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「ホワイト・ノイズ」”White Noise”(2022)

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「ホワイト・ノイズ」(2022)

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作品概要

  • 監督:ノア・バームバック
  • 脚本:ノア・バームバック
  • 原作:ドン・デリーロ
  • 製作 ノア・バームバック、デヴィッド・ハイマン、ユーリ・シンガー
  • 音楽:ダニー・エルフマン
  • 撮影:ロル・クロウリー
  • 編集:マシュー・ハンナム
  • 出演:アダム・ドライバー、グレタ・ガーウィグ、ドン・チードル、ラフィー・キャシディ 他

ドン・デリーロの小説を原作に描く人間ドラマ。

化学物質の流出事故に見舞われ、死を恐れるあまり錯乱してしまった大学教授が、生き延びるため家族と共に逃走します。

監督は「マリッジ・ストーリー」などのノア・バームバック。

主演は同作で監督と組んだ、「ハウス・オブ・グッチ」などのアダム・ドライバー。

また妻役には「20センチュリー・ウーマン」、監督として「レディ・バード」などを手掛けたグレタ・ガーウィグ。

その他ドン・チードル、「聖なる鹿殺し」「ポップスター」などのラフィー・キャシディらが出演しています。

今作はNETFLIX製作作品になっており、日本では東京国際映画祭での公開と一部劇場での公開はありますが、基本的には配信での公開となっている作品です。

12月に映画館でやってはいたのですが、どうにも時間が合わず観に行けていませんでした。ちょうど年末の30日に配信公開されたので、そこで鑑賞しました。

〜あらすじ〜

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大学教授であるジャックは、妻のバベット、可愛い子どもたちと不自由なく暮らしている。

ある日、彼らの住む街の近くで化学物質を運ぶ貨物列車と、タンクローリーの衝突事故が起きた。

立ち上る黒い煙は有害な気体であるとか、様々な症状が報告されているとか、あらゆる噂となり広まっていった。

ついに当局が避難指示を出したことで街はパニックに。

ジャックも家族を連れて車に乗り込み街を出た。

しかし道中でジャックは給油のために車を降り、有害な雲とされているものから降る雨にさらされた。

避難所ではその接触のせいでジャックには死亡リスクがあるとされ、そこから彼は死の恐怖に取り憑かれていった。

感想/レビュー

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奇妙なトーンは人を選ぶ

ノア・バームバック監督の作品はだいぶ前に東京国際映画祭で「マリッジ・ストーリー」を鑑賞して以来になります。

その作品でも夫婦の夫役だったアダム・ドライバーを再び迎えていますが、そちらと比べると実に奇妙なテイストを持った作品です。

ギャグなのか。シュールとも言えるユーモアで全体を包んだようなトーンは、やや感情を共有したり入り込むのに苦労するかもしれまぜん。

人によっては登場人物とこちらの間にあるヴェールに絡まってしまい、触れることが難しいとも感じました。

不安と恐怖の直視を少し和らげる

ただ、この妙な滑稽さが、描かれているテーマへのアクセスのしやすさを保証しているとも思います。

今作が描いているのは不安と恐怖だと思います。

それはこの作品設定の時代を表しながら、同時に避け難くコロナウイルスの蔓延した現在と重なって見えます。

さらには、おそらく全人類が絶えず恐れ逃れようとしつづけてきた死への対峙に繋がっている。

それは真面目なトーンで描いたら鬱すぎるのだろうと思いますね。

あまりに絶望的でキツイのではないかと思うので、このようなややライトなトーンでまとめ上げているのかと感じます。

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情報の錯綜とそのノイズ

ジャックを取り囲む世界は情報に溢れています。それは悪い意味でです。

今回の有毒物質の話でもそうですが、あれよあれよといううちに様々な情報が広がる。

有毒だという情報、症状はコロコロと変わり伝えられ、よくソースも確認できない話が飛び交っている。

その中で息子は何の専門家でもないのに、それっぽい言葉(専門用語なのかも曖昧)をひけらかしてアイドルになっていく。

混乱の中では注目され目立つことは容易です。

コロナ禍の私たちの写し鏡

この様相を見ていると、どうしても2020年の新型コロナウイルスパンデミックとその後の世界を思い出してしまいます。

武漢の話、中国の人工ウイルスだという論理。アジア人への偏見、感染に関しての情報。

ワクチンが出ればその専門的な言葉に惑わされ、効くのか効かないのかについてもいろいろな情報が飛び交う。

私たちが経験し、経験し続けている様相をそのまま描いているように見えるのです。

観客という引いた視点を持っているからこそ、ジャックや彼らの周囲の人間たちのことを滑稽だととらえることができますが、その特等席は現実には存在しません。

なので痛いほどこの滑稽な人物たちを自分自身に重ねることができます。

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そこからこの話はさらに、死の恐怖を植え付けられた人間を描きます。

映画の序盤、すでに死に囚われており安定を外部に求めていた妻バベット。

その一方であまり関心もなく興味は今日の夜ご飯であったジャック。しかし不確かさに巻き込まれてジャックは死を意識する。

死亡リスクがあっていつ死んでしまうのか分からない。明日かもしれないし70歳になるかも。検査を定期的にうけておこう・・・

死とは直視しがたいが、そばに置き生きていこう

いや、これは普通のこと。

ジャックはアホみたいに真剣に悩みますが、いつ死ぬか分からないというのは誰しもに付きまとい、ただ直視していないだけの事実なのです。

ジャックだけが死に囚われている?違いますよね。

その条件は誰にでも当てはまります。

誰しも死を考えれば、それこそジャックの大学での話題のように虚無に囚われる。

皆それを考えたくないのですよ。だからむしろ、変な情報の奔流に身を任せて右往左往している方が楽。

”ホワイト・ノイズ”といえば、広範囲において同程度の強さを持つ音の分類ですけど、雑音でありながらも一種のリラックス効果とか、満遍なく広がる雑音ゆえに無音よりも効果的なことがあるものです。

今作のタイトルとして、死のノイズに対して、滑稽でもああだこうだという雑音が必要だというような意味もあるのでしょうか。

独特なトーンが少し浮足立っても思いますが、シュールな視点から死について意識するコメディとして楽しむことができました。

ネトフリでの配信メイン作品ですが、加入されている方で興味があればぜひ。

今回は以上。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ではまた。

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