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「マッチ工場の少女」”The Match Factory Girl” aka “Tulitikkutehtaan tyttö”(1990)

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「マッチ工場の少女」(1990)

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作品解説

  • 監督:アキ・カウリスマキ
  • 製作:アキ・カウリスマキ、クラス・オロフソン、カティンカ・ファラゴ
  • 脚本:アキ・カウリスマキ
  • 撮影:ティモ・サルミネン
  • 出演:カティ・オウティネン、エリナ・サロ、エスコ・ニッカリ、ベサ・ビエリッコ 他

アキ・カウリスマキ監督による「プロレタリアート三部作」の第三作。

この映画は1990年のベルリン国際映画祭でインターフィルム賞を受賞し、翌年にはユッシ賞で監督賞、主演女優賞、助演女優賞を受賞しました。

主演は「パラダイスの夕暮れ」や「浮き雲」などカウリスマキ監督映画にもよく出ているカティ・オウティネン。

カウリスマキ監督作品がアマプラでみれたのでまとめて鑑賞。感想を残します。

~あらすじ~

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イリスは母と継父と共に過ごす冴えない独身女性。

彼女はマッチ工場で働いているが、両親は彼女の収入を当てにして働かず、家事まで彼女に押し付けている。男性との出会いもなく、地味な日々を送るイリスは、ある給料日に衝動的に派手なドレスを買う。

両親に叱責されたイリスだが、気にせずドレスを身に纏い、ディスコに出かける。そこでイリスは、一流企業に勤めるアールネという男性と出会う。彼の豪華なアパートで一夜を過ごした後、イリスは彼に惹かれる。

アールネとの関係を深めようとするイリスだが、彼の反応は冷たい。

彼女は自宅へ招き、両親にも会わせるが、アールネからはあの夜は遊びだったと厳しい言葉を受ける。

感想レビュー/考察

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アキ・カウリスマキ監督の作品はいつも独特なトーンを持っています。

演技は演技らしさもないとても静かなもので、抑揚はなく淡々としている。その様がスクリーンに映されると、どことなく滑稽にユーモアを纏ってくる。

このプロレタリアート、労働者三部作という流れの中で主人公がかなりひどい目にあっています。身を持ち崩していくという点はあれど、スタート時点からつみすぎ。

主人公を演じるのはアキ・カウリスマキ監督映画常連のカティ・オウティネン。彼女の決して美人でもかわいいタイプでもない絶妙な感じが素晴らしく世界観にハマっています。

ただ一人の若い女性として、男性を求めるし自由も欲しい。ごく普通の、という雰囲気がしっかりと感じられて良い。変な華やかさとかが出てしまう俳優よりもピッタリだと思います。

しかも華やかさを消し去るとともに、先ほど言ったような淡々とした演出の中でセリフも少ない中演技する。

主人公は物静かな女性ではありますが、カティ・オウティネンの眼差しや物言わない態度から十分に感情を知ることができます。

イリスのスタート時点からどん詰まりになっているのは観ていて辛いものがあります。

彼女は決して給与が高いとは思えないマッチ工場で、流れてくるマッチ箱を仕分け続ける。その様は彼女の日常や人生を示唆するようにも感じられます。

変わらないものがただただ繰り返される。

しかも彼女は独りで家計を支えている。何もしないで娘から給与を取り上げてしまう母、そして継父は完全なヒモクズ野郎です。イリスへ精神的にも肉体的にも虐待を加えていて、自分は働くこともしない。

せっかくのドレスも返品して恋なんて。イリスのお金で買ったのに。

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追い詰められていく彼女は外に見出した救済にまで裏切られてしまう。

セックスするだけして(避妊もせずに)、子どもができたらただ紙に「処分しろ」とだけ書き残すようなドクズ。

声もなく歩き出し、画面外から聞こえてくる車のブレーキ音と大きな音。こうした静かな演出が人物の絶望感も高めます。

これ以外にない選択をして、復讐に走っていくイリス。

ただ被害者であり続けて、さらに泣き寝入りをするという以外に撮れる選択肢としては、これ以外に何があるでしょう。

リベンジものではないため実際の復讐自体になにか面白さがあるわけではないです。

この作品はむしろ、人生において本当に不遇にあっていて声も上げられない人に声を与えているのだと思います。

紛争や明確な事件が起きているわけではない、だから注目されずそこで苦しみ続けている存在。

カウリスマキ監督はそんな人を認知し、そこにカメラを向けているのです。

味わい深く優しい作品でした。Amazonプライムビデオで観れるのでぜひ。

今回はここまでです。ではまた。

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