「ザ・レイド」(2011)
- 監督:ギャレス・エヴァンス
- 脚本:ギャレス・エヴァンス
- 製作:アリオ・サガントロ
- 音楽:マイク・シノダ、ジョセフ・トラパニーズ
- 撮影:マット・フラネリー
- 編集:ギャレス・エヴァンス
- 出演:イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、ジョー・タスリム、ドニー・アラムシャー、レイ・サヘタピー、ピエール・グルノ 他
ギャレス・エヴァンス監督が送り出した、インドネシアの格闘アクション映画。
とにかくその戦闘技術シラットを駆使したアクション、カメラ、世界観がカルト人気を博し、インドネシア映画の地位を高め世界に躍り出た作品ですね。
監督はイギリス出身ですが、早くにインドネシアを拠点にし、今作の主演でもあるイコ・ウワイス主演で「ザ・タイガーキッド 〜旅立ちの鉄拳〜」を撮っています。
今でこそ「スター・ウォーズ フォースの覚醒」や「ジョン・ウィック パラベラム」に出演し印象を残すヤヤン・ルヒアンも今作で戦闘狂を演じています。
日本でもかなり人気を博して、ここから続編の「ザ・レイド GOKUDO」が公開されています。
SWAT部隊に所属するラマ。自宅でも鍛錬を積み、愛する妻に送られ、彼は深刻な面持ちで任務に就く。
今回の任務は、麻薬王の支配する高層マンションへのSWAT部隊単身での強制捜査。
部隊は着実に住人を制圧し内部へと進んでいくのだが、ついに見張りに通報されてしまい、館内放送が鳴り響く。
それはSWAT部隊に懸賞金をかけ、殺したものは家賃や麻薬の支給を優遇するものだった。
かくして各階、各部屋の住人たちが部隊抹殺のために襲い掛かる地獄が始まった。
インドネシアの映画ってもう全然見たことなくて、当時本当に新鮮な気持ちで観ました。
そこでもちろんそのアクションのクールさにも驚かされたわけですが、私がこの作品で一番感動したのは、映画を作るということに関して、秀でた一点を真っ直ぐに伸ばし、世界を相手に戦うその心意気でした。
もちろん今作はハリウッドで製作される大作アクション映画に比べればこじんまりとしていますし、豪華なゲスト出演もなければ、万人受けジャンルなんかでもありません。
ただ、自分たちの持てる味、まさに武器としてのアクションと技術を使い、創意工夫しながら最高のエンタメを作っています。
頭を使っての工夫という点では、ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター」を思い出しました。
舞台設定は高層ビルですが、おそらく使っている現場は少ないと思います。
それでも廊下のちょっとした飾りや通路の表現を変えることで、無間地獄的に広がるビル内をみて、飽きの来ないように様々な舞台設定を用意します。
俳優のアクションを追うカメラワークも、追従型など、狭い空間ながらにカットを割らない場面があったり。
狭いながら上下には空間がある位置関係を利用しての仕掛けなども楽しめます。存分にこの高層ビルを使ってくれるんです。
アクションの部分ではスピードや激しさ含めて圧巻です。
役者人がそれぞれ自分で動きを身に着けていますし、流れるような技は実践的であり、映画向けの美しさよりも人体破壊の効果や相手を不能にする即効性を突き詰めたもので、無骨。
ガンファイア他CGもかなり多用されているのですが、人体欠損や流血はCGでも、フィジカルの打撃や締め、投げなどはしっかりと重みを持っており素晴らしい出来栄えになっています。
ドラマ性としては正直そこまで深くはないのですが、濃いキャラが多いので差別化はしっかりできていますし、何しろ住人みんな怖い。
ゾンビ映画的な密閉地獄の感覚もありましたね。
シンプルな構造の中で、自分たちの持っているもの、舞台、撮影、小道具やアクションを全て最大限に生かし切って、世界に通じるレベルの突出を見せるその心意気が素晴らしい。
インドネシアに個人的な関係はないのですが、日本という一つのアジアの中の国に生きるものとして、この作品が誇らしくも思います。
資本や人材ではなく、創意工夫こそが、創作のすべてであると声高に宣言するような素敵なアクション映画です。
もし見たことがなければ、一度鑑賞をおすすめします。
今回は短いですが、感想は以上。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それではまた次の記事で。
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