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「複製された男」”Enemy”(2013)

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enemy-2013-movie 映画レビュー
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「複製された男」(2013)

  • 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
  • 脚本:ハビエル・グヨン
  • 原作:ジョゼ・サラマーゴ『複製された男』
  • 製作:ニブ・フィッチマン、M・A・ファウラ
  • 製作総指揮:フランソワ・イベルネル、キャメロン・マクラッケン、マーク・スローン、ヴィクター・ロウイ
  • 音楽:ダニー・ベンジー、ソーンダー・ジュリアーンズ
  • 撮影:ニコラ・ボルデュグ
  • 編集:マシュー・ハンナム
  • 出演:ジェイク・ギレンホール、サラ・ガドン、メラニー・ロラン、イザベラ・ロッセリーニ 他

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「灼熱の魂」「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、自分と瓜二つの人間に出会う男を描くジョゼ・サラマーゴの小説を映画化した作品。

「プリズナーズ」でも監督と組んだジェイク・ギレンホールが主演を務め、一人二役を演じています。

またそっくりな男のそれぞれのパートナーとして、メラニー・ロラン、サラ・ガドンが出演しています。

ちなみに今作の主演ははじめハビエル・バルデムにいったそうですが、本人が自分が役に合わないと断り、その後クリスチャン・ベールがやる気だったようですが、スケジュールが合わずに流れたそうです。

今作はヴィルヌーヴ監督のホーム、カナダの映画賞で色々と受賞しているようですね。

ちょうど日本公開当時にも観に行こうかとして、見逃したまま完全放置してしまっていた作品でした。

Amazonプライムビデオにて見放題作品の中に見つけたので初めて鑑賞して観ました。

原作については1ミリも知らないので、その辺のことは感想としては残せないのであしからず。

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アダム・ベルは大学の歴史の教員として働き、恋人のメアリーと夜を過ごす。

大人しく人付き合いもあまりしない彼だが、知り合いから進められた映画を観ていて、驚くべきものを目にした。

それは、自分と瓜二つの男。調べてみると彼はアンソニーという俳優で、近くに住んでいるということも分かった。

アダムはドッペルゲンガーのような自分と瓜二つのアンソニーに会ってみたくなり、彼に連絡を取った。

アンソニーには妊娠した妻がいて、初めはアダムからの連絡を冗談や嫌がらせの類と思ったが、声が本当にそっくりなことなどから彼もまたアダムに興味がわいてくる。

二人はついに対面を果たすが、事態は思わぬ方向へ転がっていく。

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ヴィルヌーヴ監督作品の中でも、非常に難解に思える作品になっているかもしれません。

というかメインのプロットについてはそのまま、ドッペルゲンガーとの遭遇とか、自分に成り代わってくる異物への怖さとかがあるので、別に意味不明な話ではないです。

しかし、最終的な突き放しのように思えるラストまでに、いろいろと散りばめてあるものを意識的に取っておく必要があるのかもしれません。

デヴィッド・リンチ的なダークさを持った今作は、現実と妄想、もしくは自意識の中の葛藤を描いています。

主人公はアダムでありアンソニーでありますから、ルックを少しも変えてはいけない中で、しっかりと二人の人物もとい人格を演じ分けたジェイク・ギレンホールが楽しめる作品であります。

同じルックといってもまあ衣装の力もありますけれど、イケイケでSっ気ある、やや妻に対して不道徳的というか自己中で酷い男であるアンソニーと、真面目で去勢された男としての(しかしメアリーとはセックス中心であることはまた意味があるようです)アダムとの演じ分け。

実際この作品は登場人物がすごく少ないです。

なので注視すべき会話や言葉、事実などにはすごく目を向けやすくは設計されていると思います。

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結論いえば、このアンソニー/アダムという一人の男の中の二つの人格、ペルソナ、本能のぶつかり合いなわけではありますが、それらをもう一つ外から女性/妻/母という像を通して見ていきます。

禁断の部屋の鍵は性欲解放のアンロックを示唆し、アダム/アンソニーは浮気をし続けたいと願う。

ただ現実では、妻の妊娠から俳優業を離れて、どんどんと母親にもなっているヘレンに囚われていきます。

彼はその自分の中の浮気願望をもう一人の自分として生み出し、まじりあった状態で話が進んでいくのです。

で、なんども現れる重要なモチーフである蜘蛛。ルイーズ・ブルジョワの彫刻のような強大な蜘蛛(六本木ヒルズにあるアレです)が街に現れたり、最後はモロにヘレンが蜘蛛に見えたり。

アダムもアンソニーも女性、もっと言えば母に抑圧されています。

何度かある母からの電話。監視。ヘレンは妊娠してさらにもう一人、母として彼を支配していくのでしょう。

そこから抜け出したくてしょうがないアダム/アンソニー。

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映画の冒頭は大学での講義。独裁者と彼らがいかに人を支配していくのかということをアダムが説いているシーンです。

それは繰り返されることで見ている人に印象付けられるものですが、女性からの支配を思わせると同時に、自分の支配=コントロールの話にも思えます。

というかこの講義の話がテーマに関係するって、「灼熱の魂」のそっくりですね。

こまごま調べたりすればもっともっとディテールが出てくるとは思うのですが、実際楽しめた作品ではありませんでした。

カフカ的な異変とかこのダークなトーンは惹きつける力を持っているのですが、男性の性欲解放とそのコントロール、それらに気づき男性を支配する女性という話自体に、あまり興味深くなかったのかもしれません。

実際のところ、自己の奥底の願望とか欲求がもう一人の自分のように・・・というテーマはもっと奥深いものがあるかもしれません。

今作は表面上に哲学的、難解な作り方をしたせいで、そのベールを取り払うこと自体が楽しみになってしまい、覆い隠されたものは大したことはない失望を感じてしまいました。

厳しく言うと雰囲気映画かなと思います。

それでも空気とトーンは十分に観ていて惹きつけてくれるものですので、機会があればご鑑賞をおすすめします。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

それではまた次の記事で。

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