2020年映画ランキングベスト10 My 10 Best Films of 2020
毎年恒例の映画年間ベスト選抜。
今年はさすがに例年と様相が異なります。今まで生きてきて、こんなにも映画が危機的な状況になりまた大きくそのあり方を変えていった年はありませんでした。
公開の延期、映画館の閉鎖、配信への切り替え。
これらによって、劇場鑑賞数は今年は80本くらいになりました。例年は110本程となっていた私としては結構減っていますが、その分配信での鑑賞はかなり増えました。
今年の締めくくりとして、劇場公開された中で劇場で観た作品の中から個人的にすごく好きになった10作品をランキング形式にてご紹介します。
- 燃ゆる女の肖像
- ワンダーウーマン1984
- ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密
- ワイルド・ローズ
- チャーリーズ・エンジェル
- ロニートとエスティ 彼女たちの選択
- 透明人間
- 彼らは生きていた
- ルース・エドガー
- エマ、愛の罠
という結果になりました。
全体に改めて並べると、どことなく女性たちの活躍する作品が多くなりました。
様々なあり方や描かれかたこそされていますが、その多様なあり方とそれにぶつかっていく社会性が多く観られたと思います。
第1位「燃ゆる女の肖像」
監督:セリーヌ・シアマ
セリーヌ・シアマ監督の「燃ゆる女の肖像」は実は劇場鑑賞前に海外版ソフトを輸入して鑑賞していましたが、そこで心奪われてしまいました。
女性映画であることもその大胆さもありますが、やはり限られた日々での愛のあまりの切なさと美しさや、見る見られるの関係性、別れを嚙みしめる瞬間などとにかく好きな作品。
劇場でも2回鑑賞し、間違いなく1番好きな作品だと確信しました。
第2位「ワンダーウーマン1984」
監督:パティ・ジェンキンス
正直2位と3位はかなり揺れましたが、最終的にもうワンダーウーマンが好きだという理由でこちら2位に。
前作ほどの輝きとかフレッシュさはないかもしれませんが、明るくて真っ直ぐでおとぎ話としてのヒーロー映画がとにかく大好きです。
それに、悪役側も良いんです。ペドロ・パスカルもクリステン・ウィグもなくてはならない存在です。
スティーブとの別れからの全力疾走と飛翔の涙で前が見えないシーンも、アリスタへの愛を選択し真実を受け入れていくマックスも愛おしい。
第3位「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」
監督:ライアン・ジョンソン
こういう作品があるから、映画を観続ける。そう思わせてくれて、再確認させてくれる作品がありますよね。これが今年のそれ。
古風な使い古されたミステリーのくせに、現代でこそ炸裂するテーマで、そして何にしてもミステリーというジャンルの楽しさを満喫できる。
全く正しいあり方での伏線の使い方からして他の作品とは一線を画す映画になっています。
第4位「ワイルド・ローズ」
監督:トム・ハーパー
これがベスト3から漏れているのも驚く、すさまじく好きな作品。もう1位でもいい。
とにかく、ジェシー・バックリーに惚れちゃう1年でした。彼女の魅力には抗えません。
チャーム、演技の素敵さ、そして何にしても歌唱力。全てが揃ったのがこの作品でした。
夢追い人の物語としてとにかく定型を避け続け、それでいて本当に真摯で真正面からぶつかった結末へ向かっていく。透き通るような嘘の無さに心打たれます。
ローズリンと母、スザンナから女性の友情や母という役割なども見える女性映画でもあると思います。素晴らしかった。
第5位「チャーリーズ・エンジェル」
監督:エリザベス・バンクス
賛否分かれている新生エンジェルズですけれど私は断然肯定します。
3人のセンターもケミストリーですし、ファッションの楽しさもあったり、ジョナサン・タッカー演じる悪役暗殺者も最高。
これもまた女性映画でありますが、勝手に敷かれていた女性映画、女性主人公のアクション映画の枠を全く無視して、好きに自分らしく輝く。
今や世界中にエンジェルがいて、それは誰でもなれるという語りも本当に素晴らしいと思います。
第6位「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」
監督:セバスチャン・レリオ
もうやっとこさの日本公開で、初めて観た2018年からどれほど劇場公開を待ったか。これまでにもベスト級と残してきたぶん、今年ベストに入るか分からなかったですが、劇場鑑賞でハッキリとベストに入れたいと思った作品。
待っても、これは映画館で観れて本当に良かったと思いました。
抑圧される環境下での許されない愛。ある関係がある関係を壊ししまうのですが、しかし登場人物たちすべてを赦す。
人という存在は唯一神に抗うことができる。選択し、自由なのです。
第7位「透明人間」
監督:リー・ワネル
さて、「アップグレード」を監督したリー・ワネル監督が大抜擢かつダークユニバースぶっ壊し完了のこちらが第7位に。
とにかくおもしろかったです。映画館で観てて緊張しっぱなしでしたし、アイテムの使い方とか見せ方も全部おもしろい。
そして、DV、暴力をこの見えない存在というSFモンスターに投影して見せ切った手腕に脱帽です。
いないのにいるとしか思えない、その強迫観念や精神的に拘束しガス灯効果で人を追い詰める様までもが透明人間との戦いに組み込まれる。
隙が無く秀逸な作品で、本当に良かったです。
第8位「彼らは生きていた」
監督:ピーター・ジャクソン
ドキュメンタリー作品がここにランクイン。この映画は、映画というものの意味を思い起こしてくれました。
そして、現代の映像技術、その修復の技巧の素晴らしさが生きた作品でもあります。
残すべき姿。第一次世界大戦の臨場感ではなく、その場にいた彼らの生を輝かせるための映像。映像と音が人生を語ります。
とにかく笑顔が忘れられません。じゃれあいふざけていて笑いあう、まだ少年の兵士たち。失われたものが多くある中で、この映像が、確かに生きていた彼らを残してくれるのです。
第9位「ルース・エドガー」
監督:ジュリアス・オナ
人間という存在の掴みの無さと正確にとらえられないという現実、あまりに残酷にもむき出しで描き出す鋭さ、その考察に応える類まれな演技力も持ったケルヴィン・ハリソン・Jr。
観たいように観れてしまうルース。しかし観たいように見せているということがうっすらと見える怖さ。
目の前の人間は誰なのか。それは暗黙の了解中で、分からないけれどなんとか判断し受け入れておく以外に道がないとして生きているのです。
第10位「エマ、愛の罠」
監督:パブロ・ラライン
純粋に驚いた作品でした。
そしてエマという新星のヒロインに拍手喝采です。不道徳と言えばそうでしょうが、その道徳観自体がそちらの勝手な押し付けなのです。
女性は、妻は、母はこうあるべきであると。だからそれをすべてぶち壊すエマに魅了されます。ぶっ飛んでいき固定観念をあざ笑う、炎も水も操る彼女には神を感じてしまう力強さがあります。
エマを演じきるマリアーナ・ディ・ジローラモが本当にすさまじい存在ですよ。衝撃を受けそして何か超越したところを垣間見た興奮もある作品でした。
色々と観てきましたが、今回は劇場公開作品に絞りました。
あと、実は昨年のベストに入れてしまった「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」は今回は除外しましたが1位を争う作品です。
また今回は未公開作品はのぞきました。「Saint Francis」「Beanpole」「The Lighthouse」は未公開作品の中でも本当に素晴らしい作品でした。日本での一般公開を楽しみにしておきます。
さてここからはお遊びの各部門になります。
ベストに入れたいけれど入ることのできなかった作品や、ベストには入らないけれどその中でどうしても残しておきたい光るものをなんとか表彰したいという身勝手なコーナーです。
ベストヒロイン
- オラ「私は決して泣かない」
- ローズリン「ワイルド・ローズ」
- マルタ・カブレラ「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」
- ネジュマ「パピチャ 未来へのランウェイ」
ベスト悪役
- ホダック「チャーリーズ・エンジェル」
- ホーキンス「ナイチンゲール」
- インゲ「チンパンジー属」
- ロム・ラン船長「ボヤンシー 眼差しの向こうに」
ベスト主題歌
- Glasgow「ワイルド・ローズ」
- Running With The Wolves「ウルフウォーカー」
- San Francisco (Be Sure to Wear Flowers in Your Hair)「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」
- La Jeune Fille en Feu「燃ゆる女の肖像」
ベスト俳優
- ジェシー・バックリー「ワイルド・ローズ」「ジュディ 虹の彼方に」「Beast」
- ケルヴィン・ハリソン・Jr「ルース・エドガー」「WAVES/ウェイブス」
- フローレンス・ピュー「ミッドサマー」「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
- シャイア・ラブーフ「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」「ハニーボーイ」
最後に、この年に映画を、映画館をすごく意識したことから残しておきます。
やっぱり私は映画館で映画を観ることが大好きです。
たかが2か月間ではあっても、劇場で映画を観れなかった時期は本当に辛かった。失ってはじめて大切さがわかるとはこのことでした。
映画を製作する人、劇場興行に関わる人すべてに感謝したいです。
苦渋の選択としての公開の延期や配信への切り替えを経験し、残念ながら閉鎖や売却をすることになったこともありました。
この先2021年はどうなるのかもわからないですが、一つ劇場で映画を観るという文化がなんとか生き残っていることはありがたいことだと思います。
さて、今回のベスト紹介はこのくらいです。
どんな作品に出会ったでしょうか。配信で映画を始めてみた年でしたが、そこでじゃなきゃ出会えなかった作品ももちろんあり、悪いことばかりではありません。
2020年映画。決して悪くない。すこし環境は違っても、やはり素敵な作品にたくさん出会えた年でした。
21年には今年公開できなかった作品が待ち構えていますし、年明けすぐにも新作が公開されます。楽しみにしていきましょう。
コメント
私のとはかろうじて1本被ってますねー
透明人間はこれから観る予定です!
コメントありがとうございます。
どの作品が同じだったかと同時に、どんなベストなのか気になりますね。
「透明人間」は凄く良いホラースリラーで、気に入ってもらえると嬉しいです。