちょっとした身勝手さすら、演者の良さと静けさの演出がカバーして楽しめる作品になっています。

配信されているので興味のある方は是非。

というところで感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

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