「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(2017)

  • 監督:リューベン・オストルンド
  • 脚本:リューベン・オストルンド
  • 製作:エリク・ヘンメンドルフ、フィリップ・ボベール
  • 製作総指揮:トマス・エスキルソン、アグネタ・ペルマン、ダン・フリードキン、ブラッドリー・トーマス
  • 撮影:フレデリック・ウェンツェル
  • 編集:リューベン・オストルンド、ヤコプ・セカ・シュールシンガー
  • 美術:ヨセフィン・オースバリ
  • 衣装:ソフィー・クルネゴート
  • 出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト、テリー・ノタリー 他

「フレンチアルプスで起きたこと」(2014)のリューベン・オストルンド監督による、これまた辛辣なブラックユーモアのコメディ映画。

今作は70回のカンヌ国際映画祭にて最高賞のパルム・ドールを受賞。

またゴールデングローブ賞そしてアカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされました。

出演するのはデンマーク人俳優のクレス・バング、また最近は「ハンドメイズ・テイル」でゴールデングローブ賞を獲得した、エリザベス・モス。「300スリーハンドレッド」のドミニク・ウェストなど。

オストルンド監督作は前作が好きなので楽しみにしていました。GW序盤、公開後すぐに行ったからかものすごい混んでいましたね。

現代アート美術館の管理者であるクリスティアンは、次の展示として「ザ・スクエア」の企画を始めていた。

その展示は他者への思いやりを啓発するものであり、彼にとってこれは美術館の根幹となる展示であり重要なプロジェクトだった。

そのプロモーションについて考えている時、クリスティアンは道で助けを求める女性に出会う。

男に追いかけられているという彼女を助けると、なんとその2人はグルのスリであり、クリスティアンは財布と携帯電話を盗まれてしまった。

展示の企画を進める一方で、クリスティアンは盗まれたものを取り戻すためにとんでもないことを考え始める。

リューベン・オストルンド監督、まったく歪みないシニカルで意地の悪い、しかし真実の作品。

滑稽でありながらもつごく悲劇的で、今作を観る誰しにもかならず刺さってくる鋭い刃を持っていました。

笑えるのですが、実は笑いどころではなく、自分自身にも思い当たる節があるため、罪悪感に苛まれます。そんな映画です。

作品内では多くの要素をとりあげています。

貧富の差や芸術と資本主義、メディア、権力やパワハラ。

正直いうとそうした多くの要素を巧く登場させてはいるのですが、ストーリーが進むにつれていくつかの要素は消えていってしまったと思います。そこはちょっと残念でした。

今作で特に繰り返されるのは、人が助けを求めるという行為です。

そしてそれに対するリアクションが、これまた意地悪にしかし真実味をもってい描かれます。

元々は誰もが平等な権利を持ち、助け合う義務があるという正方形のアートを推し進める作品のはずが、助けを求める女性の登場で狂い始めます。

主人公はその先ずっと、目の前にある伝えたい芸術なんて放り出して、スマホと財布探ししかしませんw

その常時「助けて」状態の彼が出会うのが、これまた助けを求める人たちです。

しかし自分の事で手一杯だったら、人を助ける余裕はないものです。

何かと理由をつけてごまかしたり、見て見ぬふりをしてしまう。誰しにも経験があるものでしょう。

珍道中のような捜索の影で、確実におかしくなっていく「ザ・スクエア」のテーマと宣伝方法。

芸術があっという間に商品になり、ユーチューブ再生回数やセンセーショナルな消費物に落ちていく、本質を見失った様は、笑えますけども、あまりによくみる悔しい光景なので痛々しい。

崇高な目的と意識を持っているのは表面だけで、実際はお金や話題など下世話なものに支配されている。

最後の最後まで、スクエアなんて誰も気にしていませんし、倫理的にも最低最悪の動画が作られてしまいます。

でも、理想と現実ってこんなものでしょうし、どれだけ平和とか平等を訴えても結局はダメな私たちの姿であるので、一方的に登場人物たちを責められないというのも苦いところ。

正方形の中でのルール。

ある空間に設けられたはずの規範。その存在が危うい。

今作のなかにも、人物が正方形に収まるショットがいくつかあったと思います。俯瞰視点での階段とかですかね。

あとは、スクリーンという四角い画面ですかね。スクリーンに映る以上、映画としてのルールがあるというような。

実際あのテリー・ノタリー演じる猿人間のシーンは、あの会場内に自分達でルールを設けつつも、最後は非常に野蛮な結果を迎えるというある意味滑稽過ぎる場面でした。

自分で決めたことも守れず、綺麗な事を語るくせに、保守ばかりで他人に無関心。

これだけでも酷いですが、今作は”子供”をいれていて、私はそれが辛かったです。

こんな大人たちと社会を見ながら子供は育っていくのかと。

犯人扱いされたのに、「オレは関係ない。」「終わったことだ、しつこいぞ。」で追い帰される。人間の善意を信じて生きていけません。

マンションでどこからとも聞こえてくる、子供の泣き声。

私たちは聞こえている。でもそれを無視している。

「フレンチアルプスで起きたこと」もそうですが、大人が当事者たちだけで揉めているだけならまだいいのですが、監督はそれに付き合わされ見ている子供の存在を置きますね。

手を伸ばしきれなかった要素とかあんまり要らないかも?って部分もありましたけど、自分達を戒めつつ、これをみてどんな人間が育つかという未来への警告のような作品でした。

笑っていたけど、笑えなくなる。

これが私たち大人の素顔ですから。

そして最後に、カンヌの最高賞だとか、芸術性の高い映画だとかリベラルを装って今作を見に来る、そんな自惚れた観客へのキツメのパンチを喰らうのです。

ここまで笑ってた人間たちは私たちであり、表層的に知性や倫理を纏っているだけの猿なのです。

個人的には前作の方が好みではありますが、こちらもオススメな作品でした。

感想は以上。しかしおもしろいっちゃおもしろいですが、これがパルムドールかと思うと、正直微妙です。

でもやはり注目作ですから、今のうちに劇場へどうぞ。それでは~

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