「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」”Doctor Strange in the Multiverse of Madness”(2022)

「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」(2022)

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作品概要

  • 監督:サム・ライミ
  • 脚本:ジェイド・バートレット、マイケル・ウォルドロン
  • 原作:スタン・リー、スティーヴ・ディッコ『ドクター・ストレンジ』
  • 製作:ケヴィン・ファイギ
  • 製作総指揮:スコット・デリクソン
  • 音楽:ダニー・エルフマン
  • 撮影:ジョン・マシソン
  • 編集:ボブ・ムラウスキー
  • 出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ソーチー・ゴメス、エリザベス・オルセン、ベネディクト・ウォン、レイチェル・マクアダムス、キウェテル・イジョフォー、マイケル・スタールバーグ 他

マーベルコミックスの魔術師ヒーロー、ドクター・ストレンジの「ドクター・ストレンジ」の続編にして、同フランチャイズでは「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」に続く第28作品目になる映画。

監督は1作目のスコット・デリクソンから「スパイダーマン」シリーズや「死霊のはらわた」などのサム・ライミ監督に交代。

主演は引き続きベネディクト・カンバーバッチが努め、ベネディクト・ウォン、レイチェル・マクアダムスも出演。

またTVシリーズ「ワンダヴィジョン」を経てのエリザベス・オルセンもワンダ/スカーレット・ウィッチ役で登場。

さらに今作はタイトルのマルチバース(多次元宇宙)を行き来できる少女役に、ネトフリの「ベビー・シッターズ・クラブ」などのソーチー・ゴメスが抜擢されています。

撮影時若干15歳という最年少クラスのメインキャラ、アメリカ・チャベスですね。

だいぶ前のマーベルのコンベンションだったかでドクター・ストレンジの2作目が発表され、その時すでにワンダが登場することは出されていました。

しかし、MCUでは前作になる「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」、またその前にもTVシリーズ「ホワット・イフ…?」でのマルチバース展開がかなり注目を引いたこともあり、どんな宇宙展開やキャラクターが登場するのかがかなり騒がれることになりました。

個人的にはサム・ライミ監督という部分が気になる作品で、やはりMCUなんていうフランチャイズの王国に対して、どこまでホラーテイストの作家性を炸裂させてくるのかが焦点です。

今回はGW中の公開ということもあり初日からかなりの混雑。IMAXはすぐに予約で埋まってしまい、通常字幕での鑑賞になりました。

【ネタバレ注意】この感想記事は途中からネタバレがあります。

「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」のマーベル公式サイトはこちら

~あらすじ~

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スパイダーマンのためにマルチバースの世界に触れたドクター・ストレンジ。

彼は夢の中で別の自分が一人の少女を怪物から守る姿を見る。

そこで窮地に追い込まれた別のドクター・ストレンジは、少女の秘めたる力を奪い犠牲にすることで怪物を倒そうとするも、隙を突かれて致命傷を負ってしまう。

目覚めたストレンジは元恋人クリスティーンの結婚式に参列するが、街で騒動が起き様子を見に行くと、一つ目の大きな怪物が暴れていた。

なんと怪物は夢に出てきた少女を追いかけているのだった。

少女を救い怪物を倒すと、アメリカ・チャベスというこの子どもは、マルチバースを自由に移動する能力を持ち、それを邪悪な存在がつけ狙っているという。

ストレンジは悪しき者の手にこのマルチバースを支配できるような力が渡ってはならないと、協力者を探す。

そこで至高の魔術師に匹敵するほどこの地球上で強力な魔法の力を持つ、ワンダ・マキシモフのもとを訪れ、少女を狙う悪霊について尋ねるのだった。

感想/レビュー

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マーベルの作品はだいぶ世界観における風呂敷を広げており、正直ひっちゃかめっちゃかになっています。その点は今作も同じかなと思います。

しかし一貫して行ってきたのは、抜擢する監督の作家性を巧くストーリーに生かしてきたということ。

父の不在とその中で幼稚さとともに描かれる家族の話はタイカ・ワイティティが「マイティ・ソー バトルロイヤル」で、子どもの世界に残酷に大人の世界をぶつける「スパイダーマン:ホームカミング」にはジョン・ワッツ。

そういう意味で今作はホラーにするからサム・ライミを呼んだのかと思います。スコット・デリクソン監督は途中降板だったかな?

サム・ライミのホラー作家としての資質が大暴れ

さて、問題は監督の作家性とフランチャイズの特色がどのようなバランスを持っているかになります。

特に今のMCUはディズニー傘下であり表現的には厳しい(ゲイを言及するなの件もありますし)と思われ、多くの観客を取り込むという商業的な目的の上で、自動的に幅を狭めてしまうホラーは正面からぶつかるのかもしれません。

そういう意味で、サム・ライム監督がディズニーの胸を借りて楽しく映画を作った出来栄えになっています。

作家性とフランチャイズの融合が見事だった例として挙げるならJ・A・バヨナが恐竜とゴシックホラーを巧く融合して見せた「ジュラシック・ワールド 炎の王国」がありますが、今作もそれに似た成功例になっていると感じました。

正直言ってホラースプラッタ映画です。

心底怖いわけではないですが、怖い演出がふんだんに使用されています。

ガチで怖いのはジョン・ワッツの大人と子どもの使い方でしょうけど、Jホラーの貞子などのような描写から、直接見えずともゴア描写もふんだんに使われていてお祭り状態です。

ここまで作家性が前面に出ているとなると、好みはすべてサム・ライミのテイストが合うか合わないかになってくるのではないでしょうか。

なので、サム・ライミファンが今作を喜ばしく迎え入れることは容易に想像できますね。

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【ネタバレ注意】ここからネタバレを交えていきます

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ワンダの造形にやや疑問

「ワンダヴィジョン」を経て、禁断の書から力を得て魔女スカーレット・ウィッチとして今作のいわばヴィランとなった彼女。

一応ずっとぬぐえなかった疑問については、ドラマシリーズの最後には自身の行いを悔い改めていたように思えたのですが、なぜ今回はまた自己中な思考に取りつかれていたのか。

最後に手に入れた書物のせいといえばまあ良いのですが、どうにも彼女は同じドラマを繰り返しているように思いました。

自分の欲しいものを他人に犠牲を強いてまで実現しようとするわけですから、同じ話になっていませんかね?

まあストレンジのヒーローとしてのストーリーとの対比であるのかもしれませんが。

怪物、死霊、ゾンビ!

まあそれはそうとして、ワンダの描写についてサム・ライミ監督すごく楽しそうでしたね。

普通にスカーレット・ウィッチのコスチュームだと現実味がないのですが、多元宇宙の身体を乗っ取るという設定から、私服で展開するのはうまいですね。

これによって普段着の血まみれ女性が(途中でガラスを踏み)足を引きづりながら追いかけてくるという画が完成しています。

カーマ・タージでミラー・ディメンション?から脱出し現実に進攻しようとするワンダの動きとか、死霊タイプの関節バキバキな動きで観てて楽しかったですね。

最終的には亡者とかゾンビまでうまいこと登場していて、ダーク魔法バトル勃発です。

ちょっとジャンプスケアが多いのですが、サム・ライミって恐怖演出が得意であって恐怖を植え付けるまではしないので、MCU的にもちょうどよいのかもしれません。

ガチガチに後を引くようなホラーではなく、あくまでスーパーヒーロー映画なのですから。

ダニー・エルフマンのサウンドを物理で楽しむシーンとか、ホラー忘れて遊んでましたね。

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小ネタについてはいい意味で愛着がないのが功を奏す

マルチバースとして別宇宙へ行く旅については、ここまできてまたMCUが違った世界を見せてくれるという驚きと楽しさを感じました。

量子世界ミラーディメンションアフリカの架空の国銀河の冒険まで見せていたフランチャイズで、まだ私たちの住む地球とは違う地球を見せてくれるとは。

また一部の方は期待している?他のユニバースでの豪華な出演について。

「X-men」シリーズとか「ホワット・イフ…?」が必修とは言いませんが、ファンなら楽しいかなという感じ。

私はむしろ、そのあたりを出しておきながらも全然愛着がない感じでスプラッタゴア殺戮を展開するあたり、思い切っていて好きです。

振り切れているため、内輪ネタのしつこさと置いてきぼりな感じはあまり感じませんでした。

さすがに「ワンダヴィジョン」未鑑賞であると厳しい気もしますが、フェイズ4からの展開はドラマ込みなのは周知なのでしょうがないですね。

最近は答え合わせ的なヒーロー映画ばかりで滅入ってきていたので、今作くらい使い捨ててくれるとすごくありがたいです。

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さて、一番心配していたのは、マルチバースでキャラクターを出すことに終始して、スティーヴン・ストレンジのチャプター2としてどうなのかというところ。

その点について忘れていないので総合的には安心です。

他己犠牲による幸福

事故にあってからスティーヴンの時間は止まり、クリスティーンとの人生なども捨ててすべて至高の魔術師としてささげてきた。

サノスの一件についても彼だから見通せたのではありますが、犠牲なくして勝利なしを選んでいたのです。

そこで他己犠牲によって何かを成し遂げるという点では同じワンダが現れる。

だからこそ、OPのディフェンダー・ストレンジ含めて、鏡像のように展開されていくことになります。

まあここがズレているところでもあるんですけどね。

ワンダが成し遂げたいのは他己犠牲による自己の幸福であり、ストレンジは他己犠牲による世界の幸福ですから。

しかしワンダは生い立ちから不憫なのでだれかハグしてあげてほしい。

誰かが犠牲にならなければいけない・・・というのはトニーの顛末を知りながらも1つの道しかないと選択したストレンジにずっと重くのしかかっていたのでしょう。

だからさらに踏み込んで、誰も犠牲にしないヒーローとなる道を探る。

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今の現実を大切にし受け入れる

誰しもやり直したい道だったり、自分の現実に嫌なところってあります。

ここが違えばいいのにとか、もっと良い現実を、理想の自分を、本当に望む世界を手に入れたいと思うのは当然です。

そんな”なろう系”とも言えそうな願望について、今作は「今を生きろ」と言っているように聞こえます。

どの宇宙でも人の本質は変わらないものです。

そこに理想の姿がなくとも、自分自身とこの現実を含めて愛し続けることはできるはず。

マルチバースとは多元宇宙、多くの可能性を示唆します。

誰だって自分にとってベストな現実を選びたいはずですが、それはそこにいる自分を傷つけることでもあるんですね。

自分を大切にするならば、今の現実を大切にし受け入れていく。

その時、ストレンジの止まっていた時間が動き始め、スティーヴンの人生もまた歩みを始めたのでしょう。

ちょっと前面にライミテイストが出てきすぎな感じとか、正直脚本については無茶だったり、前作以上に何ができて何ができないのか意味不明だったりと雑ではあります。

ワンダの描写についてははっきりとドラマシリーズとの整合性を失っているように思いますし。

ただスティーヴンの話を描く彼の2作品目としては、正式にヒーローとなる姿には拍手を送りたいですね。

話題作なのでこれは是非とも映画館で鑑賞を。ストレンジは3作品目もあるのでしょうかね。

今後もMCUは「ソー ラブ・アンド・サンダー」など続いていきますので、結局すべての作品を観ていくことに変わりはないでしょう。

というところで今回の感想はこのくらいになります。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

ではまた。

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