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「イン・ザ・ハイツ」”In The Heights”(2021)

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in-the-heights-2021-movie 映画レビュー
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「イン・ザ・ハイツ」(2021)

  • 監督:ジョン・M・チュウアンソニー・ラモス
  • 脚本:キアラ・アレグリア・ヒュデス
  • 原作:リン=マニュエル・ミランダ、キアラ・アレグリア・ヒュデス『イン・ザ・ハイツ』
  • 製作:リン・マニュエル=ミランダ、キアラ・アレグリア・ヒュデス、アンソニー・ブレグマン、マーラ・ジェイコブス、スコット・サンダース
  • 製作総指揮:デヴィッド・ニックセイ
  • 音楽:リン・マニュエル=ミランダ
  • 撮影:アリス・ブルックス
  • 編集:マイロン・カースタイン
  • 出演:アンソニー・ラモス、ジミー・スミッツ、メリッサ・バレラ、レスリー・グレイス、コーリー・ホーキンズ、オルガ・メレディス、ダフネ・ルービン=ヴェガ、リン=マニュエル・ミランダ 他

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「クレイジー・リッチ!」のジョン・M・チュウ監督が、大ヒットメーカーであるリン=マニュエル・ミランダが執筆しブロードウェーで成功を収めた舞台を映画化した作品。

ドミニカ系移民のコミュニティのあるワシントンハイツで、大停電の起こった暑い夏の数日間を通し、そこで暮らす夢見る若者たちや彼らを見守る親たちのドラマを映画きます。

主演は「ハミルトン」に出演、また映画では「アリー/スター誕生」に出ていたアンソニー・ラモス。

また女優で歌手のメリッサ・バレラ、「ストレイト・アウタ・コンプトン」でDr.Dreを演じたコーリー・ホーキンズ、グラミー賞ノミネート経験もある歌手レスリー・グレイスが出演しています。

背景として実はかなり映画化まで時間のかかった作品らしいですね。2008年頃から話はあったものの、進行着手が進まずにいたとのこと。

自分は舞台に疎いので知らないですが、「ハミルトン」の大成功は聞いていたので、そのリン=マニュエル・ミランダによるものと言えば一定のクオリティは保障されていると感じました。

劇場公開が無事に7末にあったので鑑賞。割と混んでいて客層としてもいろいろな層が来ていました。

とにかく、上映終了後にみんなが楽しそうで嬉しそうで、良い映画体験になったと思います。

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ニューヨークのマンハッタン北部、ワシントンハイツ。

ドミニカからの移民の多いこの地区で、コンビニの経営をしている青年ウスナビは、いつか成功することを夢見ながら過ごしている。

ウスナビは近所のサロンで働いているバネッサが好きだが、うまく声をかけられずにいた。

そんな様子を、友達のベニーや従弟でコンビニを手伝うソニーにからかわれる。

ウスナビはだんだんと、故郷ドミニカへ帰ることを意識していた。

ある日、ベニーの元恋人でこのワシントンハイツから唯一名門大学へ進学したニーナが街へ帰ってきた。

皆の希望と憧れであったニーナだったが、彼女はある問題を抱えていた。

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予告とかルックで見ると、なんだかラテン系ノリノリハッピーミュージカルかなと思われますし、私も原作である舞台のことを知らないためにそんなイメージを持っていました。

もちろんそのエネルギッシュさと明るさは持ち合わせていますが、扱う題材は非常に社会問題の色が強い作品です。

主としてアメリカにおける移民、2つの故郷で揺れ動く人々そしてコミュニティの変化というものを描きますが、それらは快活な音楽とダンスによって展開され、まさに流れるように語られていくため、重苦しさはなくアクセスはしやすくなっています。

加えて、完璧にではなくとも多くの観客にたいして間口が開かれている作品でもあります。

舞台をドミニカ系移民の地区ワシントンハイツとしているとしても、そこでドミニカとアメリカのいずれを居場所とするか葛藤する様は、自分の居場所を探す人全てに共感しやすいものです。

また、ロマンスも展開されますし、夢を追いかけて努力する人に向けられてもいます。

託された夢と希望に押し潰され、そんな自分を失敗作と思ってしまう人にも。

また日々一生懸命働いている人にも届きますし、親や上の世代が子どもたちへ向ける愛と彼らのための犠牲も描かれています。

自分はまあ頑張って毎日働いても税金高いよね、物価ばかり上がるよねが痛烈に刺さりましたが。

とにもかくにも、特定のコミュニティに対して敬意と愛情が向けられていながらも、すごく誰しも共感し応援しそして愛せる作品だと思うのです。

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舞台となっているワシントンハイツって、自分はマンハッタンでもハーレムより北?で、治安が悪いというイメージしかありませんでしたが、今作はその外側目線ではなくてコミュニティの中の目線なのかなと思います。

実際にこの作品では一度もこのワシントンハイツから外へ出ることが無いですね。

それはこの中の目線というものを観客にもしっかりと共有する効果があります。

そうしてこのワシントンハイツ側からみた自分たちの扱いというものをひしひしと感じさせるつくりになっています。

今作で時間軸を整理している要素である停電についてみると、マンハッタンで大停電はあり得ないので、ダウンタウンの地区を優先して移民地区に負担をかけていると感じざるを得ないです。

またミランダのコミカルなシーンとしてのかき氷の下り。

楽しく見れますが、大型チェーン店の展開によって小規模な小売りや個人商店が淘汰されていくのは、日本でも観る光景です。

ちょっと久しぶりに地元を歩くと、昔あった駄菓子屋さんがセブンイレブンになってるアレです。

ほとんどの近所の人が知り合いで、出身やルーツを共有していて。

この部分の内側の人の目線でのコミュニティはどこかノスタルジーすらあるんですが、今作の元となった舞台劇はもともとリン=マニュエル・ミランダが自分の住んでいたワシントンハイツを想いながら執筆したものだとか。

だからすごく個人的ですし、感傷的なのも理解できます。

でも先ほど述べましたように、超個人的な街への思い入れなのに、普遍的に観客と繋がってしまう魔法も秘めているというのが本当にスゴいところです。

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肝心のミュージカルの部分ですが、言わなくても良い素晴らしさです。

OPは青い海が映し出され画からしてアガるんですが、直後に自然にリズムをとるビートが刻まれ始め、ワシントンハイツの街並みが展開していく。そこからずっと音楽と歌。

実は個人的にはミュージカルは苦手なジャンルです。

でも、今作はミュージカルにありがちな、急に歌い出すことによる現実からの解離=これは嘘であるという感覚を薄めています。

台詞とドラマにミュージカルが挿入されているのではないんです。

基本ベースがミュージカル。そこにたまに台詞とドラマが入ってくる。

常にアップテンポなわけでもなく、音楽はヒップホップもあればR&Bもあり穏やかなメロディも。

それらを歌うキャストの歌唱力も凄まじいですね。

主人公ウスナビを演じるアンソニー・ラモスのラップも好きですが、交差して美しく伸びのある歌声を披露するメリッサ・バレラも良かった。

あと舞台から映画になったことでの映像的なスケールと楽しさも確保されていました。

集団でのダンスシーンは背景のストリート含めたスケール感がありますし、ベニーとニーナのロマンティックなシーンでは建物の壁面を使った動きある楽しさがあります。

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うだる暑さと停電に、地価高騰などはねのける、花火で照らすコミュニティ。

非常にパワフルでしかしすごく深いところまで社会問題も若者の夢も限界も焦りも混ぜ込んで。

こんなにも特定のコミュニティへのノスタルジーなのに、日本で生まれ育った自分もなぜか、アブエラが自分のおばあちゃんのようでとにかく愛しい。

アブエラの歌のシーン。厳しくつらい中アメリカに移り住んで、必死に生きてきた彼女のことがこれまた移り変わる背景で語られる。だから彼女がウスナビたちに向ける愛情が本当にありがたいです。

帰結としても大満足。どこかここではない場所、自分ではないだれか・・・ではなくて、今自分のいる場所を変えていこうというメッセージ。

最後に、そもそもこの作品自体が輝かしいということ。存在がです。

リン=マニュエル・ミランダが作った舞台を、ジョン・M・チュウ監督が映画化したのですが、このオールスターラテン系でハリウッド映画を撮ったことがすごいんです。

監督の「クレイジー・リッチ!」もハリウッドブロックバスター映画でアジア系がアッセンブルしたことで話題ですが、今作もその文化や社会を投影し代表する意味で貴重です。

アメリカの全人口のうち、ラテン系は17%程いるのに、ハリウッド業界での割合は5%に満たないらしく、まだまだ白人による白人のための映画になりがち。それでもこの作品はそのチャンスや間口をラテン系の人たちに大いに広げてくれました。

映画館で自分たちの映画を見れることって、本当に幸せですからね。

ということで、存在も出来も本当に美しくパワフルなミュージカル映画、是非劇場で鑑賞してください。

今回の感想はこのくらいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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