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「ファイアー・ウィル・カム」”Fire Will Come”(2019)

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Fire Will Come movie 2019 映画レビュー
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「ファイアー・ウィル・カム」(2019)

  • 監督:オリヴァー・ラクセ
  • 脚本:オリヴァー・ラクセ、サンティアゴ・フィロル
  • 製作:マーニー・モータザビ、アンドレア・ケラルト
  • 撮影:マウロ・エルセ
  • 編集:クリストバル・フェルナンデス
  • 出演:アマドア・アリアス、ベネディクタ・サンチェス、イナシオ・アブラオ 他

Fire Will Come movie 2019

第32回東京国際映画祭、ワールドフォーカス部門、また第16回のラテンビート映画祭にての上映もある作品。

山火事の罪を背負う男、その母の暮らしから、再びの山火事までを描く物語です。

2019年のカンヌ国際映画祭ではある視点部門に出品され、審査員賞を獲得しました。

私はカンヌでのことで名前くらいしか知らなかった作品ですが、TIFFでいい機会だったので鑑賞。初日の、QAはない回で観ました。

ちなみに知識がなく、オリヴァー・ラクセ監督のことは全然知らず、過去作も見たことがありません。

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あらすじ

アマドールはかつて山火事を起こした罪で服役しており、今回釈放されることとなった。

彼は故郷の山奥の村へと帰ってくるのだが、村人たちはアマドールを快くは思っていない。彼自身、誘う友人がいてもそれを断り一人でいようとしている。

しかし彼は一人ではない。年老いた母がおり、母はアマドールに優しく接してくれる。

彼らは牛の世話をし、一緒に食事をし、つつましく暮らすのだった。

Fire Will Come movie 2019

言葉にしにくいのですが、どこまでも奥深く考えていける映画だったと感じます。

映画的といういい方はあまり好きではないですが、映像で語っていく、映像にこそ多くの言葉が存在するタイプの映画です。

主人公アマドールも母も、最低限の言葉しか発しなくて、人間の台詞というのは極端といっていい程に少ない作品でした。

2人を演じた方は演技経験のない?方たちらしく、それでも多くを口にださず意思疎通する母と息子がしっくりきてます。

お母さん役の方の、パン食べてる時のナイフの動き、またハエを追い払う仕草、なんかすごく好きです。

そんな感じでセリフが少ない代わりに、すさまじく圧倒してくる映像が何とも印象強く残っています。圧巻の山々の景色や大きな木、雨。

アマドールがどんな罪を背負っていようとも、なんだかこんなに雄大な自然があると、全て受け入れてくれるようにも思います。母なる大地とは言いますが、お母さんとの言葉数少ない(それで済む)関係含めて、包み込む感覚。

母もまた、雨宿りをするシーンがすごく心に残っているのですが、自然によって迎え守られる場面がありました。

加えて、音の方も残っています。結構雨が降っているシーンが多かったように思います。

雨音というのが常に聞こえていて、実はそれがのちの山火事における木々が燃え尽きていく音にもそっくりに思え、何か暗示のような役目もあるのかなと。

Fire Will Come movie 2019

その山火事のシーンですが、正直これは観たら忘れられない光景でした。

「オンリー・ザ・ブレイブ」で山火事の恐ろしさを感じてはいたのですが、桁違いです。実際に山火事が起きたその現場で撮影するという頭のおかしい(いい意味で)ショットなんですが、効果は抜群。

ただただ恐ろしく、そしてまたその炎の業はどこか美しくもあって見とれてしまいます。

火は全てを無に帰す。ただそこからの再生というのもあるとは思います。

巨大な炎は神の業なのでしょうか。私はどうもそういう宗教っぽさをこの作品に感じました。それか、自然=神という概念かもしれません。

罪を背負った者は村八分にされ、母だけが彼を抱擁する。聖母のように。

父は不在です。それは神のごとく。

そしてOPで人が木を伐採し(途中の牛の散歩でも出てきますが)、その人による自然の淘汰のまるでしっぺ返しのごとく、烈火が森と家を焼き払う。

Fire Will Come movie 2019

アマドールはこれまたその罪を、もしこれが人間の罪(自然破壊)に対する神の罰だとすれば、それのはけ口となったアマドールは何者なのか。

彼が放火をした過去も、そして今回の火事に関しての関与も全く描かれずにいます。みている側からすると、何も示されない。

しかし最後に上空を飛ぶヘリの、尾翼?が太陽にかぶり十字架に見えるなど、どことなくキリストやら聖者を思わせるようなものも感じました。

これもこれでただの一つの解釈です。映像は真っ直ぐに言葉を発しませんが、とてつもない奥深さと美しさ、味わいを持っている作品であると断言できます。

実際自分がこの作品の語るところを理解できたかといえば疑問です。もっともっと考えないといけないと思います。

でも非常に美しく無駄のない画の数々に圧倒された1時間半でした。

罪を知らない獣医さんと仲良くなって、それでもやはり自分の過去が追ってきて。行き所のない人を包む自然。そして構わず焼き尽くす火。

自分より大きなものが感じられましたね。

感想としてはちょっとまとまりもなく、思ったことを書き残すだけとなりましたが、TIFFの鑑賞策の中でも印象深い作品。

ラテンビート映画祭にて新宿や横浜などで観れる機会がまだあります。興味のある方は是非。スクリーンで見るべきと思う作品なので。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事にて。

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