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「ネオン・デーモン」”The Neon Demon”(2016)

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映画レビュー
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「ネオン・デーモン」(2016)

  • 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
  • 原案:ニコラス・ウィンディング・レフン
  • 脚本:ニコラス・ウィンディング・レフン、メアリー・ロース、ポリー・ステナム
  • 製作:ニコラス・ウィンディング・レフン、レネ・ボーグラム、シドニー・ドゥマス、ヴィンセント・マラヴァル
  • 音楽:クリフ・マルティネス
  • 撮影:ナターシャ・ブライエ
  • 編集:マシュー・ニューマン
  • プロダクション・デザイン:エリオット・ホステター
  • セット:ジョナサン・アミコ、アダム・ウィリス
  • 衣装:エリン・ベナチ
  • 出演:エル・ファニング、ジェナ・マローン、アビー・リー、ベラ・ヒースコート、クリスティーナ・ヘンドリクス、キアヌ・リーブス 他

ニコラス・ウィンディング・レフン(NWR)監督の最新作。日本では「ドライヴ」(2011)で一躍有名になりましたが、前作に当たる「オンリーゴッド」(2013)では本領発揮で世界を困惑?させました。

主演はエル・ファニング。またジェナ・マローン、アビー・リー、ベラ・ヒースコートらも出演しています。

今作もカンヌで上映後、喝采とブーイングを同時に受け、映画館では帰ってしまう人とカルト的に心酔する人が。私は今作に関しては、ドハマりしました。ええ、最高です。

これ観て何がいいの?っていわれれば、気持ちはわからんでもないです。でも個人的にはすごく好き。

ロサンゼルスのモデル業界。

田舎から単身移ってきたジェシーは、ネットで知りあったカメラマンのディーンと、プロモーションのための撮影をしていた。

彼女は楽屋でメイクアップアーティストのルビーと出会い、彼女の紹介で他のモデルとも知り合う。

他のモデルたちとは何かが違う。決定的な何かを持ち合わせ、みるみる成長し階段を駆け上がるジェシー。しかし、この世界は人を狂わせていく。

オープニングからがっちりと画を決めてきましたね。赤と青のライト。

もうこれでもかと本作中には使われているんですが、後々この色味の良さも悪さも効いてくるのかと。

自然光をほぼ使わずに強烈なライトで照らしだされる美しい画面。

長いショットやスローモーション、とにかく静かでゆったりとしたカットが多いのですが、音楽の良さ含めずっと見ていられるような感覚。

ミュージックビデオ的な部分も見受けられますね。

撮影はナターシャ・ブライエ。

女性の世界は女性に撮ってもらうという事ですね。やはり目線は男性とは異なるものになるのでしょうかね。

彼女のアイディアらしいレンズフレアのような、何か光の屈折が画面にはかなり多くのシーンで映りこんでいます。それはレフン監督のアングルを少し変えた現実、すぐそばにあるファンタジーというような世界を見事に作り上げている気がします。

主演のエル・ファニング。

まあ大人になりましたね。いや、まだまだあどけなさもあるからこそいいのだと思います。ジェシーの役どころとして、生命力というものが感じられます。

モデル業界の人の人間らしさの無さ、モデルたちのマネキンやロボットのような命の無さ。そこに彼女だけは何か生命力を感じます。素朴な美しさ、ナチュラルなもの。飾り、作り上げないで存在する、絶対的なものを持っている感覚です。

彼女ははじめ、言ってしまえば田舎娘な衣装を着ているんですが。その変貌ぶりにも注目。エル・ファニングは純粋さと妖艶さ両方をうまく出していると思いました。

「才能は無いけど、私はかわいい。美しいことの何がいけないの?」

中盤のランウェイ。あの三角形が絶対的な存在を表すとして、ジェシーはそこを通して完全に変身したんだと思います。

神話がそのままジェシーに置き換えられていますしね。そしてつまりは、ナルキッソスと同じく、先には死が待ち受けるような赤が印象的。

鏡にキスするということで彼女にあまりなかった”性”を感じ始めますが、それ以上に自分自身にキスをするというナルシシズムがすさまじい。ここで初めてジェシーは、自分の美しさを愛するようになったのか・・・

いや、それ以上に、彼女には素質があったと思えます。

まあ彼女はイヤな女になったように見えて、最初から結構イヤな女であるのです。

ディーンと初めて丘の上に上がったとき、「自分のルックスは知ってる」と言います。ごく自然に、自分が美しいことを認知していることを漏らすのです。そういう点では、ナルシシズムに関してよりオープンになっただけであるということに思えました。

この世界では美しさが最も高価な通貨、圧倒的な力。それを持ってるなら使わない方がバカバカしい。

そんなジェシーを囲むのが、3人の女性。ルビー、ジジ、サラです。

モデルとしてのプライド、嫉妬などがもうすさまじい。

アビー・リーはマッドマックスFRの時から超足長モデルですが、やはりモデル体型すぎると個人的に思っていたので、ここでの役回りは納得。彼女は美しいですが、生命力という点では少し弱め。

またベラ・ヒースコートの下りは酷。美しさというものが絶対的であるとしても、今の技術で作り上げることは可能です。しかしやはりそれは偽物であり、どうあがいても本物ではなく、それが枷になり続けます。

そうした中に絶対的な要素を持つジェシーが現れることで、それぞれは彼女に嫉妬し欲するようになる。

ジェナ・マローン演じるルビーは完璧な女性を待ち望んでいたのでしょう。

しかし彼女の望むジェシーはあくまで願望の結晶でありジェシー本人ではないのです。まさかの死姦に発展する場面は、思い描いた通りの欲望の成就であったんでしょうか。

オーディションでの完勝、偽りの無い美しさ、そして最終的にはジェシーは自分でメイクをしてしまう。周りの女性たちに依存することもなく、必要としなくなるという決定的瞬間でした。

ほぼ常に鏡が置かれることが多く、それによりこの美という素晴らしくも過酷なものを集中的に描き出しています。

綺麗かどうか、美しいのか醜いのか。それは他者による相対的な評価にしかよることができないもので、自分がどういう見た目なのかの定義はそこになります。

それでも唯一自分を自分でみることを可能にしてくれるのが鏡です。その破壊は自分による自分の否定という絶望的なものですよね。

前述したレンズフレア的な光、ちらちらと映り込んでいます。自然ではない光。

青や赤の光、シャッターの光、綺麗でも一瞬のもの。人口のもの。

自然の光たる日光、月。そしてディーンのくれた花。どれも失われていきます。ジェシーはどんどんとモデル業界に深く入り込み、自然の要素を消していく。色には緑や黄色は無くなっていきますね。

美しさは全てではない、唯一絶対的なものだ。

それが無くなると死んでいるも同然なこの世界で、それを得ようと欲望が爆発する。なにやら古代の言い伝えみたいな、相手の一部を取り入れ力とするようなことまでします。

確かに美しさは残酷なほどに正直です。

見た目が良いほうが良いですし、映画だってそうです。今作も素晴らしいルックを持ち魅力的である一方で、この突き詰めたビジュアルについていけず、どこか疲れてしまう点もあり、内容とオーバーラップした感覚を持ちました。

ネオン・デーモンとは・・・このモデル業界やLAの街そのものを指しているかのようですね。光輝いて綺麗だけど、作り物でしかなく、いずれは古びてしまう。

そしてその綺麗な餌を囲んで、あのヒョウのような捕食者たちが目を光らせているんです。

クリフ・マルティネスのトリップ音楽も相変わらずで、個人的にはハマッた本作。ここまで歪でエッジの効いた作品ですと、やはり好みですね。

これはダークファンタジーであると思って鑑賞を。NWRの世界観にどこまで浸れるかというところでしょうが、頭から離れず、音楽もショットもセリフもこの映画自体もずっと私を包みこんでいる状態が続いていますw

そんな感じでおしまいです。それでは~

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