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「RUN/ラン」”Run”(2020)

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run-sarah-paulson-movie-2020 映画レビュー
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「RUN/ラン」(2020)

  • 監督:アニーシュ・チャガンティ
  • 脚本:アニーシュ・チャガンティ、セヴ・オハニアン
  • 製作:セヴ・オハニアン、ナタリー・カサビアン
  • 音楽:トリン・バロウデイル
  • 撮影:ヒラリー・スペラ
  • 編集:ウィル・メリック
  • 出演:キーラ・アレン、サラ・ポールソン、パット・ヒーリー 他

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「Search/サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、再び脚本も手掛けて送るホラースリラー。

病気を抱え足の不自由な娘が、彼女を献身的に介助する母の秘密を知っていく物語。

主人公になる娘役は今作が長編映画初主演になるキーラ・アレン。

そして異常なまでの娘への執着と保護を見せる母親役は、「キャロル」「オーシャンズ8」のサラ・ポールソンが演じています。

監督の前作はそのアイディアと撮り方から高い評価を受けるもので、私もお気に入りの1本です。

今作もまた小規模ではありますが、手堅い作りが評価を得ているようですね。

2020年内には公開の予定でしたが、コロナ感染症の拡大から北米ではライオンズゲートが延期の上で、最後は配給をhuluに売却、配信公開となったようです。

ただ、日本では2021年になって劇場で公開されました。

公開から1週間経ってから観に行ったのもあってか、そこまで混んでなかったです。

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ワシントン州に住むクロエは、糖尿病や不整脈などの病気を抱え、また足が麻痺により不自由なことから車椅子を使用している。

母ダイアンはクロエを懸命に介助しており、クロエは自宅で勉強に励みながらワシントン大学への入学申請の結果を心待ちにしていた。

ある日母が買い物から帰った際に、チョコレートを盗み食いしようと買い物袋を漁っていると、母の名がラベルにかかれた緑のピルを見つける。

しかし、クスリの時間になるとその緑のピルはクロエが飲む薬として渡された。

母は自分の名前のかかれたレシートが巻かれているだけだというが、クロエには納得がいかなかった。

そして別の日、クロエは自分でその緑のピルの正体を突き止めようとする。

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まずアニーシュ・チャガンティ監督の映画の良いところって、見せることですよね。

“Don’t tell, show.”

作品全体を通して台詞など使った語りや直接の説明会話が全然なくて、そこかしこに散らばる何気ない風景や事象が、着実に物語を進めています。

まさに映像で語っている。これがすごく好き。

序盤の日常すらやはり映像は多くを語っていました。

クロエは自宅学習であることや、PCは一階にしかなく基本は母の前で使用していること。

また車のドアを空けっぱなしにしたまま郵便物を先にとる母。

クロエに対する徹底的な情報制限が見てとれます。

展開に向けての主人公の紹介こみで、スキルを見せる点も良いですね。

女子高生くらいで様々な分野の勉強をしていて、自分一人ではんだごてで機械の作成、回路整備もする。

非常にスキルフルであることを見せるので、後のプロット進行に役立ちます。

初めから行動力も知識もあるクロエをしっかりと描いておくことで、スリラーとして転がり始めてからの彼女の行動に違和感が出ませんから。

ちなみに、思っていた以上にいろいろなところに小ネタのある作品です。

自動音声で流れる町の名前や、薬局のおばちゃんの名前など、そこかしこに他の映画作品やホラーへの目配せがあって個人的に楽しいところでした。

ちょっと注意して観てみてください。

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その主人公クロエが私は好きです。

クロエはホラーの主人公としての怖がりは見せてくれますが、ビビりちらして話を停滞させたり、愚かしいミスをすることもないんです。

頭が良くて、行動力もあってグイグイと物語を進めてくれるホラー映画の主人公を嫌いになるわけないじゃないですか。

今作で長編映画初出演となって、重要人物に抜擢されたキーラ・アレンですが、彼女の力あってこそのクロエだと思います。

キーラ・アレンは幼さや保護される側としての脆さを見せつつも、やはり気丈さや強さを感じる顔立ちに思います。

また彼女自身が実際に足が不自由で車椅子を使ってる俳優ですが、メジャーなスリラーでの起用も嬉しいところですね。

屋根のシーンなどはかなりの体当たり演技でした。

そしてクロエを追い詰めていく狂気の母親役であるサラ・ポールソン。

「アメリカン・ホラー・ストーリー」や「カッコーの巣の上で」のラチェッド看護師を描いたドラマ「ラチェッド」など、ホラースリラーでも力を見せている彼女が、今作でも印象強い演技を見せています。

母ダイアンの背中の傷ですが、実はダイアンの母からの虐待であり、母はダイアンが幼いときに自殺したというシーンがあったらしいですが、シーン自体はカットされました。

そこまでいれると説明的すぎるということでしょうか。

いずれにしても、登場人物は少ないですが、この二人のそれぞれの力だけで十二分に楽しませてくれています。

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ジャンプスケアもなく、残酷グロシーンもなく、正直なところ強烈に恐ろしいシーンはないです。

ただ、一過性の恐怖ではなく、持続する不安や不快感、緊張を気味の悪いほどにじわじわと展開し続けるタイプです。

それは外部の身体的な脅威が、”今”迫ってくるわけではないからです。作品は今まさにの恐怖は控えめです。

むしろ、気づいたときにはもう恐ろしいことをされていた。事実をしりそのおぞましさに震えます。

なにより、もう手遅れというのがいやらしい。

こういうところは、事実発覚ベースで進行する「Search/サーチ」同様に、演出や情報共有の巧さが存分に生かされていると感じました。

ミニマムなセッティング、手札を全て活かす手腕。ビックリに頼らずに気味悪さと怖さを出すタイプとして、素晴らしい出来と思います。

何よりキーラ・アレンは初主演としてすごく存在感がありますし、またクロエの造形はホラー映画主人公としてドストライクに好きでした。

最後のキレも含めてすごく楽しめた作品ですので、劇場でやっているうちにぜひご鑑賞ください。

今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

それではまた次の映画の感想で。

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