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「マイ・プレシャス・リスト」”Carrie Pilby”(2016)

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carrie-pilby-2016-movie 映画レビュー
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「マイ・プレシャス・リスト」(2016)

  • 監督:スーザン・ジョンソン
  • 脚本:カーラ・ホールデン
  • 原作:カレン・リスナー『マイ・プレシャス・リスト』
  • 製作:スザンヌ・ファーウェル、スーザン・ジョンソン、スーザン・カートソニス、ブレント・エメリー、リサ・ウォロフスキー
  • 製作総指揮:テリー・シンプソン、エレイン・ハリス、エディス・マイヤーズ、ニック・クエステッド
  • 音楽:マイケル・ペン
  • 撮影:ゴンサーロ・アマト
  • 編集:フィリップ・J・バテール
  • 出演:ベル・パウリー、ガブリエル・バーン、ネイサン・レイン、ウィリアム・モーズリー、ヴァネッサ・ベイヤー、ジェイソン・リッター、コリン・オドナヒュー 他

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カレン・リスナーによる小説をもとに、スーザン・ジョンソン監督が映画化した作品。今作は彼女の監督デビュー作にもなります。

非常にIQが高く名門大学を出た19歳の少女が、その人付き合いの苦手さを克服しろと、セラピストに渡されたリストをめぐるコメディドラマになっています。

主演は「ミニー・ゲッツの秘密」や「メアリーの総て」などのベル・パウリーが努めています。

その他主人公の父親役にはガブリエル・バーン、セラピスト役をネイサン・レインが演じ、ウィリアム・モーズリー、ヴァネッサ・ベイヤーらが出演しています。

インディ系の映画として非常に小さく作られたそうで、今作の舞台とするクリスマス時期にたった20日ほどで撮影されたとのこと。

小規模作品でデビュー作ということもあってなのか、世界での初は(カナダのトロント映画祭かと思います)2016年でしたが、日本公開は最終的には2018年になった作品です。

当時HTCだったかで予告も観てはいたのですけど、劇場に観にはいきませんでした。

ベル・パウリーの出演作をちょっとづつ観たことと、気にはなっていたところでアマゾンプライムで観れるようになっていたので初めて鑑賞しました。

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19歳のキャリー・ピルビー。彼女は非常に高いIQを持っており、たった14歳にしてハーバード大学に入りすでに卒業していた。

しかし、卒業後に仕事をするわけでもなく、なかなか人付き合いもせずに家にいることが多い。そんな彼女を心配したイギリスにいる父は、知り合いのセラピストにキャリーとの面談を設定している。

もうすぐクリスマスというに、感謝祭にも父はアメリカに来ないことに腹が立っているキャリー。セラピストはそんな彼女に、あるリストを渡した。

”友達を作る”、”ペットを飼う”、”デートに行く”などと書かれたリスト。ひとつづつ年内にクリアしていけば、きっと幸せになれるという。

キャリーはその手の自己啓発にもうんざりだったが、仕方なくリストをクリアするために動き始める。

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映画自体がまるでタイトルキャラであるキャリー・ピルビーその人であるかのように、風変わりでおもしろいテイストを持っています。

バカなことをするとかではなくて、シニカルに振り切ってもいない、まさに主人公の性格のような奇妙さとそのズレからくる笑いです。

もともとは「バンブルビー」などのヘイリー・スタインフェルドにオファーが言っていたそうですが、スケジュールの関係で出演には至らず、今回はベル・パウリー主演になりましたが、彼女は適役だと思います。

きっとそれは塩梅の良さ、バランスをとる上手さがあると思います。

ベル・パウリーの演じるキャリーはこじらせ系とも言い切れず、または完全な変人とも言い切れません。

そして大人びた感じもあれば、それは子どもが背伸びしている姿にも映ることがあるのです。

週に17冊も本を読んだり、浮気を露呈するために個人投稿に乗っかって会いに行ったり。

ちょっと変わってるキャリーをのびのびと演じながらも、奇想天外な変人キャラクターというまで現実離れさせず、思春期青春物のような曖昧さやジレンマに落とし込んでいました。

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キャリーを描いていく上でのその心情がルックに出てきているのも良い感じです。

彼女は(まあ冬のNYCなんで当然かもですが)ニットの袖をかなり長くして着ています。手首はもちろん、その手の半分くらいまでにかぶさるほどに。それでも指先は出ていて、探ったり触れたりはしているわけです。

どれだけ身を包んでいるのか。またメイクアップについても。最後のゴールドキラキラのアイシャドウは特に心躍る素敵さがありました。

また今作は全体のトーンを撮影が非常にうまくまとめていると思います。

ゴンサーロ・アマトはどことなく寒空の多いグレーがかった現在をとらえつつも、冷え込みすぎない色調で希望を持たせますし、また回想シーンではグロウの効いた柔らかな感触を持たせており、決して単なる傷跡であるとはしません。

そして今作で一番のハイライトになっているのが、終盤のクリスマスイブのニューヨーク。通りを歩くキャリーとサイの二人をとらえる長回しワンカットですね。

実はこの部分、本当にクリスマス時期のニューヨークの街でリアルタイムに撮影したらしいのです。

作り上げていないあの街の感覚、その場の空気を吸うような多幸感は画面を通してでも十分に輝いていて美しいです。

タイミングをとらえたロケとそこで生まれている現実の幸せな、活力ある街のエネルギーを逃さずにロングカットにとらえた功績は非常に大きい。

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と、結構褒めが多めの感じですが、実は非常に満足できる作品かというとそうでもなく。

実は物足りないなと感じてしまう部分も、良いところが多い反面余計に感じてしまう作品でした。

それはそもそもの設定部分や、多すぎた気のするサブプロットについてそしてやや詰めの甘いというか、安直に感じてしまう点があることです。

まずちょっと都合よく並ぶのが母の死と初恋の大学教授の存在について。母の死に関してはそれがどこまでの影響だったかについておく掘り下げていくより、父からの話でさくっと片づけてしまった気がします。

また、大学教授とのことについては、なんか無理やりな感じも。

単純に実際の恋愛の中の理想崩壊に直面したトラウマでもいいと思うのですが、どうにも30も近い男が16歳に手を出しているという社会的・倫理的にアウトな点が前に出てきて気になってしまいました。

あとは単純に、主人公のIQの高さや天才っぷりが、その知識のひけらかしのみで終わってしまっているところでした。

どこかでその発想や解決など、頭の回転という面での賢さを見せるシーンがあっても良かったかと思います。天才というかオタクという印象でしたので。

さて、キャリー自身が大切にする「フラニーとゾーイ」そのままに、今作は若年期に感じる現実と理想のジレンマの処理を描きました。

清く正しく人々は聡明で美しい・・・ことは全然なくて、人間はバカでセックスとか金とかのことばかり考えているしょうもない生き物なのです。

キャリーは一早くからその壁にも飛び級でぶつかってしまい、だからこそもうイヤになってしまっている。それでも、ちょっと袖からのぞかせるその指先は人に触れようとはしています。

そこでもがき続けて折衝をかさねる奮闘を、ベル・パウリーの好演が見事に支えている作品です。

こんな感じで今作の感想はおしまいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた次の記事で。

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