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「アメリカン・フィクション」”American Fiction”(2023)

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american-fiction-movie-2023 映画レビュー
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「アメリカン・フィクション」(2023)

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作品概要

  • 監督:コード・ジェファーソン
  • 脚本:パーシバル・エベレット
  • 監督:コード・ジェファーソン
  • 撮影:クリスティナ・ダンラップ
  • 美術:ジョナサン・グッゲンハイム
  • 衣装:ルディ・マンス
  • 編集:ヒルダ・ラスラ
  • 音楽:ローラ・カープマン
  • 出演:ジェフリー・ライト、トレイシー・エリス・ロス、スターリング・K・ブラウン、エリカ・アレクサンダー 他

人気ドラマ「ウォッチメン」や「グッド・プレイス」の脚本家として著名なコード・ジェファーソンが、パーシバル・エベレットの小説を原作に手がけた初監督作品。

黒人らしさが足りないからと、自身の小説が認められない小説家が、冗談と皮肉交じりにステレオタイプな小説を偽名で出汁ところから始まるセンセーションをシニカルに描きます。

主演は「THE BATMAN-ザ・バットマン-」「アステロイド・シティ」などのジェフリー・ライト。

またトレイシー・エリス・ロス、「ブラックパンサー」「WAVES/ウェイブス」などのスターリング・K・ブラウンらが出演しています。

この作品は、カナダのトロント国際映画祭で最高賞である観客賞を受賞し、アカデミー賞の前哨戦として高い注目を集めました。第96回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞。

評判が良くて、人種問題をシニカルに見せていくコメディというので気になっていましたが、日本では劇場公開されずに配信公開になっていました。アマプラのウォッチリストに入れたままでしたがちょうどアカデミー賞の受賞があって早速鑑賞しました。

~あらすじ~

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黒人の小説家モンクは、作品に「黒人らしさが足りない」と評され全然評価されないことに苛立ちを覚えていた。自分は黒人作家でも黒人文学科でもなく、小説家なのだと主張するも、評価されるのはいかにもなステレオタイプなアフリカン・アメリカンを描いた小説ばかり。

やけになって酒を飲みながら書いたステレオタイプな黒人小説を、イヤミのように匿名で書き出してみたところ、意外な展開に。

出版社はその小説の権利を買おうと殺到、あっという間にベストセラーとなり、正体不明の作家として名声を手に入れることになる。

しかし一方で、モンクは姉の死や母の認知症の進行、疎遠になっていた兄との関係など家庭の問題も抱え、公私ともに疲れ始めていた。

感想レビュー/考察

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ジェファーソン監督はTVシリーズで活躍し、今回は初めて長編映画監督を努めている方。私は描きたいことが実に明白で、原作を読んでいないながらメタ的な風刺劇に笑いのめり込んで観ることができました。

今回主題に挙げられているのは、”潜在的な人種差別”、”Black Exploitation”、ひいては出版業界への批判です。

フィクションの作家として奮闘する主人公モンクですが、彼の作品は理解されない。需要があるのは、刑務所やゲットー、麻薬と犯罪に溢れたステレオタイプな黒人物語だけ。

見たいものを見せるというのがエンタメの常とはいえ、これほどまで現実で「描かれてない私達」「存在を無視されている私達」と主張する割には、真実を、例えばモンクのプライベートのような家族模様を描こうとしても見もしない。

矛盾した社会と脱却どころか好んで”黒人文化”を続けようとする業界への平手打ち。

モンクは学歴もあり、家族のほとんどがドクターを持っている非常にインテリな一家の一員です。

彼自身姉の死や認知症を患い始めた母をどの施設(金額的に払えてできるだけ良い施設)に入れるべきか悩んでいる。

新しいパートナーと出会いつつ歩みに慎重で、ゲイであることから両親に理解されず疎遠になった兄とも関係を修復していく。

シニカルなサタイアの横には、人種などかかわらない身近で親しみのある家族のドラマが置かれています。

ここがあるから、ただの皮肉劇場に終わらないですし、距離感もおかしくなっていない。うわべだけ茶化したいのではないと感じます。

そしてさらに、モンクが書き出した小説に対比対象が加わることで、いかに出版社や業界の欲している黒人文化がおかしいのかが強調されることになります。

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笑えるときはほんとにおかしくて、切なかったり心温まる瞬間は真摯な時間が流れる。振り分けつつ一本にまとめているのが素晴らしい。

ジェフリー・ライトも真摯なドラマパートからコミカルにスタグを演じるところまで見事です。ゲットーで生きてきたthugのふりをしているインテリの小説家という、演技の中の演技を楽しませてくれます。

今作のコミックリリーフ的な存在であるモンクの兄を演じているスターリング・K・ブラウン。出てくるたびにめっちゃ面白いのですが、同時に彼にも父親や母親に自分自身、本当のセクシュアリティと彼が彼である存在を認めてもらえなかった悲しいドラマが置かれています。

病気で家族を失ったり、セクシュアリティに悩んだり、血の通った普通の人たちの話がありました。

執筆中の小説内の登場人物が目の前に出てきて、モンクがあれこれと書き足したり。メタ的な映像表現なんかもありますし、サタイアとして良い。

アメリカに限った話ではないのかもしれませんが、ステレオタイプからの脱却は難しいものです。あるコミュニティを代表してその声を届けようという試み自体を批判はしない。でも歪みは業界にある。

やはり黒人はギャングスタ映画が流行るし、LGBTの映画はいつまでたってもあくまでLGBTとしてしか分類されない。LGBTではなくてドラマ、LGBTではなくてロマンスなのに。。。

インテリ界隈の人ほど実は認識が凝り固まっているのでしょう。多分私自身もモンクに怒られて非難されるような、ステレオタイプをどこかで期待し楽しみ、そこから偽善を甘く受け入れてもらおうというような感情があるかもしれません。

テンポよく警戒ながらも家族の話としてまっすぐで、同時にとてもおもしろい。皮肉に満ちた興味深い作品でした。

アマプラですぐ見れますのでぜひ。今回の感想はここまで。ではまた。

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