「2分の1の魔法」(2020)

  • 監督:ダン・スカンロン
  • 脚本:ダン・スカンロン、ジェイソン・ヘッドリー、キース・ブーニン
  • 製作:コリ・レイ
  • 音楽:マイケル・ダナ、ジェフ・ダナ
  • 主題歌:ブランディ・カーライル『君が支えてくれた』
  • 撮影:シャロン・カラハン、アダム・ハビブ
  • 編集:キャサリン・アップル
  • 出演:トム・ホランド、クリス・プラット、オクタヴィア・スペンサー、ジュリア・ルイス=ドレイファス 他

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「トイ・ストーリー4」などのピクサーが送る魔法とファンタジーのアニメーション最新作。

科学や技術の発展で魔法の存在が消えかけたファンタジー世界で、父を復活させるために冒険に出る兄弟の物語。

弟を「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランド、兄を「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのクリス・プラットが演じています。

ピクサー作品としては「リメンバー・ミー」以来の完全オリジナル作品となり、ファンの方は楽しみにしていた方が多いのではないでしょうか。

全米公開後まもなくコロナウイルスの拡大により、初めて映画公開中に配信も行われた作品で、日本では公開そのものが延期となり、当初の3月予定から8月の公開にズレこみました。

緊急事態宣言が解除されてしばらくたったことと、ピクサー新作という一般向けのこともあり、劇場はライト層の方も多くほとんど満員に近くなっておりました。

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かつて大地には魔法が溢れていた。

しかしその習得や鍛練には時間がかかり、人々は電気などの手間のかからない技術に頼るようになり、魔法は存在すら忘れ去られる。

エルフのイアンは引っ込み思案で、なんとか新しい自分に踏み出そうとするが、上手くいかない。

そんなイアンが16歳の誕生日に、亡き父からの贈り物として魔法の杖が渡される。

杖と宝石の力で父を1日だけ蘇らせるはずが、失敗で足だけ復活してしまった。

期限までに上半身も復活させ、父との時間を過ごすため、陽気すぎる魔法オタクの兄バーリーと一緒にイアンは宝石探しの冒険へ出発する。

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「リメンバー・ミー」以来のオリジナル作品となる今作は、各所で言われているように、初期ピクサー作品の持っていた独創性や、不可思議でいて飲み込まれてしまう世界観を持っています。

ここまで「インクレディブル・ファミリー」「トイ・ストーリー4」と続編が多かったことを考えるに、まったく新たな世界を覗かせてくれるだけでワクワクドキドキです。

最終的にはこの世界を”アリ”にしてしまう力強さと、没入感は堪らないです。

お馴染みのファンタジー世界であり、魔法使いやエルフが存在するのに私たちと同じような世界で。

ゴミを漁るユニコーンや車に乗って移動するケンタウロスなど、幻想の生き物たちが自然にダラけているのは観ていておもしろい。

景観はまだまだドラゴンが大空を待っていそうな世界で、ボロいバンが走っていたり。

またその生き方が私たちのそれと近しい点は、共感したり入りやすいだけではなく、現実に対する働きかけにも効いていて、根底に置かれるテーマにも繋がっていると感じます。

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今作の主題は兄弟愛です。

その主題部分への道のりは、父の復活へ集中させる前半と中盤から、終盤になって旋回します。

しかしそれこそが、この兄弟の絆が大きな感情の波となって観客の心に響く仕組みなのかもしれません。

正直いって序盤は楽しくはあるのですが、やや情報過多というか、セッティングを続けていく機能が見え隠れするように感じました。

いずれにしてもコメディが多すぎるきらいも私にはあります。

お父さんのサイレントコメディは楽しいんですが、その他はまくしたてな台詞によるギャグが多く、ちょっとうるさく感じます。

先ほど述べた世界観についても、いろいろな種族や言い伝えなどの説明が結構長く続きます。

だからいつまでも忙しなく騒がしい印象。

この点については「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」が持っていた世界のシンプルさには及ばないかと。

しかし中盤(完全に「マッドマックス 怒りのデス・ロード」となる)以降、だいぶ整理され落ち着いた道のりは一直線に帰結へと向かっていきます。

そこはトレジャーハンターのワクワクやスリル、ドラゴンと魔法使いのファンタジックなバトルなど、アクションアドベンチャーの夢のような世界です。

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最後のまとまって良く感じ、まさに魔法のようです。

散らばって、向いている方向が違って、うまくかみ合っていない世界が、一気に一つになってすごいパワーを見せてくれます。

そこでもうズルいってくらいにそれまでの布石が押し寄せてくるわけで、感動と興奮で震えます。

父という存在が、イアンにとって何なのか。

父さんはどんな人なのか?それは誰が父さんか?につながっていきます。

全力で応援し、支え励まし、人生の道を切り開く手助けをしてくれる存在。

イアンもバーリーも、この旅を通してお互いを見つけるわけです。

個人的にはファンタジー世界へ行く、つまりこの現実を捨ててどこかへ行くのではなくて、進むべき、自分を変えるべき環境に帰ってくるのも好き。(ここもマッドマックスすぎるんですがね)

実は父としっかりお別れできなかったことが口にも出せない苦しさだったバーリー。

兄に支えられていることに気づいていなかったイアン。

この二人が”Onward”=”前に進む”べきなのは、ファンタジーの世界でではないんです。

二人は、父のいないこの世界で前に進んでいかなくちゃ。

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大切な存在は実はそばにいる。

自分の中には力がある。ただそれを使わず、存在すら忘れてしまっているだけで。

ダン・スカンロン監督は1歳でお父さんを亡くしているそうで、記憶がない点はアインににています。

監督は”Who was my father?”から着想を広げたとのことで、きっとバーリーのような存在がいたのでしょう。

自分の中の魔法を思い出させてくれる存在が。

ピクサー古典作に比べると、世界構成まで足が着かない不安定さがありますが、クライマックスへの集約が本当に素晴らしく、最後には笑顔でサムアップな作品でした。

今回の感想はこのくらいになります。

こうして大手スタジオの大作が映画館に帰ってくること自体が嬉しいです。

皆さんも是非、映画館で映画を見るという体験、文化を忘れずに。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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