「マイ・ボディーガード」(2004)
- 監督:トニー・スコット
- 脚本:ブライアン・ヘルゲランド
- 原作:A・J・クィネル 「燃える男」
- 製作:トニー・スコット、アーノン・ミルチャン、ルーカス・フォスター
- 音楽:ナイン・インチ・ネイル、ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
- 撮影:ポール・キャメロン
- 編集:クリスチャン・ワグナー
- 出演:デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、クリストファー・ウォーケン、ラダ・ミッチェル、ミッキー・ローク 他
トニー・スコット監督がデンゼル・ワシントンを主演に迎えたクライム・アクション映画。
デンゼルがバッドアスな無双男を演じている作品でもありますね。まあ行ってしまえば本作の見どころはそのメチャクチャな暴力、無慈悲さというカタルシス。
私はこの手の映画をポルノと位置付けていますが、今作はまさに男が妄想した男の生き様というものです。
デンゼルは危険で突き抜けた、それが魅力な役はいくつかあります。アロンゾとかイコライザーとかね。あの部類に入ってくるような映画になってます。
メキシコの国境付近、犯罪組織の台頭と公的組織の腐敗で、周辺では誘拐ビジネスが多発していた。そこでは裕福な家庭が常に狙われ、子供にはボディガードをつけるのが常識にまでなっていた。
かつて米軍に従事し、数々の過酷な戦闘を経験してきたクリーシーは、友人のレイバーンに紹介され、新たにボディガードとして働くことになる。
依頼主は若き実業家で、娘のピタの警護が仕事である。始めは「友達になるわけではない」と冷たく振る舞うクリーシーであったが、寂しげなピタに次第に父親のような感情が芽生え、絆を深めていく。
しかしそんな幸せにも、犯罪組織の手が忍び寄っていた・・・
話は何ともオーソドックス。廃れた男が少女との出会いを機に、持つことのできなかった人間としての生を与えられる。そしてそれが奪われたとき、完全なる鬼となって眼前のものすべてを血に染めていく。
ピタと仲良くなっていくところももちろん心温まるものですが、やはりデンゼルの血祭大会が見ものです。それだけ集めて観ても良いと思いますよ。とにかく過激。
数を殺すというよりは、残酷なことを淡々とやってのけ、しかもやり方がフレッシュな感じがします。ハンドル固定で指落としにケツ爆弾なんかはちょっと笑える領域まで入っています。
そういった過剰な暴力が、残酷で引くというよりは、楽しめる感じです。
ここはかなり分かれ目にもなると思います。なにせ酷いわけなので、嫌いなら全体的に嫌いになりかねないです。
特徴と言えば編集やカメラのシャッター感。細かな切り替えや色彩、不明瞭な画面。ここが個人的には苦手です。
トニー・スコット監督作には多いんですが、幻覚とか覚醒とかに良く使われるような現実にしてはおかしな明暗を持ち、カメラは揺れてカットはこれでもかと切り替わる。
あくまで個人的には目がチカチカして観づらく酔いそうです。ここは時間経過やクリーシーが悩むシーンに多めですが、クリーシーが真っ直ぐに現実に迎えていないというのを視覚的に訴えているのでしょうか。
幻想的というと、ピタとクリーシーが水の中にいる、泳ぐシーンがミックスされています。クリーシーから常に血と思われるものが流れ出ているのは良いとして、繰り返される中に微妙に統一感がない気がしました。
クリーシーが泳ぐと血が充満するが、そのあとをピタが泳ぎ水が好き通り清らかになる。このカットはすごく好きですが、逆があったりもしてます。
最後はなかなかに感動的で、原作よりはもっと自己犠牲的な話になっています。
まあ現実的に考えると、あまりに無茶苦茶しているクリーシー。それでもフアレスやらのメキシコの治安最悪の街では実際あれだけ無茶苦茶な日常が広がっていた(いる)らしいので大丈夫かな。
男の人生挽回映画、そして贖罪映画。また疑似家族としての暖かな成長も垣間見えます。
しかし結局は、上質な妄想映画かなと。
ダメな奴だけど、過去はすごいぜ。超冷酷になって大事な子の復讐のためみんなぶっ殺す!・・・なんて現実にはありえない無双と若干の自己証明と承認、そして浄化(カタルシス)を得るという映画。
そういったものを求めているなら、かなりお勧めの映画です。こういうのは、やろうと思ってもなかなか滑稽になりがちなんですが、今作はすごく求める人に与えることに成功していると思えます。
そんなところで感想はおしまいです。それでは~
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