「ドクター・ドリトル」(2020)
- 監督:スティーヴン・ギャガン
- 脚本:スティーヴン・ギャガン、ダン・グレゴール、ダグ・マント
- 原作:ヒュー・ロフティング『ドリトル先生』
- 製作:スーザン・ダウニー、ジェフ・カーシェンバウム、ジョー・ロス
- 音楽:ダニー・エルフマン
- 撮影:ギレルモ・ナヴァロ
- 編集:クレイグ・アルパート、ニック・ムーア
- 出演:ロバート・ダウニー・Jr、アントニオ・バンデラス、マイケル・シーン、ジム・ブロードベント、トム・ホランド、セレーナ・ゴメス、ジョン・シナ、クメイル・ナンジアニ、ラミ・マレック、クレイグ・ロビンソン、マリオン・コティヤール、レイフ・ファインズ、オクタヴィア・スペンサー、エマ・トンプソン、ジェシー・バックリー、ハリー・コレット、カーメル・ラニアード、レイフ・ファインズ 他
スティーヴン・ギャガン監督が、ヒュー・ロフティングによる小説「ドリトル先生」を最新のCG技術を駆使して映画化。主演は「アベンジャーズ/エンドゲーム」などのロバート・ダウニー・Jr。
またドリトル先生のジョシュになって冒険に同行する少年をハリー・コレットが演じ、その他アントニオ・バンデラスが海賊王を、ドリトルを亡き者にしようと企むマッドフライ先生役はマイケル・シーンが演じています。
そして数々の動物たちが出演していますが、その声を当てるのは・・・上記の通りにもう信じられないくらいの豪華な俳優陣の数々となっています。びっくりする圧巻のキャストですね。
ドクター・ドリトルは1920年代くらいの小説ですが、1967年に実写映画があります(視覚効果と音楽のオスカー獲得)。
そして個人的にドクター・ドリトルといえば、コンセプトだけ使った現代舞台になっているエディ・マーフィー主演の2作が印象に残っています。子どものころにTVで楽しんでいました。
今作は原作小説の舞台であるヴィクトリア朝舞台になり、時代劇ものっぽさもある作品に。
もとは2019年末に公開されるはずだったのですが、ちょうど「スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」とぶつかってしまうからということで先延ばしされました。
ただ新型コロナウイルス感染症拡大もあり、日本では2021年3月公開は延期、その後緊急事態宣言が明けた6月に公開の運びとなりました。
映画館再開時には観ようかなと思っていたのですが、芳しくない海外での評価、また当時クリード2作のリバイバルがあったのでそっち優先しました。
今回はAmazonプライムビデオでの配信にて鑑賞です。
かつて高名な医師として高い評価を受けたジョン・ドリトル。
動物と会話することができるという彼は、世界中の様々な動物たちの治療をしていたが、悲劇が襲う。
船での冒険に出た最愛あの妻が事故で帰らぬ人となったのだ。
それ以来彼は自院の門を固く閉ざし、誰も寄せ付けぬまま長い時が過ぎた。
しかしある日、猟師の子どもでありながら、動物を殺せない心優しい少年が、傷ついたリスの治療を頼み込んできたことで状況が変わる。
さらには女王陛下直々の命を受けてレディ・ローズもドリトルを訪ね、女王の病を治すため宮殿に来るように言うのだった。
驚くべき作品でした。
まずキャストの面々を見て欲しいですが、誰もが誰かであり非常に豪華なメンバーが揃っています。
正直エンドロール見ていて式典か何かかと思うほどに素晴らしい俳優陣が集まっています。
だからこそ、この面々でこれだけ酷い作品になるものかと驚きます。こんな事故を起こせるものなのか。
どこか良いセクションはなかったか探すのが大変なほどに退屈してしまった作品です。
キャラクターはどれも薄く、そのCGIのビジュアルにもなにか特筆すべき点もなく、脚本は完全にダメなレベルで混乱を招くし、一部演技もお粗末になっています。
子どもむけ、ファミリー向けの映画にしてもその幼稚さを通り越して下らないユーモアはさすがに酷く、見ていても悪ふざけしてイラつかせようとしているのかと思うほどです。
そうしたターゲットだからといって、稚拙な出来映えが許されるものではないと思います。
さて、そもそも話についていく上での脚本がガタガタ過ぎますね。
例えば同列のシーンにおいて矛盾や意味の通じない点が多い。
序盤でスタビンズはオウムに導かれてドリトルの邸宅に侵入しますが、すぐ後にどこからともなくレディ・ローズが現れていますが、ホントにどっから入ってきた?
そして悪役としてマイケル・シーンが演じているマッドフライの船での追跡シーン。
逃げられた後に「あいつはまだ生かしておかなければ」とか言いますが、直前まで大砲ぶっぱなして殺す気満々でしたよね。
全体の冒険の筋書きもなんだか意味不明ですし、なにしろ心閉ざしたとか言ってるドリトルが、わりとあっさりめに女王のために家出ていたりともうドラマ性の部分に破綻が生じるレベルで展開がいろいろとおかしいですよ。
さらに拍車をかけてしまっているのは、演者です。
声の出演は先述の通りにまったく素晴らしい面々がそろっていて、各自聞けばなんtなくわかる存在感も持っています。
ただ一番よくなかったのが主人公。ロバート・ダウニー・Jrがここまでひどいことがあるのでしょうか。
彼は今作でマイケル・シーンのようなイギリスウェールズの訛りを持っているドリトルを演じますが、その訛りがもはや訛りというかただ喋り方が変な人になっています。
あと、声を変な感じにしているのも逆効果。
それらはキャラクターに個性をもたらしているのではなくて、ただ単にこのドリトルという人物をおかしく冗談みたいなキャラクターに貶めてしまっていると感じます。
そんな彼を中心に展開されるユーモアと思われるギャグも、どれもこれも退屈でした。
騒げば面白いのかというところ疑問ですし、あとスラップスティックに振り切れてもいなくてセリフも邪魔しています。
あと個人的にあんまりだったのが、動物たちがあまりにもキャラクター化している点ですね。
もちろん小説としてはそれぞれフクロウだったりアヒルだったりに役目があって楽しいでしょうけど、これは実写映画という、CGIを使ったリアルな動物造形でそれをやられるものだから、ちぐはぐに感じます。(この点パディントンは本当にうまくやっていました)
そもそも今作、監督がスティーヴン・ギャガンってどうなんでしょうか。
この人あのソダーバーグ映画「トラフィック」の脚本家ですよ。そして監督作は「シリアナ」。
キャリアから見ても急にこんな作品を任された理由がわかりません。
もっと現代社会劇でありシリアスな裏社会とかを群像劇をもって描くような人ですよね。
適材とは思えないのですがどうして抜擢されたのか。実際にいい結果になっているとは思えませんし。
実は今作は試写を経てからの21日間の再撮影をした改良バージョンらしいのですが、試写でこれよりギャグが面白くなかったらしいのが驚きです。
いや、むしろそちらのバージョンを観てみたくもあります。
おそらく喪失からの再生とか、多種多様な種をもって、分断する国家に対して多様性を持ちながらも一つの家族になっていくテーマをぶつけたかったのだと思います。
最後に「他者を救うことが自分を救うことになる」と台詞で言ってしまうシラケ具合も酷いですが、テーマ全体に触れることすら至っていないくらい浅く思います。
個人的には大惨事になっている作品だと思いましたし、それ以外に何もありません。
興味あればオススメですが、いや、やっぱりオススメしません。
今回は非常に厳しい感想になりました。
最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。
ではまた次の記事で。
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