「チャイルド44 森に消えた子供たち」(2015)
- 監督:ダニエル・エスピノーサ
- 脚本:リチャード・プライス
- 原作:トム・ロブ・スミス『チャイルド44』
- 製作:リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ
- 製作総指揮 アダム・メリムズ、エリーシャ・ホームズ、ダグラス・アーバンスキー、ケヴィン・プランク、モリー・コナーズ、マリア・セストーン、サラ・E・ジョンソ、ホイト・デヴィッド・モーガン
- 音楽:ヨン・エクストランド
- 撮影:オリヴァー・ウッド
- 編集:ディラン・ティチェナー、ピエトロ・スカリア
- 出演:トム・ハーディ、ナオミ・ラパス、ゲイリー・オールドマン、パディ・コンシダイン、ジョエル・キナマン、ヴァンサン・カッセル、ジェイソン・クラーク、ファレス・ファレス 他
「ライフ」(2017)のダニエル・エスピノーサ監督が、トム・ロブ・スミスによるソビエトを舞台にしたスリラーを映画化した作品。
主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などのトム・ハーディ、妻役を「プロメテウス」などのナオミ・ラパスが演じています。
二人は「クライム・ヒート」でも共演しており、再びペアになりました。
その他ゲイリー・オールドマンにジョエル・キナマン、パディ・コンシダインなど豪華な俳優が揃っています。
作品公開時にはトム・ハーディ見たさに鑑賞予定に入れていたのですが、理由もよく覚えていない感じでなぜか見忘れていました。
今回はAmazonプライムビデオで配信されていたのでそちらで初めての鑑賞となります。
1953年のソビエト連邦で、MGBのメンバーとして働くレオは、スパイ容疑者を拘束し尋問する任務に就いていた。
そんなあるとき、友人の幼い息子が列車事故で死亡する。しかし、その遺体や解剖結果からは明らかに殺人事件であった。
「殺人は資本主義の病である」という考えから、このソビエトでは殺人事件は起きないとされ隠蔽されたのだ。
さらに今度はレオの妻ライーサにもスパイ容疑がかけられ、彼女を想うあまり告発できず守ることにしたレオは、夫婦そろってモスクワから追放されてしまう。
そして、行き着いた村の線路近く、また少年の遺体が発見されるのだった。
ダニエル・エスピノーサ監督は実力のある俳優陣を終結させ、彼らにできることをしっかりと見せ演技とくにロシア訛りや各人物の特徴を活かしつつも、抱えきれなかった物語と題材に押しつぶされてしまったようです。
トム・ハーディ、ナオミ・ラパス、ゲイリー・オールドマンにパディ・コンシダイン、ジョエル・キナマン・・・字面だけでも素晴らしい彼らがスクリーンに出てはきますが、主演たるハーディと重要なラパスを除くと、各章に登場または部分的にかかわる程度です。
それは俳優陣のせいではなく、そもそもの題材が複数ありすぎて、人物が相関を成すことがないからです。
トム・ハーディはロシア訛りをガンガンに使い、彼特有の荒々しい獣らしさを出しながら、クールに衣装も着こなしますし、ナオミ・ラパスも夫への愛と恐怖に揺れる様を表現します。
ジョエル・キナマンの静かにイカれた男も実に陰湿で見事。みんな本当にいいと思います。
描かれるのは夫婦の愛の試練に始まり、陰謀、連続殺人と捜査、ホロドモールからウクライナとソビエトの関係に社会主義政権下の圧政、組織内での嫉妬と策略・・・多すぎです。
ちょっとしたアクションまで入れていますし、盛り込みすぎではないでしょうか。(ちょっと何やってるのか分かりにくいのも個人的にはイヤ)
多い分、それぞれ話を切り替えて進むので全体の流れみたいなものが失われ、ただ長く退屈になってしまっていると思います。
もちろん複数のプロットが絡み合いながらうまくジャグリングすることもあるのですが、残念ながら今作では球をひとつづつ投げてはキャッチするだけです。
パディ・コンシダイン演じる役なんて、ずっとどこ行ってたのレベルですし、ゲイリー・オールドマンも途中参加でありながらイマイチパッとしない役回りです。
全体には消費的な映画に落ち着いたと感じます。
西側なり資本主義なりが、社会主義の批判をし、レオはじめとする境遇には自分はいないという安心や気持ちの良さを体感するためにも思えて、娯楽として消費するにもちょっと歪んだ感覚も持ちました。
原作小説を読んでいないので何とも言えないところもありますが、そもそもの題材が情報過多で、いい材料をそろえたとしても具材が多すぎてごった返しています。
ミステリーにスリラー、歴史の暗部や虐殺、東西関係などいろいろなジャンルがそれぞれ独り歩きしたため、どういう映画なのかも不鮮明に感じる作品でした。
俳優陣の演技とかトム・ハーディはじめヘアスタイルや衣装などのカッコよさはありますが、個人的にはあまりお勧めできる作品ではありません。
感想は以上となります。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
それではまた次の記事で。
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