「ザ・ライトハウス」(2019)

  • 監督:ロバート・エガース
  • 脚本:ロバート・エガース、マックス・エガース
  • 製作:ユーリー・ヘンレイ、ロウレンソ・サンターナ、ロドリゴ・テイシェイラ、ジェイ・ヴァン・ホイ
  • 音楽:マーク・コーヴェン
  • 撮影:ジェアリン・ブラシュケ
  • 編集:ルイーズ・フォード
  • 出演:ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー

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「ウィッチ」で才能を全世界に轟かせたロバート・エガース監督が、「TENET テネット」などのロバート・パティンソン、「永遠の門 ゴッホの見た未来」などのウィレム・デフォーを迎え描くホラー。

灯台守をすることとなった二人の男たちが、疑念や不信感、孤独に蝕まれていく様を描きます。

監督の兄弟マックス・エガースと監督が共同執筆した脚本になりますが、構想は本当にかなり前からあったらしいです。

A24製作、エガース監督新作とのことで発表時から話題。さらにカンヌでの高評価やアカデミー賞での撮影賞ノミネートもあり注目のホラー。

しかし現段階では日本公開は決まっておらず、今回はやや先に鑑賞しました。

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海に囲まれた孤島に灯台があった。

若い男が新任の灯台守としてやってくるが、相方となる上司は男に灯台には入らせず、島の雑事や機械整備しかやらせなかった。

上司の高慢な態度や仕事の制限、そこに閉鎖された島での孤独などが相まって、男は次第に悪夢に苛まれる。

そしてそれらをかき消していくように、男は上司と酒に溺れていくのだった。

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個人的に「ウィッチ」はスゴく好きなホラーであり、今作もエガース監督の手法が見事にハマりました。

ジャンプスケアを多用するのではなく、根元的な恐怖から心を垣見だし、ただただ居心地の悪さを追求していく。

じわじわとした気味の悪さと、決定的な事項がないにも関わらず、ただ確実に事態は悪い方へ向かっている不快さ。

レトロな時代設定、神話の引用や暗示。

閉鎖的な人間関係と歪み。

そして今回は”海”という巨大な存在に対する畏れ。

前作と同様に解釈に幅があり、どのように受け取ってもよいが、いずれにしても絶望的なのも巧妙です。

スーパーナチュラルなホラーととるか、サイコスリラーととるかはあるにしても、間違いなく舞台の設定、美術設計、ライティング、撮影、音響など全てが、狂気の渦が荒れ狂う舞台を強力にしています。

またパティンソン、デフォー双方が、これは彼らでしか成立しないというほどにハマり、力強い存在として記憶に刻まれるでしょう。

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アカデミー賞の撮影賞にノミネートしたのも納得の圧倒的な画作りも堪能できます。

ゴシックホラーのようなモノクロで恐ろしい海や、そこに圧倒的な存在感を持ってそびえ立つ灯台を映すジュリアン・ブラシュケの撮影。

海洋生物、特に悪魔とも呼ばれた蛸の気持ち悪い感じとか、生っぽさもよく構成されています。

今作は35mmのクラシックな正方形のアスペクト比を持っていますが、2つ大きな役割を果たしています。

1つはもちろん、この二人のおかれた状況と関係性の構築です。

真四角で狭苦しい画面は、異常に近すぎる不快さや、それ以外に行き場所の無い、ドン詰まり感を非常に強めます。

閉所恐怖症にもなりかねないほどに左右が無い画面で、二人の狂気は渦を巻いていきます。

また、もう1つ、この二人を狂わせると言っていい灯台の存在を強めることが挙げられます。

ワイドスクリーンに比べてより高さを意識させる画面は、そびえる灯台をより強力で絶対的な存在に感じさせます。

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さらにブラシュケの撮影は、光と闇の陰影も巧みに操ります。

監督の話などでライティングにも相当にこだわったことが伺えますが、光は非常に強烈です。

光は影を生み、強さが陰影をより際立たせます。

灯台の強い光が世闇と波をどす黒く染め、強いランタンの光は人物の顔や彼らの背後に大きな黒い影を作ります。

この顔に生まれる影ですが、ウィレム・デフォーの顔を存分に活かしたものになっていて、彼でなければ成立しないとも言えます。

デフォーの凹凸の強い骨格や、顔に細かく刻まれるシワ、そして立派に揃った髭。

あの海の呪いのシーンのデフォー、長回しですが一切瞬きしないでスゴイ迫力でセリフを言うんだから圧倒されます。眼球カッサカサ。

全ての要素が強い光を受け、深い影を落とす。パティンソンの背後に伸びる影は男の中の闇が現れるようです。

パティンソンはその妖しさある眼差し、逃れようとした影(殺人や自分に命令する父の存在)が、逆にこの強い光の下で膨れ上がっていく様が見事でした。

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今作はかなり過酷な撮影環境だったようで、あの豪雨や防風などは本物らしいですね。

その点音響も非常に楽しめる作品です。全ての環境音を貫くような、何か怪物の鳴き声のような腹に響いてくる霧笛。

さらにこの狭苦しい画面と不安をあおり心落ち着かせない音に加えて、肝心の時間という拠り所を奪ってくる。

二人が「俺たちはここに何日いるんだ?」というように、時間の感覚も歪んでしまいます。

見るものも信じられず、聞こえる言葉も疑わしく、疲れ果て酔いつぶれ。

見ているこちらも疲弊していきます。消耗しきった中で唯一のすがりどころが、灯台の中へ入ることになっていくのは、なんとも皮肉かつ禍々しい。

最終的にはプロメテウスの神話に落ち着くわけですが、エガース監督の作り上げる閉鎖的空間と社会、人間の崩壊ドラマは素晴らしい出来栄えです。

間違いなくホラージャンルの筆頭監督として今後も一線を走っていくでしょう。

なにやら最適なフォーマットでの上映ができない?そうで、日本公開が難しいともいわれている作品ですが、これは映画館というある種の閉鎖空間で、その撮影や音響を堪能すべきなので、なんとか劇場公開してほしいです。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の映画の感想記事で。

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