「ハイ・ライフ」(2018)
- 監督:クレール・ドゥニ
- 脚本:クレール・ドニ、ジャン=ポル・ファルゴー、ジェフ・コックス
- 製作:アンドリュー・ローレン、D・J・グーゲンハイム
- 音楽:スチュアート・A・ステイプルズ
- 撮影:ヨリック・ル・ソー
- 編集:ギイ・ルコルヌ
- 衣装:ジュディ・シュルーズベリー
- 出演:ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、ミア・ゴス、ラース・アイディンガー、アンドレ・ベンジャミン、ジェシー・ロス 他
「パリ、18区、夜」(1997)などのクレール・ドゥニ監督が贈るSF映画。主演は「グッド・タイム」(2017)などのロバート・パティンソン。
また、「アクトレス 女たちの舞台」(2014)などのジュリエット・ビノシュ、「サスペリア」(2018)など活躍中のミア・ゴスも出演しています。
もともと2018年のNYFFでプレミアしていた時に知って、ロバート・パティンソン目当てで楽しみにしていた作品でした。
公開からは少し経ってしまっていて、朝の回だったのですが連休ということもあって結構人は入っていました。
宇宙を進む船の中、モンテは娘のウィローと共に立った二人で暮らしている。
植物を育て、水を抽出し、生命維持装置可動のため毎日地球へ報告を送る。
宇宙の闇の中を進む中で、モンテはこの船に乗ってから、そしてウィローが生まれるまでを振り返っていく。
元死刑囚の乗せられた船。全ては刑から免れるために、ディブスという科学者の実験に参加したことが始まりだった。
正直に言うと、不思議な映画でした。あと、個人的にはこの作品に横たわる意図がそこまでつかめなかったと思います。
表層部分だけ見れば、別に事実に難しいところはありません。プロットはそのまま理解できます。しかし、どこを観ても映る以上のことが語られているように思えます。
とすると、その語りを探っていく探求こそ見どころなのかもしれません。
こういったアートハウス的なSF映画にしてはあまり仰々しくない。スペースホラーというほどにファンタジックな要素はありませんが、全編を覆うエロスと同時に存在するグロが印象に残ります。
あとはスチュアート・A・ステイプルズのスコア、これも耳に残ります。
すべては生殖、リプロダクションのための旅です。
ディブスはいかにも人間的な理由から残酷な行為をし、この旅にてはまるで神のように生命を誕生させようとします。これもサキュバス、悪魔的行為を含みますが、なにより父母に肉体接触をさせずに子供を誕生させるのが印象的。
このディブスを演じるジュリエット・ビノシュのすさまじさ。言葉ではなんとも言えませんが、エログロ入り混じった魔女です。これを演技としてできてしまう彼女が恐ろしい。
彼女の実験とは、宇宙空間での人間誕生というよりも、生殖と肉体、感情の研究だったように思えます。
この船内はとにかく、色欲を刺激するようになっています。
それぞれセックスをすることはできないのですが、マスターベーションという形での性欲のはけ口が作られています。あのボックスのおぞましく、しかしあれこそ人間らしい感じ。
この子どもをつくることに留まらない生殖の形。
愛情や性欲、肉体的な快楽としてのセックスがあるのは人間だけ。
ここで問題になっているのは、単純生殖であれば不必要であろう肉体的な接触が、相手に対する感情が、性欲が、いかに人類史に影響してきたのかです。
交尾がセックスになるのはいったいどこからなのか。また、モンテは遺伝子はつながっているけれど、交尾すらなかった結果としてのウィローを愛するのか。
ブラックホールは子宮内であるかのようで、そこへ入っていく宇宙船はまるで精子。
性と生殖の関係性を、かなりシンプルかつ直接に描く作品。うまく言葉で説明はできないのですが、不快さと妖艶さがあり、個人的には異色のSFです。
もろに哲学ですよということもないトーンにまとめるドゥニ監督の手腕がすごいと思います。大事ではなくて、以外にも私たちの毎日の方に近いのかもしれません。
これは自分で観てみてどう解釈するか、そこが重要かな。興味があればぜひ劇場で観てみてください。
あまりまとまりませんが、感想としてはこのくらいです。ロバート・パティンソンもアート方面まっしぐらで今後も楽しみです。
最後までお読みいただきありがとうございました。それではまた。
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