「犬ヶ島」(2018)

  • 監督:ウェス・アンダーソン
  • 脚本:ウェス・アンダーソン
  • 原案:ウェス・アンダーソン、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、野村訓市
  • 製作:ウェス・アンダーソン、スコット・ルーディン、スティーヴン・M・レイルズ、ジェレミー・ドーソン
  • 音楽:アレクサンドル・デスプラ
  • 撮影:トリスタン・オリヴァー
  • 編集:レイフ・フォスター、エドワード・バーシュ
  • 出演:ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン、リーヴ・シュレイバー、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ 他

「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014)など独特の世界観を持つウェス・アンダーソン監督が、日本を舞台にしたストップモーションアニメ。

主演には「潜入者」(2016)のブライアン・クランストン、「バードマン」(2014)のエドワード・ノートン、それにグレタ・ガーウィグにスカーレット・ヨハンソンにティルダ・スウィントンに・・・って声の出演がメチャクチャ豪華ですよ。

公開してすぐに、夜の回で観たのですけど、そういえばファーストデイだったので満席でした。よやくしといて良かったw笑いの絶えない映画ですが、しんみりするところは沁みるものです。

その昔、犬たちと犬嫌いの小林一族との間で大きな戦があった。

小林一族は犬を根絶やしにしようとするが、絶体絶命の危機に、犬に同情した少年侍が現れ、窮地を救う。しかし結局は、少年も死に、犬たちは服従の道を歩むのだった。

それから千年の時が流れ、大都市メガ崎市では犬の伝染病が蔓延し、犬たちは小林市長によって、ゴミ溜めの島へと強制送還されていた。

その島へと最初に送られた犬スポッツの飼い主である少年アタリは、単身飛行機を運転し島へとやってくる。

そこで彼が出会ったのは、島を生き抜く犬たちだった。

ウェス・アンダーソン監督の世界はどこかかわいいミニチュアのような感覚があると、個人的に思っていましたが、今回はそのままミニチュアのストップモーションアニメーションとなっていて、その完成された世界に今までの監督作品以上に没入しました。

どんだけ労力かかってんだw

繊細な動きを見せている点も素晴らしいのですがそれがある意味フェティシズム的なシーンもあって観ていて気持ちいい感じがありました。

特徴的なのは寿司の調理シーン、そして俯瞰視点での手術シーンでしたね。

単に人や動物を動かすだけではなくて、そういった人物が画面内でさらに細かい作業をするというのがなんとも視覚に心地よいのです。

その他面白かったのは、テレビ画面などです。まあCGではないですが、3Dであるストップモーションアニメの中で、2Dアニメが展開されるのです。

普通は混ざらない映像手法が自然に調和しているのは、ちょっと新鮮な感覚を与えてくれます。

ストップモーションの実在感というのが大きな役割になっている点も大切です。

犬たちの毛並みや眼だけでの表情。

実写では難しい点と、CGでどうしても薄まる実在感がうまく折り合いをつけて、手で触れるような感覚をもった映像に仕上がっていました。

なかなか現実にはやりにくい、造形もあります。

犬たち体に残る傷は、やはり人形とはいってもそこにあるわけで、痛みを感じ取れるのです。血の滲んだ跡、禿げ上がった毛皮。

また奥に広がる世界も、紙芝居のようでありながら、やはり実在感も持っていて不思議な感覚です。横移動とか奥から迫ってくる感覚とか、空間ものびのび使っています。

よく分かりませんけども、昔慣れ親しんだNHK人形劇の豪華版を見ているようなノスタルジーを感じました。

とにかく、スクリーンに展開されている世界への没入感というのが素晴らしく、どっぷりと浸かって観ていました。

全体にはコメディでありながらもけっこう残酷な描写も多く、また異なるジャンルを入れ込む点もおもしろさとしてありました。

「七人の侍」のような時代劇にはじまり、西部劇の要素もあったり。

とにかく、突き詰めて完成されているにも関わらず、いや、だからこそでしょうか、様々に解釈のできる作品です。

あくまでメタファーではありますが、主義主張の偏りや他の主義の徹底した廃絶など、まあ嫌な意味で日本らしい世界なのもおもしろいです。

両立や共存を許さず、必ず分ける点や、握りつぶそうとするところなどは、恐ろしい政治陰謀論としてとれ、また現行の日本のシステム体制に刺さる部分がありますね。

しかし主演というか、犬たちがメインであります。狂うほどのディテール、完成された世界の中で、キャラクターが織り成すドラマもとても良かったです。

犬たちの家族の物語、人間との関わり。

飼い犬と野良。

日本人と外国人。

何かと属性に割り振られている登場人物たち。

わたしとしては、そうした属性や違いを乗り越えた、他者との美しい繋がりを描いた作品に思えます。

犬でも人間でも。犬派でも猫派でも。互いを理解し、種族さえ違うもののために、私たちは立ち上がることができるのです。

本編は英語と日本語で構成され、通訳もしくは字幕が無ければ、話すことを直接理解することはできません。

私たちは英語に字幕もつき、日本語も理解できるのですが、英語圏の人には日本語のセリフは分かりませんね。

ひとつのコミュニケーションツールである言語に制約を設けつつ、そこから共感することの本質が見えてきます。言葉が分からなくても、傷ついた犬や、アタリの涙を見れば、気持ちがわかるはずです。

相手の気持ちを理解し、思いやるという精神。

ウェス・アンダーソン監督は日本への愛情と尊敬をこめて、今の私たちには戒めのようなメッセージを送ってくれたように思えます。

何をどうとるかを観客にゆだね、繊細な世界をみせてくれる。おススメのストップモーションアニメです。

感想は終わりです。それでは~

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