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「グリーンランド 地球最後の2日間」”Gleenland”(2020)

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Greenland-2020-movie-Gerard_Butler 映画レビュー
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「グリーンランド 地球最後の2日間」(2020)

  • 監督:リック・ローマン・ウォー
  • 脚本:クリス・スパーリング
  • 製作:ジェラルド・バトラー、ベイジル・イヴァニク、セバスティアン・レイボー、アラン・シーゲル
  • 製作総指揮:ニック・バウアー、アラステア・バーリンガム、ジョナサン・ファーマン、カーステン・H・W・ロレンツ、ディーパック・ナヤール、ダニエル・ロビンソン、ハロルド・ヴァン・ライアー、ジョン・ゾイス
  • 音楽:デヴィッド・バックリー
  • 撮影:ダナ・ゴンザレス
  • 編集:ガブリエル・フレミング
  • 出演:ジェラルド・バトラー、モリーナ・バッカリン、スコット・グレン、ロジャー・デール・フロイド、デヴィッド・デンマン、ホープ・デイヴィス 他

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「エンド・オブ・ステイツ」のリック・ローマン・ウォー監督が、同作でもコンビを組んでいた、ジェラルド・バトラーを主演にしたパニックディザスター映画。

地球に隕石が降り注ぎ、滅亡レベルの巨大隕石が迫るなかで、生き残るために避難シェルターを目指す家族とそのドラマを描きます。

妻役には「デッドプール」などのモリーナ・バッカリン、また息子役をロジャー・デール・フロイド、また祖父はスコット・グレンが演じています。

以前はニール・ブロムカンプ監督、クリス・エヴァンス主演での企画だったとのことですがスケジュール関連で今回のリック監督とバトラーコンビになったそうです。

実はリック・ローマン・ウォーの監督作品って見たことが無かった私ですが、今回については久しぶりのディザスター映画であることや、個人的にいつも参考にしているMark Kermode氏の論評で高評価だったことから興味がわいて観賞してきました。

ミッドタウンTOHOで観たのですがまあ箱が小さいことと緊急事態宣言を受けて一席空けでの入場もあってか、一応満員という状態でした。

海外ではこの作品、巡りめぐって結局劇場公開ではなく配信になっているそうです。

そういう意味では劇場で観れたのはラッキーかもですね。

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アメリカで高層ビル設計士として現場指揮をとっているジョン。

彼は現在、妻との関係修復に努めており、糖尿病を抱える愛する息子のことを気にかけていた。

週末のホームパーティの準備のため、ジョンは息子のネイサンを連れてスーパーマーケットへ買い出しに出かける。

町、いや世界中は今、接近中の彗星の話題で持ちきりだ。ネイサンも彗星が近づくと地上からも見えるのを楽しみにしている。

しかし、買い物の最中でジョンの携帯に”大統領警報”のメッセージと、一家が避難対象者に選ばれた旨の自動音声が流れる。

このメッセージの真偽を確かめようと急ぎ自宅へ戻るジョンは、空を大量の軍専用機が飛び、道路を戦闘車両の隊列が走るのを目撃した。

彗星の欠片が隕石となって海に落ちるらしいというニュースがTVで始まったが、隕石はフロリダ中心部を直撃し、都市は一瞬にして灰となった。

ジョンは家族を連れて、避難者が集められている空港へ急ぐのだった。

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リック・ローマン・ウォー監督の仕事は今作が初めて観たわけですが、すごく楽しかった。

今作ってつまりは70、80年代に流行り始めたディザスタームービー、大災害映画の系譜に連なる作品なのですよね。

そこで肝になる部分を抑えているからこそここまでエンターテイメントとして良いものになったのだと思います。

それは登場人物の生き死に、行く末を案じて、無事を祈ってはらはらドキドキすること。

彼らと一緒に極限状態を生き抜きつつ、彼らを気にかけ続けさせる作用が大事なんです。

そこが欠如してしまうと、どうでもいい人たちがどうでもいい状況で騒いでるだけでまったく没入感がないわけですから。

監督はこの作品の中で大局や俯瞰視点を切り捨てています。

政府高官も、特殊なエージェントも、状況を知りこの後のことや正しい選択を知っている人を出しません。

だから示される情報は、ジョンたち一家と観客の間で差異がないのです。

つまりジョンが分からないことはこちらも分からない。それこそが不安とか恐怖を煽る要素に直結します。

視点は低く、振り回されていくただの市民に固定され、混沌が人心を乱し天変地異が襲った地球をかすかな希望にかけて奔走する。

ただ父として、妻と子の安全を確保したい。家族を守りたい。

それだけ。

隕石をどうにかしようだとかいう根本解決もせず、主人公だからの特別感もなく、そして都合よく力やコネ、特殊な技術能力を持つ人物も出てきません。

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彼らを囲む演出に関しても、素晴らしい環境づくりがあります。

ほとんど常に地上におかれた視点から、観客はジョンたちと一緒に彗星と隕石を眺めるしかありません。

そして立ち上る爆炎と炎の巨大さに愕然とし、オレンジにすべてが染まった異世界のような地上で安全を求める。

メッセージの送受信ができずにイラつき電話が繋がらない不安に胸が押し潰されそうになる。

混沌と化していく周囲の人間たちにも恐怖を覚えますね。

隕石は現実場馴れした超現象ではあるものの、リアクションや恐怖と不安は現実に則しています。

東日本大震災のときに感じた家族との連絡のとれない不安さや、次にくるかもしれない恐ろしさを思い起こす、地に足のついた描写が多かったです。

またカオスの中に様々な、これまた非常に市井の人間らしい登場人物が出てきますね。

極限の中でみせる残酷さ、あきらめ、絶望、優しさ。

そして彼らが非常に一過性に登場しては流れていき、ともすればあっさりと死を迎えていく点も、全体の足場のない怖さにプラスの効果をもたらしているんです。

途中に気づいたら死んでいたあの黒人青年。割とこの後も同行するキャラかと思えば、あんなにあっさり死んでしまう。

ネイサンを誘拐してまで非難を目指した白人の夫婦。軍事基地にてボランティアをしていた司令官も、持病について聞いてくれた兵士も、スーパーマーケットで見逃してくれた青年。

彼らのほとんどは、あの後どうなったかなんて描かれません。

周囲を追っていられないほど切迫している状態に拍車をかける脚本になっています。

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ジョンは建築士です。

彼は大きなスカイスクレイパー(超高層ビル)の設計から建築をしているわけですが、彼の職業と彼の家族関係、そしてこの作品自体の地球滅亡の大災害はリンクしています。

どれも建てる、建て直すこと。

ジョンとアリソンの結婚生活は破綻していました。

ネイサンがかろうじてつなぎ止めていたその関係性はまさに滅亡の危機を迎えていたわけです。

絶妙な距離感がカギを持っているけどチャイムを鳴らすか迷うところに出ていたり、買い出しを頼むシーンでの微妙な擦れ方がリアルでした。

ジョンはこの隕石衝突のサバイバルを通して、家族の安全を手に入れることから関係性を修復していくのです。

そして皮肉にも避難シェルターで一塊となった一家が迎えるのが、地球の建て直しということ。

ディザスタームービーとしての緊張と臨場感を最大限に楽しめるものにしながらも、家族と地球の再生に向かっていく点をシンクロさせることで、プロットの統合を図る。

ジェラルド・バトラーが超筋肉マチズモで解決したりしない。これだけでも新鮮。

地上に釘付けになることで生まれるスリルと確かな演出や脚本、エンタメとしての昇華が高い水準でクリアされている素晴らしい作品でした。

ディザスタームービーも色々ありますが、驚きとドラマどちらもしっかりしていると本当に良いですね。

今回の感想は以上。

最後まで読んでいただきどうもありがとうございます。

ではまた次の記事で。

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