「アビゲイル」(2024)
作品解説
- 監督:マット・ベティネッリ=オルピン、タイラー・ジレット
- 製作:ウィリアム・シェラック、ポール・ナインシュタイン、ジェームズ・バンダービルト、トリップ・ビンソン、チャド・ビレラ
- 製作総指揮:ロン・リンチ、マクダラ・ケレハー
- 脚本:スティーブン・シールズ、ガイ・ビューシック
- 撮影:アーロン・モートン
- 美術:スージー・カレン
- 衣装:グウェン・ジェファーズ
- 編集:マイケル・P・ショーバー
- 音楽:ブライアン・タイラー
- 出演:メリッサ・バレラ、ダン・スティーブンス、キャスリン・ニュートン、アリーシャ・ウィアー、ウィル・キャットレット、ケビン・デュランド、アンガス・クラウド 他
吸血鬼の少女を誘拐した犯罪グループが、恐怖に満ちた一夜を過ごす様子を描いたアクションスリラー。
監督は、2022年版「スクリーム」を手がけたマット・ベティネッリ=オルピンとタイラー・ジレット。他にもサマラ・ウィーヴィング主演の「レディ・オア・ノット」も監督していますね。
誘拐犯たちには、「美女と野獣」で知られるダン・スティーブンス、「ザ・スイッチ」のキャスリン・ニュートン、そして「イン・ザ・ハイツ」のメリッサ・バレラなど。
吸血鬼の少女アビゲイル役には、「マチルダ・ザ・ミュージカル」で注目を浴びたアリーシャ・ウィアーが抜擢されました。
設定のあほらしさとゴアコメディっぽい予告、またキャストが意外にも豪華だったので気になった作品。公開週末に早速観に行ってきました。朝一の回でしたが結構人が入っていました。
~あらすじ~
元刑事のフランク、巨漢の用心棒ピーター、天才ハッカーのサミー、元狙撃兵のリックルズ、逃走車のドライバーであるディーン、そして医師のジョーイ。
互いに面識のない6人の男女は、指示役であるランバートによって集められ、富豪の娘であるバレリーナの少女アビゲイルを誘拐するという計画を実行する。
計画は順調に進み、あとは郊外の屋敷で一晩少女を監視するだけで、大金が手に入るはずだった。
しかし、彼らが誘拐した少女の正体は、恐ろしい吸血鬼であった。監禁するつもりが逆に屋敷に閉じ込められた6人は、生き延びて脱出するため、死闘を繰り広げることになる。
感想レビュー/考察
血みどろゴアぶっ飛びコメディ
誘拐した相手が実はめちゃくちゃヤバいやつだった。
これは多くのスリラー映画における、弱者と思われたものがすごい実力の持ち主であり、一気に立場が逆転することから展開する物語。
スリラーでは「ザ・ハント」は、金持ちのクズどもが狩りのために一般人を集めたと思ったら、その中に切れ者殺戮女がいてすべてがくるってきました。
また誰でもない相手が・・・というなら「ジョン・ウィック」だってそうなるでしょう。
なので、設定的に新鮮味はないのです。仕掛けとしては、誘拐した少女が凶悪ヴァンパイアだったというモノ。相手が何者だったのかという点がポイントですが、そのあたりはすでに今作の予告で明かされているので、そこが肝ではないのです。
今作はそこからくる、おバカな誘拐グループの珍道中とやりすぎ血みどろゴア描写をポップにコメディとして楽しむのが正解だと思います。
間抜けなキャラたちと痛くないグロ表現
監督二人の過去作である「レディ・オア・ノット」の遺伝子がすごく濃く感じられます。
主人公となるのは、誘拐犯の中で唯一まともなジョーイです。彼女だけは割と観客よりの感性で物事を見てくれていて、リアクション的には正解のキャラ。
他のキャラはどこかおかしい。笑ってしまうほどにおまぬけであったり、ねじが緩んでてバカだったり。
なので、ある意味ギャグ展開な感じで、胸をめった刺しにされて流血したり、太ももにビリヤードのプールをぶっ刺されたりして悪態をつくのです。
アホなキャラが楽しませてくれる
そんなわけで怖さという点ではあまりないかもしれません。むしろダークコメディとして眺めるのが良い。
ラット・パックなんて言われている今作の登場人物もとい獲物たちですが、みんなキャラが分かりやすくて良いですね。
筋肉おバカのケビン・デュランドに、やはり曲者でクズを演じるとどことなくハマってしまうダン・スティーブンス。アホの子でもかわいいキャスリン・ニュートン。
ケビン・デュランドはずっとコミックリリーフで、いちいちズレたリアクションしてしまうし、そこにフランクが突っ込みを入れるなんてコンビ芸も。
ちなみにラット・パックは、非公式ですがアメリカの音楽グループですね。フランク・シナトラやディーン・マーティン、ジョーイ・ビショップ。今作では素性を明かさずに名前を付けるためにみんなにそれぞれの名前が振られているのです。
どこに足を入れるか迷っていたら終わってしまった
笑って過ごしていく分には楽しめます。しかし、作品自体が手を伸ばしているジャンルが多く、どこに一番の比重を置くべきか決めかねている印象です。
ダークコメディに振り切るにはホラー描写が多く、しかし肝心の強さはキャラやギャグで薄まっている。
作品の根底的なテーマには親子の愛情がありますが少し弱い。
アビゲイルの父からの愛の渇望とジョーイの息子を取り戻したい想いが繋がりとして用意されているものの、全てに軸を通すには細い。
子どもを捨てたフランクが最終的に悪役になる、怪物が増えていきバトルに展開するのは一つ前に押し出した構成で好きではあります。
ヴァンパイアが死ぬところで爆散して血溜まり肉塊になっていくのは「レディ・オア・ノット」のセルフオマージュか、監督の印かわかりませんが豪快で今後もやっていただきたい。
最後に主人公が”Fuck”をつぶやき屋敷を後にするという終わり方も同じく。
つまらなくはなくて笑ってしまうダークコメディがありますが、ホラーに関しては弱いです。バランシングも微妙だったかも。
そういうタイプと割り切って気楽に観に行くのが良いでしょう。
今回の感想はここまで。ではまた。
コメント