「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(2018)
作品解説
- 監督:ロン・ハワード
- 脚本:ローレンス・カスダン、ジョナサン・カスダン
- 製作:キャスリーン・ケネディ、アリソン・シェイマー、サイモン・エマニュエル
- 製作総指揮:ローレンス・カスダン、ジェイソン・マクガトリン、クリストファー・ミラー、フィル・ロード
- 音楽:ジョン・パウエル、ジョン・ウィリアムズ
- 撮影:ブラッドフォード・ヤング
- 編集:ピエトロ・スカリア
- 出演:オールデン・エアエンライク、エミリア・クラーク、ウディ・ハレルソン、ドナルド・グローヴァー、ポール・ベタニー 他
1977年公開の、人類の映画史においても最も有名な作品のひとつである「スター・ウォーズ」。そこでは数々の愛されるキャラクターが生まれ、今に至るまで人気が続いています。
そして今回、特に人気の高いハン・ソロのスピンオフが誕生。彼の、「スター・ウォーズ」以前の過去、相棒のチューバッカとの出会いが描かれます。
監督はちょっと交代劇もありましたが、ロン・ハワード。
そしてかつてハリソン・フォードが演じたハン・ソロ役には、オールデン・エアレンライクが抜擢されました。彼は「ヘイル・シーザー!」に出ていたのは覚えていますね。
その他、「ゲーム・オブ・スローンズ」で人気のエミリア・クラーク、また「猿の惑星:聖戦紀」などのウディ・ハレルソン、「アベンジャーズ」ではヴィジョンでお馴染みのポール・ベタニーが出演。さらに若きランド・カルリジアンとして、ドナルド・グローバーも出ています。
公開日には行けなかったのですが、翌日土曜日に朝一で観てきました。
スター・ウォーズシリーズとあってやはり混んでいましたね。
~あらすじ~
銀河帝国の支配と、その元で派閥を争うギャングが台頭し、様々な惑星で治安が悪化、紛争や抗争が絶えなかった。
惑星コレリアも例に漏れず、貧しい者を保護する代わりに、奴隷のように働かされる。その中に一人、いつかパイロットになって自由に銀河を飛び回りたいとおもう若者がいた。
ソロという青年は、恋人であるキーラと共に役者を買収し惑星外へ逃れようとするも、すんでのところでキーラがギャングに捕まってしまう。
引き離される間際に、ソロは誓った。
「必ずパイロットになり、君を迎えにくる。」
感想レビュー/考察
北米での興業の失敗とか、批評面のあまり良いとは言えない感じとか。ここまで大きなフランチャイズですと、そういった面を無視はしにくいものです。
外部的な要素から言えば、とても良くできているんじゃないかと思います。
クリストファー・ミラー&フィル・ロード監督が降りてしまってから、ロン・ハワード監督が半分以上は撮り直したということで、そりゃ予算は倍近くなりますから、回収は大変です。
しかし、作品自体は、言われなければ、いや言われても撮り直しがあったとは思えなくまとまっています。
変に勘ぐったりするよりも、素直に楽しんでみるサマームービーって感じですね。
まあ素直すぎるのが残念な点でもありますけども。それは後ほど。
また今作ではある種の論争にもなっていた、ハン・ソロ演じる主演問題ですが、オールデン・エアレンライクは確かにぱっとみるとハリソン・フォードと似つかないですし、声の面でもそもそも似せようとしていない気がしました。
しかし、総合的に見れば、若く無鉄砲なそれでいてどこか寂しげで哀れでもある青年を良く表現していると思います。
劇中でも大事な要素である”笑顔”に、ハン・ソロを感じました。
まあそれでも私が彼に微妙な印象が残ってしまったのは、内面と外面でのズレと言うようなものを感じたからですかね。
やはり目指すべきところを持っていながら、でも若いころと言う決まりもあり・・・
その点、チャイルディッユ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーが演じていたランドは、自由気ままな感じでリラックスしていて、スピンオフのランドとして本家から距離をとっているようで良かったです。
実際役者たちはみんな好演をしていますけども、チームとしてはそれぞれ、特にウディ・ハレルソンたちが薄かったですね。
チームものとしてやるのかと思ったのに、初仕事初対面でお別れされますから、正直感動的なシーンですよと言われても、こっちからすれば十数分前初めて会ったんで・・・まあ。と言う感じで、死別か観てても思い入れは湧きません。
「ローグ・ワン」(2016)でも同じように感じたのですけども、なんでしょうかね、親しむ前に死んでしまって、それが一応はとても悲しいシーンとして流れるときのあの感覚は。
そういった点においても、そして全体においても、決まった型を使いまわし過ぎてしまっているのが、その素直さゆえの問題点であると思いました。
ロン・ハワード監督はこのタイトスケジュールの中で、クルーをまとめ上げ、みんなで映画を完成させたのだなとは感心しますけども、ハン・ソロのスピンオフを完成させるという事に終始してしまったため、安全な道を通って落ち着いた印象があるのです。
ハン・ソロを主役にするから、やはりアウトロー、犯罪集団の中での騙し合いの映画になりますし、もちろん西部劇になるはずです。
そしてそこには、チューバッカとの出会いを入れ込んで、彼の恋愛もとか、サイコロのアイテムやファルコン号などを登場させる必要があるのです。
そしてそれらすべてを監督はしっかりと入れているのですが、まあ入っているだけでしかなく、だからハン・ソロの主演映画として必要なことはやっているものの、それ以上でも以下でもないのです。
どこが悪いとも言えないのですが、輝く瞬間を持っていない、持たせる余裕がなかった?のが残念でなりません。
そしてそこから、だったらこの作品作らなくてよかったのに。という想いが強くなりました。
スピンオフの危ない部分が、私にとっては最悪の形で提示されてしまったのです。
それは想像を奪ったこと。
子どもの頃、それこそプリクエルがやってもハンは登場せず、彼の過去は未知数でした。
チューイとどうやって出会ったのかな?ランドとの腐れ縁って?ケッセルランってなんだろう、あと12パーセクはどれほどすごいものなのか。
ジャバのために仕事をするのはどういうきっかけなんだろう?レイアの前に恋人はいたのかな?
そいいったことを観客に自由に想像させ、なんなら自らの創造意欲を刺激し、そこから人それぞれの数だけの広がりをみせて、ハン・ソロとうキャラクターは宇宙規模の広さを持っていたと思います。
みんながそれぞれ望む、ヒーローでありアウトローになっていたはずです。
ですが、それも今作で消えましたね。これが正解であり、これだけなのです。
一番残念なのは、子供のころに夢見、想像し遊んだハンの冒険が無くなってしまったことです。今作は悪くはないですけども、これが一番求めていたハン・ソロの過去だ!と絶賛できるようなものでもありませんでした。
過去とかスピンオフとかの危険性がとても強く感じられる作品でしたね。
今回の感想としてはこのくらいで。
けっこう個人的なことも言ってしまいましたが、普通の娯楽作としては良いので、敷居を感じる必要はなく、気楽に観に行ってください。
ただ、今作が必要だったかと言えば、答えはNOです。
それでは。
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