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「her/世界でひとつの彼女」”Her”(2013)

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映画レビュー
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「her/世界でひとつの彼女」(2013)

  • 監督:スパイク・ジョーンズ
  • 脚本:スパイク・ジョーンズ
  • 製作:ミーガン・エリソン、ヴィンセント・ランディ
  • 製作総指揮:チェルシー・バーナード、ナタリー・ファリー、ダニエル・ルピ
  • 音楽:アーケイド・ファイア
  • 撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
  • 編集:エリック・ザンブランネン、ジェフ・ブキャナン
  • 出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、スカーレット・ヨハンソン 他

2014アカデミー賞脚本賞を受賞した本作。「かいじゅうたちのいるところ」(2009)で独特の世界を作り上げたスパイク・ジョーンズの新作です。

私は「マルコビッチの穴」(1999)を観た覚えがありますね。あれも面白かったです。

近未来、離婚調停中のセオドアは手紙の代筆として働き、冴えない日々を送っていた。

ある日最新のOSを購入し、仕事の手伝いをさせるように。女性の声を持つこのOS、サマンサは信じられないほど学び、進化していく。人間的な魅力を持ち始めた”彼女”に、セオドアは恋し始める。

さて近未来が舞台の映画です。もう溢れるほどに近未来が設定されることはありますが、最近は荒廃した地球だったり、戦争後だったり色々暗いディストピアが多いですね。

そんななかこの映画は、信じられる程度に今現在の私たちの延長線に存在しそうな未来を見せてくれます。

デバイスは進化し、着ている服も食べ物も少し変わっていますが、通勤に電車に乗るし、エレベーターだって使います。

全体的にほんのりした色合いに包まれた世界は新鮮でした。

メインは「OSとの恋愛」ですが、これがなかなか興味深いものでした。

無機物、人間でないものと恋愛できるかというお話。その愛情は本物なのか?

OS、声だけの存在と恋するとは・・・変な話ですがありえなくはない気がします。現実でも恋愛ゲームなんてありますね。データと疑似恋愛するわけですが、本当に愛情を持ってる人もいます。

若干オタクっぽい気がしますが、関係自体は珍しいものではないですよね。「ブレードランナー」(1982)での主人公とレプリカントもそうですし。

奇妙に見えてまったく新しい設定ではないと思います。

問題は恋愛の先の肉体関係。人間同士であれば愛のカタチのようにセックスができますが、OSとは無理です。セオドアはそれでもOSサマンサとの愛を本物と思います。

彼らは試行錯誤しながら音声でセックスしたり、女性に協力してもらって仮の体を介してみたり。ただやっぱり肉体関係は本物を築けません。

そんなセオドアを現実逃避という元妻。彼女にとってOSサマンサとセオドアの関係はただの嘘。愛に向き合えないかわいそうな人間だと言います。

しかし一方セオドアの友人エイミーは拒否するどころか応援します。彼女もまたOSの友人がいるようです。

私はこの映画にメディアという論点を感じました。

サマンサのメディア(媒体)はOSそしてその機械です。セオドアの心は人間の体というメディアに入っています。

冒頭ではチャットセックスするシーンがありました。ネット上でセオドアは声を通じ、女性と疑似肉体関係を持つんです。これは直接でないにしろ、行為は成立しています。しかしこれは遊びの延長。本当に愛し合っているわけではない。

じゃあ何が愛の成立なのか?

私は同じくジョーンズ監督の「マルコビッチの穴」でのレズビアンの女性を思い出しました。思いを寄せる女性に現実では近づけない、だから男性の体というメディアを借りてセックスする。意識として愛し、繋がろうとしていました。

また、セオドアの仕事、手紙の代筆も意識の愛を含んでいるように思えます。

手紙もそこにある文字も、このメディアは本人のものでは無い。

セオドアが本人に代わって書いているのです。ですがそのメディアに託している気持ちは本物です。

この映画はメディアを越え、意識で愛を完成することを示唆しているように思えました。

愛する感情、意識があればどんなメディアを持っていようが繋がっていける。

そこにできる愛は本物であると考えられると思います。

いろいろ悩むんですけど、最後はあっさり観ている人を放り出しちゃうこの映画。置いてかれたような気持になりますが、なんとなく繋がりを残してくれる気がしました。

愛に向き合えないとか、何が愛かわからなくなっても大丈夫。そう思わせてくれる映画です。

書いてても訳が分からなくなりそうです笑

とりあえず思ったことはへたくそながら書きました。しかし是非観て、どう感じたか自分で考えて欲しいと思う映画です。

それでは今回はこれで。

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