「ひつじのショーン UFOフィーバー!」
- 監督:リチャード・スターザック、ウィル・フェラン
- 脚本:ジョン・ブラウン、マーク・バートン
- 原案:ニック・パーク
- 製作:アードマン・アニメーション
- 製作総指揮:オリビエ・クールソン
- 音楽:トム・ハウ
- 撮影:チャールズ・コッピング
- 編集:シム・エヴァン・ジョーンズ
- 美術:マット・サンダース、リチャード・エドマンド
- 出演:ジャスティン・フレッチャー、ジョン・スパークス、アマリラ・ビターレ 他
「ウォレスとグルミット」シリーズのアードマンスタジオが送る、「ひつじのショーン ~バック・トゥ・ザ・ホーム~」に続く長編映画の第2作品目。
ショーンたちの暮らす農場に、なんとエイリアンがやってくる、アドベンチャー作品になっています。
監督はリチャード・フェランとウィル・ベッカーのコンビ。
フェラン監督は「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」やライカスタジオの「パラノーマン ブライス・ホローの謎」でアニメーション部門を、そしてベッカー監督は前作の「バック・トゥ・ザ・ホーム」や「アーリーマン」でアニメーション部門を担当。
二人で監督デビューという形になりました。
ウォレスとグルミット、そしてTVシリーズのひつじのショーンも好きで、前作もすごく気に入っていたので、長編第2作目は楽しみにしていました。
朝早い回でしたが、親子連れやカップルもいて劇場は結構にぎわっていました。
仲間たちと色々な遊びをして過ごすひつじのショーン。
口うるさい犬のビッツァーにうんざりしながら、何かおもしろいことはないかと牧場で暮らしていた。
そんなあるとき、この田舎町の外れに、何とUFOが落ちてくる。
迷子のエイリアンはショーンたちの牧場へたどり着き、ひつじたちの友達として迎えられた。
ショーンはこのエイリアンが両親と離れて迷子になっていると知り、なんとか故郷へ返してあげようと、UFOの墜落地へ向かって出発。
その一方で、エイリアンの目撃情報により牧場主はテーマパークで一儲けを考え、そして政府組織がエイリアン捕獲のために動いていた。
ひつじのショーンが大好きなのでひいき目かつ身勝手に言います。
かわいい。好き。
1時間30分くらいの癒しセラピーで、ほかほか幸せな気分になること間違いなし。
ユーモアの聞かせ具合もスラップスティックな笑いの部分も、うっとおしさなんて微塵もなくただにこやかに観ていられます。
正直言って、いまアニメーション部門においてアードマンと聞くだけで安心のクオリティが約束されていると思います。
クレイアニメというメディアもいろいろちりばめられているネタも、すべてに愛を感じます。
まず、アニメーションの技術はさすがといったところ。
キャラクターの動きの滑らかさやディテールの濃縮っぷりも素晴らしいです。
さらに今回は縦横無尽のアクションがあったり、透過処理という視覚的驚きやライティング処理の楽しさも見せてくれます。
とりわけ私が今作で気に入ったのは、寄り添うことの大切さや、このクレイアニメ、ひいては映画というメディアが持つ力を讃えている点です。
まず共感するという点ですが、ルーラに対するショーンたちの態度ですよね。
困っていれば面倒をみてあげる。
あれだけルールにうるさいキャラで騒いでいたビッツァーが、UFO墜落後にまずしたこと。
この状況に慌てるとかふて腐れるとかでなく、そっとルーラの隣に座り、大事にしていたぬいぐるみを差し出す。
懐が深く思いやりあるこの犬から多くを学ぶことができます。
結局一度も言語による意思疏通はしません。
ボディランゲージ、ルーラが見せてくれるビジョン、まさにアクションとビジュアルが言葉になり話が進む。
これこそが映画という言語そのものです。
異国の者(エイリアン)と言葉を交わせなくても、身振り手振りにイメージで状況を伝える。
それによってショーンやビッツァーはエイリアンと仲良くなれたのです。なんなら広い宇宙へ行けた。
「ひつじのショーン」はサイレント映画といっていい作品です。
もちろん音楽や効果音、鳴き声はありますが、文化に寄った言葉はないんです。
誰しもが理解し共有できる、口語ではない言語。
それが映画の魅力。
今作はユニバーサルランゲージとしての映画を話にシンクロさせながら他者を理解することの大切さを説いてしまう見事さ。
そうして他の人を理解しようとすれば、宇宙にだって行けるんです。
暖かな質感やレベルの高いアニメ技術はもちろん、根元的にどの年代、どの文化、国であろうと楽しめることの素晴らしさを体験できる作品でした。
シンプルに子どもも大人も誰もがが楽しめる映画って難しいですから、本当に見事な作品。
是非劇場でご鑑賞ください。
今回の感想はこのくらいでおしまいです。
ではまた。
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