「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019)
- 監督:チャド・スタエルスキ
- 脚本:デレク・コルスタット、クリス・コリンズ、マーク・エイブラムス、シェイ・ハッテン
- 製作:ベイジル・イヴァニク、エリカ・リー
- 音楽:タイラー・ベイツ、ジョエル・J・リチャード
- 撮影:ダン・ローストセン
- 編集:エヴァン・シフ
- 出演:キアヌ・リーブス、ハル・ベリー、エイジア・ケイト・ディロン、イアン・マクシェーン、マーク・ダカスコス、ローレンス・フィッシュバーン、ランス・レディック 他
作品概要
伝説の殺し屋ジョン・ウィックの闘いを描くアクションシリーズ第3弾。
監督は引き続きチャド・スタエルスキが務め、主演はもちろんキアヌ・リーブスが続投。
今回はお馴染みのキャラクターを演じるイアン・マクシェーンやローレンス・フィッシュバーンも引き続き登場します。
そして今回はハル・ベリー、エイジア・ケイト・ディロン、そしてマーク・ダカスコスが新たに参加。
タイトルのパラベラムですが、意味はラテン語の「Si Vis Pacem, Para Bellum」(平和を望むならば戦いに備えよ)に由来しています。
まあシリーズ通しての命題みたいなものです。
注目の作品で私も大好きなシリーズの新作ということで、楽しみにしていました。
日本公開がかなり遅れる(北米は5末、日本10頭)なので先に海外で鑑賞。ブルーレイも買って家でも数回観ました。
~あらすじ~
大切な犬を殺されたことで闇の世界へ戻ったジョン・ウィック。
その後どんどんと深くへ堕ちていった彼は、今や懸賞金1400万ドルをかけられ、世界中から命を狙われる身となった。
暗殺者界の掟を破ったことで、聖域であったコンチネンタルの支援もあと1時間で絶たれ、彼を守るものは一切なくなってしまう。
降りしきる雨の中、ジョンはニューヨークの街を駆け抜ける。
始まりへの場所へ戻り、そしてこのシステムの頂点へ直接会いに行くために。
感想/レビュー
すでにシリーズを観てきたなら、この世界に親しんでいるでしょう。
私たちの生きる世界とは違うファンタジー世界。
ニューヨークには2ブロックごとに殺し屋がいて、いまだにフリップタイプの携帯やダイヤル式電話を使うこの世界。
前作にて表も裏もなくなった中で、極限までアクションを、伸び伸びと繰り広げていく今作は、前作からさらに加速しています。
スタエルスキ監督とスタントチーム。
短めの出演時間ながら強い印象を残すハル・ベリー、前作のコモン以上にジョン・ウィックとの死闘をみせるマーク・ダカスコス。
存在感もすごいし、ダイヤルをペンで回したりなエイジア・ケイト・ディロン。
「ザ・レイド」からのヤヤン・ルヒアンなどの嬉しい出演もありながら言えることはひとつ。
この映画は身体的アクション映画の最先端にいることです。
タイミングや位置がわずかでもズレれば成立しないほどの複雑に組まれた殺陣を、見事にこなすチームワーク。
それをできるだけカットを割らずに長回しでみせ、美しく撮影する技術。
テクニカル面、演者のレベルの高さが際立ち、何よりも戦い続けるジョンを演じるキアヌ・リーブスに惚れ惚れしてしまいます。
自身を突き詰めていき、ジョン・ウィックとイコールになりきる信念がうかがえますね。
何より私は、フィジカルなアクションとそれを自分でやろうと挑戦する心、映画作りへの想いを愛してますので、彼のアクションを見れて光栄とすら思いました。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」並みに、映画が始まってからアクションが続きます。
もちろん間には落ち着いたシーンもありますが、過剰とも言えるアクションをとにかく吐き出してくるんです。
しかしそんな中でも、見たことのないものをみせる技巧とアイディアにも溢れた作品です。
いつまでも格闘・銃撃をするのではなく、ナイフ、犬、馬、バイク、そして本までも使い新しい何かを提示する。銃撃が本当に打撃になるとかね。
何度、”これは初めて見た”と思えるフレッシュな殺しを体感したことか。
特にハル・ベリーと2頭の犬を交えてのアクションシークエンスですが、涙が出ました。人間同士でも、本当に緻密に計算して、安全を確保して、息を合わせてイメージをすり合わせて・・・そうやって素晴らしいアクションを繰り出していく。
それなのに、今作は犬とまで固いきずなを持ってアクションをしていくのです。
「マトリックス」的な弾丸軌道のシーンがあったり、”Lots of guns.”などのキアヌのキャリアへの目配せがあるのも遊び心がありますね。
前作でのカシアンとジョンの階段落ちもそうですが、ジャッキー・チェンの映画並みに割れまくるガラスとか、オーバーキルなバイオレンス描写とか、激しすぎて笑えます。
登場人物たちは大まじめに、もはやコメディに見えるほど凄すぎる動きを繰り出すので、暴力描写でも惨くはなく楽しめるのは良いところです。
それでも色彩や安定したカメラ、美術面にてはリッチさやクラシカルなテイストを保っているのも見事です。
今作で己の影のような存在と対決し、ハイ・テーブルのもと敷かれたルールではなく、まさに自分自身の信念を優先し戦い続ける彼は、仕方なしにではなく自らルールを破ります。
前作ではルールに基づきジアナ・ダントニオを殺した彼は、今作にてついに殺さないことを選びます。
ガラスケースでできたような空間で、その透明な仕切りを粉砕しまくるジョン・ウィック。今回のラストは前作と同じくらいに好きです。ここからの広がりのワクワク。
「芸術は痛み。人生は苦しみ。」
人間が耐えきれないくらいの打撃を受けつつ、過激な身体アクションをしっかりと重みを持って見せる今作。
方向性がはっきりしたシリーズとして、そのアクションが加速しまくる作品で非常に楽しかったです。
今回はこのくらいで感想を終わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた次の記事で。
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