スポンサーリンク

「真実」”La vérité” aka “The Truth”(2019)

スポンサーリンク
LA-VERITE-the-truth-2019-movie-kore-eda 映画レビュー
スポンサーリンク

「真実」(2019)

  • 監督:是枝裕和
  • 脚本:是枝裕和
  • 製作:ミュリエル・メルラン
  • 音楽:アレクセイ・アイギ
  • 撮影:エリック・ゴーティエ
  • 編集:是枝裕和
  • 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、クレモンティーヌ・グルニエ、リュディヴィーヌ・サニエ、マノン・クラヴェル 他

「万引き家族」にてカンヌ国際映画祭最高賞であるパルム・ドールを獲得した是枝裕和監督の最新作。

大女優の自伝本から彼女と娘、そして家族の秘密や過去が見えてくるドラマ作品となります。

主演は「シェルブールの雨傘」などで有名なカトリーヌ・ドヌーヴが母を、娘を「アクトレス 女たちの舞台」などのジュリエット・ビノシュが演じ、またその夫役には「魂のゆくえ」のイーサン・ホークが出演しています。

ヴェネチアではオープニング作品として上映、海外よりも早めに日本公開してくれました。

「万引き家族」は個人的に昨年2018年の作品内でもかなり好きな一本で、是枝監督の新作が早速観れるということで鑑賞。

ただ前作のときはそれこそ学生グループもいたんですが、今回は年齢層高めで一部映画ファンの若者がいる程度。ちょっと残念でした。

LA-VERITE-the-truth-2019-movie-kore-eda

フランスの大女優ファビエンヌは自身の自伝を出版することに。

そのお祝いのため、アメリカで脚本家をしている娘のリュメールと、その夫でテレビ俳優のハンク、そして二人の娘シャルロットがファビエンヌの家にやってくる。

ファビエンヌは現在、年を取らない母とその娘を描くSF映画の撮影中だ。撮影の忙しい毎日の中で、ファビエンヌの書いた自伝の内容でリュメールとの仲が緊張する。

実際の親子関係と違う過去、叔母サラとの関係。

ここに集まるそれぞれの人間模様が交錯していく。

LA-VERITE-the-truth-2019-movie-kore-eda

端的に言って清々しい気持ちで映画館を出る映画でした。

そして非常に私の好みのタイプ、題材の映画でもあります。何と言っても多層的な作品。

終始そこかしこに意地悪なものからかわいいものまで笑いがちりばめられ、ふと空気の抜ける涼しさや、暖かな日を感じたり、重なる意味合いに思いをはせてみたり。

深く深くのしかかるような揺さぶりこそない作品で、サラリとしたようにも感じますが、それでも多くの人生や家族のあり方へと集約されていく物語はとても好きでした。

好きな題材の理由一つは、この作品の人間に今作以前以後に人生を感じること。

最近だと「ブックスマート」でも言いましたけれど、映画の時間だけではなくその前後にもこの人物たちが生きてきた道と、これからがしっかりと横たわっていると感じます。

それこそ作品の肝にもなる、過去の記憶や真実も関わるのですが、確かな手触りを持って、単純にプロットに機能する部品ではない登場人物のやり取りを観るのが大好きで、見事だったと思います。

LA-VERITE-the-truth-2019-movie-kore-eda

そして好きな理由二つ目となるのが一番好きなところで、今作のレイヤーの多さです。

この作品はカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュがそれぞれ大女優とその娘を演じながら、カトリーヌは映画の中で映画に出演しており、そこでは年を取らない母(マノン・クラヴェル)の娘を演じています。

スクリーンの中にあるスクリーン、演技の中の演技。

これらは私がとにかく観ていて楽しく興味深いと思うもので、展開される物語の層が折り重なるほどに、その重なりで濃く見えたり、取り払ってみて見えるものなど巧みに配置されると面白いと思っています。

かつて娘に構えなかった母が、今度は母に残される娘を演じる。そしてそれを実の娘がスタジオ内で観ている。なんて多層的で奥深い構造。

偶然かジュリエット・ビノシュが出ている「アクトレス 女たちの舞台」のマリアとヴァルのあの読み合わせのような、メディアの中でメディアが錯綜するその多視点で観れる楽しさが良かったです。

LA-VERITE-the-truth-2019-movie-kore-eda

人は皆多層的です。

全てが折り重なった、それぞれの人間がさらに組み合わさり、そこでまた層を生み出していきます。それが夫婦や家族となる。

そのレイヤーはあまりに多く、常にそこに横たわる形を見れるわけではありません。

母の娘への気持ち。女優として、そして母として選んだ道。

撮影中という裏にある真実はアル中のリハビリ、カメはカメでありピエールではない。でもそれぞれその対象にとって必要なレイヤーであれば、真実にかぶせても良いのかも。

そして、レイヤー越しには見えたり見えなかったり。ふと葉が散ることで、今まで聞こえなかった音が聞こえるのと同じように。

結局真実とは何なのか、笑っちゃうくらいに演技に全て消化していく女優という生き物を通して、やはり多様な多層な現代の家族を描いた作品だと感じます。

重く心にぶち当たるようなものこそないですが、どこかサラリとして爽やかながら、記憶に残る作品だと思います。個人的には好きなタイプ、おススメの作品でした。

今回はこのくらいにて感想はおしまいです。

読んでいただき、ありがとうございました。また次の記事で。

コメント

タイトルとURLをコピーしました